【木村カエラ】あなたにとっての“+
1”になれたら

1年2カ月ぶりとなるアルバムは前作以上に豪華なアーティストがゲストとして集結。“ニューウェイブ”を前面に出した新しい試みは彼女にとってどんな変化をもらたすのか?
取材:黒田奈保子

昨年は自身のツアーのほか、多数のフェスにも参加し年間50本を超えるステージで、“ロックアーティスト”としての存在をこれでもかと日本の音楽界に知らしめた彼女。今年の活動に注目が集まる中、1年2カ月ぶりとなるアルバム『+1』がリリースされる。
アルバムに先行する形でリリースされたシングル「Jasper」で彼女が挑戦したのは、なんとテクノ! しかも電気グルーヴの石野卓球による楽曲提供、プロデュースという異色のコラボだ。これまでにも数多くのアーティストとコラボし、ロックにパンクにディスコと新作を出すたびに可能性を広げ、“木村カエラ”として吸収し、成長しているというのに、ここに来てさらにテクノである。彼女の音楽の嗜好はどれだけ幅広く、貪欲なのだろうか…。そしてさらに、その貪欲さが大きく形となったのが今作である。作品全体を“ニューウェイブ”という、これまでの“木村カエラ”にはなかったジャンルに取り組んだのだ。
1曲目「NO IMAGE」がまさにそれ。バンドサウンドはきっちりと残しながらも、ニューウェイブのアヴァンギャルドさががっつりと前面に出された楽曲に仕上がっている。彼女のライヴではおなじみである、柏倉隆史(toe)のドラムの秀逸さ、ミト(クラムボン)の幅広い楽曲制作にも改めて驚かされる。そう、この作品では、先に書いた石野卓球同様、豪華なゲストミュージシャンの仕事っぷりにも注目してほしい。4曲目「ファミレド」では、レーベルメイトでもあるMO’SOME TONEBENDERがプロデュース。“ニューウェイブ”という括りの中では、シンプルで爽快なギターロックのサウンドは新鮮に聴こえる。そして個人的にプッシュしたいのが、アルバムを締めくくる13曲目「Humpty Dumpty」。プロデュースは、DE DE MOUSE。エレクトロニカのシーンの中でも押しも言われぬ絶大な人気を誇る、各方面から引っ張りだこの彼が木村カエラと共演…それだけでもこのアルバムを聴く価値があるはずだ。楽曲は彼らしいオリエンタルな匂いを感じさせる緻密に作り込まれたメロディーと、カエラの浮遊感あるヴォーカルが見事にマッチしている。
これだけ書いていると、ゲストアーティストの存在に惑わされ、“彼女らしさは一体どこ?”と思われるだろう。だが、どの楽曲も彼女を支え、“木村カエラのアルバム”を前提とした作り込みがされていて、彼女の存在感が一番大きい。ゲストアーティストに食われることなく、完璧に“木村カエラ”の作品として存在しているのだ。その大きな理由はやはり、自身で手掛ける“歌詞”にあるのだろう。“このCDを聴いてくれる人にとって+1の幸せが訪れるといいな”と語る彼女。その言葉のままに、生きていく上で足りない“何か”を補うサプリのような雰囲気を持った歌詞が多く見られる。豪華なトラックに乗せた、優しく背中を押してくれるシンプルで温かなリリック。その“意外性”すら彼女の武器なのだ。アルバムタイトル“+1(プラスワン)”という言葉通り、今作で彼女はリスナーにとってさらにかけがいのないものになるだろう。そして、今作はきっと彼女のアーティスト人生の中でも“+1”な作品になったに違いない。
また本作を携え、ツアーも決定している。彼女にとっての“+1”、ファンにとっての“+1”をぜひともその目で確認してほしい。あっ、その前に初回限定盤のDVDに収録されている、内容盛りだくさんの映像も要チェック! 笑えます!
『+1』2008年04月02日発売コロムビアミュージックエンタテインメント
    • 【初回限定盤(DVD付)】
    • COZA-301〜2 3465円
    • 【通常盤】
    • COCP-34795 2940円
木村カエラ プロフィール

キムラカエラ: 1984年10月24日生まれ。東京都出身。血液型A型。04年6月、シングル「Level42」でメジャーデビュー。ワンマンツアーのみならずフェス・イベントにも積極的に参加する一方で、CMにも多数出演。そして、13年6月23日、デビュー9周年の日に自身が代表を務めるプライベートレーベル『ELA』を設立。第一弾として、国内外12組の豪華アーティスト陣が参加するコラボレーションカバーアルバム『ROCK』を10月30日にドロップ!木村カエラ オフィシャルHP
ELA MUSIC

OKMusic編集部

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