【岩瀬敬吾】メロディーだけは、誰に
も負けないつもり

今年でデビュー10周年を迎えた岩瀬敬吾。4作目のソロアルバムに込めた思いを通して、今現在の彼の音楽観や人生観を探ってみよう。
取材:道明利友

本作は音色ひとつひとつを本当に大事にしているなっていう印象が、すごくありました。メロディーを最大限に活かしつつ、楽曲のアレンジも多彩なチャレンジをしているし。

ありがとうございます。メロディーは、プライド持ってます。メロディーだけは誰にも負けないつもりでやってますし、他の人の音楽でも、いいメロディーを聴くとうれしかったり逆に悔しかったりしますからね。それがあった上で、“ま、これでいいだろう”みたいなプレイならアルバムに入れんでいいと思うタチなんですよ、僕は。だから、音を埋めていくっていう作業ではなくて、必然的に空いた隙間の中に的確に音を埋めていくっていうか。“物作り”っていうのはそういうことかなって…。偉そうに思ったりしたんですけど(笑)

いやいやいや。素敵な“物作り”をしてるなって思いました、本当に。いいメロディーに、鍵盤や管楽器など多彩な音色をさりげなく加えていて、楽曲の雰囲気を作ってるのが面白かったです。そのスタイルは今現在のモードという感じですか?

っていうより、毎度毎度アルバムを作ることは、僕の中ではある意味“実験”というか。物を作ることにおいては、自分自身を試すっていうこともすごく必要で…。そういうのを踏まえた上で何かに絞っていったら、強みになると思うんですよ。だから、この先こういうことをやっていきたいっていうのを見つけていくためのものっていう言い方もできますよね、僕にとってのアルバム作りは。いろんなことをやってても、それをちゃんと着こなしているか、消化できているかって。それと、僕自身の思いもしっかり表現できているかっていうことも確信しないと、作品は作れないと思うんで。

では、このアルバムに込めた思いというか、ここから聴き手に伝えたいものを改めて言葉にするとしたら?

この一作前に出したシングル『明日の出来事』をアルバムのタイトルにしたことにもつながると思うんですけど、それは。“こうしたい”っていう気持ちがあったとして、そういうことに対して“強く願えば叶う”って言い方をよくしますよね。でも、“夢は叶うんだって思いなさい”って言われても、“いやいや、そうじゃないでしょう”っていう部分もあるじゃないですか。そう言いきるのはリアルじゃない。だから、変な話“明日、ご飯何食べよう?”とか、8割9分ぐらい決定で叶うものを思うような感じで未来を決めていけばいいんじゃないかなって思いますね。10年後に対してどう歩いていくかっていうのは、長すぎて具体的に見えないでしょう?

そうですね。見えないからこそ、不安になることもありますね。逆に、だからこそ今日や明日にあるものに向かうことが確かにリアルというか。

そうですよね。日々の大したことないもの、これは嫌だなって思うこととか。日々、自分の周りにあるものを全部楽しめるようになればいいなって。なんとなく通り過ぎてる感情や、普通に街を歩いてる時にふと思ったこと、普段の生活の中で培ったものを大いに吐き出してるつもりなんです。人生ってのはこうするべきなんだって歌うんじゃなくて、“僕が歩いてきたのはこうだよ、僕が思ってるのはこうだよ”っていうのを、ボソボソッと言ってるような(笑)。それにひとりでも多くの人が共感を得てくれたらうれしいですね。で、そこから何かしらを受け取って、聴いてくれた人それぞれがその人なりの個性を育ててもらえたらいいです。
『明日の出来事』2008年04月09日発売rebelphonic/RAINBOW ENTERTAINMENT
    • 【初回限定盤(DVD付)】
    • rpc-024
    • 【通常盤】
    • rpc-025
岩瀬敬吾 プロフィール

98年に岡平健治とのフォーク・デュオ、19としてデビューを果たし、以降、「あの紙ヒコーキくもり空わって」に代表されるヒット曲を数々発表する。02年3月に惜しまれつつもユニットは解散。岩瀬敬吾はソロ・アーティストの道を歩み出し、同年10月、シングル「くり返すは口ぐせと罪悪感」にてデビュー。19時代のメッセージ性溢れる詩作を継承しつつ、さらにダイナミックなポップ・ソングを繰り広げ、健在ぶりをアピールした。
以後、19解散から約1年半の間に2枚のアルバムを発表。どこまでもリアルな等身大のロックを繰り広げ、「誰にも愛されるポップ・フォーク・デュオ」から「日本の音楽シーンをリードするに足る才能」への本格的な脱皮を指し示してみせた。岩瀬敬吾Official Website
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OKMusic編集部

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