BugLug 絶望的な悪夢から1年、希望の
炎を再び熱く燃えあがらせた夜


2017.5.7(SUN)日本武道館2017年5月7日。ついにこの日がやってきた。開演前の場内には、胸いっぱいにこみ上げる期待や不安と共振するような、ドクドクと脈打つ心臓の鼓動音が流れている。その音が徐々に大きくなると同時に色めき立つ観客席。場内が暗転すると、日本武道館は凄まじい歓声に包まれた。

昨年の5月7日、階段での転落事故により重症頭部外傷という深すぎる傷を負ったBugLugのボーカリスト・一聖。奇しくもその日は彼の誕生日。事故直後は意識不明の重体、一命はとりとめたものの、一時は復帰することは困難とすら言われるほどの大事故に、多くの人達が言葉を失った。しかし、彼の復帰を信じ、メンバー4人はライブを続けることを決断。サポートボーカルを立てることも、ボーカルトラックを流すこともなく、4人でマイクをとることでBugLugという場所を守り続けた。一聖も懸命なリハビリを重ねて奇跡的な回復を遂げ、今年1月7日に行なわれた所属レーベル主催のイベントでラスト1曲のみカムバック。会場全体が歓喜の涙で包まれる中、彼らは日本武道館にて完全復活ワンマンライブ『5+君=∞』を行なうことを宣言したのだ。

BugLug『5+君=∞』2017年5月7日 日本武道館 撮影=宮脇 進(PROGRESS-M)

そんな絶望的な悪夢からちょうど1年後、ステージに設置されたスクリーンに映像が流れ始める。止まっていたアナログ時計の秒針が動き出すと、次に映されたのは真俯瞰から映される街の交差点。続いて病院の廊下、点滴、地下駐車場、レントゲン写真、手術室、皆既日食、そして、雑踏に立つ黒いフードを被った男と、印象的なカットが素早く切り替わっていく。そこから過去のバンドロゴが刻まれているクリスタル碑が森の中で佇んでいる映像に変わると、燕(B)と将海(Dr)の2人が、続いて一樹(G)と優(G)の2人が舞台後方に作られたセットから、ゆっくりとせりあがってきた。4人がステージの一番前に並ぶと、いよいよ一聖が登場。うつむきながらゆっくりと階段を降りてくる。そして、メンバー達に挟まれる形でセンターに立ち、足を軽く開いてスタンバイしたところで、4人が持ち場についた。スクリーンに最新のバンドロゴが映し出されると、一聖がゆっくりマイクを構える。

この日、彼らが一曲目に選んだのは「R.I.P」。世界の終焉で始まりを叫ぶこの歌は、ここから5人での活動再開を宣言するになんともふさわしい選曲だ。巨大な爆発音と共に大きな白煙が立ち上がる中、5人は一気に駆け抜け始める。そして、「あげた手は、そのまま!」とお馴染みのアジテーションから「KAIBUTSU」へ。曲に合わせて歌い踊るオーディエンス達を見て、「いいね! これが見たかった景色だ!」と一聖も楽しそう。そのまま続けて「-7-」を披露し、この日初めてのMCに。「久しぶりに帰ってきました、BugLugだ! 俺の声、存在、届いてるか! ただいま!」と一聖が叫ぶと、客席からは大音量の「おかえり」の声があがる。

一聖/BugLug『5+君=∞』2017年5月7日 日本武道館 撮影=宮脇 進(PROGRESS-M)

「心配たくさんかけたよね。ごめん。ようやく帰ってきました! 俺が入院したのはちょうど去年の5月7日。本当に死にかけていた。でも、俺は今を生きている。そしてようやく5人揃ってBugLugに帰ってきたんだよ。これからも前を向いて生きるための戦いが始まる。戦う相手は誰かや何かではない。今を生きている自分自身だ。共に戦おう」(一聖)

そうオーディエンスを鼓舞すると、「V.S」を披露。マイクに向かって叫ぶメンバー達の声もかなり雄々しかったが、5人でステージに立つ喜びを噛み締めているかのようにも感じた。ステージから繰り出される情熱の籠もりまくった音を、客席にまで届くほどの熱波を放つ大きな火柱が盛り立て、「ボロボロになった俺でさえ、ここまで這い上がってこれた!」という叫びから「THE DEAD MAN’S WALKING」になだれ込む。<何度だって何度だって這い上がるぜ>とオーディエンスと大合唱を巻き起こし、「この5人で初めて作った曲」という「SHOW 2 GROW」を披露するなど、ひたすら見せ場のオンパレード! シアトリカルな「芸術的思想家の片鱗」では、一聖がラストで迫真のロングトーンを轟かせると、神聖なコーラスを交えた壮大な「Live to Love」では、マイクスタンドを握りしめ、客席を指差し、強く歌いかけていた。

一樹/BugLug『5+君=∞』2017年5月7日 日本武道館 撮影=宮脇 進(PROGRESS-M)

ライブはここからさらに熱が高まっていく。中学2年生のときに人生初ライブを経験して以来、「1年間もライブしないことなんてなかった」とMCで話す一聖は、久々のライブに「楽しい、嬉しい、当たり前。興奮MAX、当たり前。あとは緊張感とか、申し訳ないなっていう気持ちとかいろいろあるんだけど」と、今の心境を赤裸々に話していく。そして「何が言いたいかって、いろんなものがミックスしていて、気持ちが複雑じゃん? テンションが迷子な人、いますか? テンションが無茶苦茶な人いますか!?」と「迷子CH」に突入。ヘヴィかつポップな曲調に合わせて、将海がコーラスを入れてハッピーな空気を増幅させると、コール&レスポンスから繋げた「猿」では、燕がダイナミックなスラップベースでフロアを勢いよく跳ね上げる。さらに、イントロで大歓声が巻き起こった「WGMM」では、一樹と優がステージから伸びた花道をダッシュするなど、4人の音も存在感も今まで以上に強く、ときに賑やかに、ときに華やかに客席を盛り上げていた。そして「じゃあ、次は激しい曲もいってみようか?」と、オーディエンスにオイコールを求めて幕をあけた「骨」から、「BUKIMI」「ギロチン」「絶交悦楽論」とライブの定番曲を連発した怒涛の後半戦では、一聖も激しくヘッドバンギング。まさに完全復活という言葉がふさわしいパフォーマンスで本編を締めくくった。

優/BugLug『5+君=∞』2017年5月7日 日本武道館 撮影=宮脇 進(PROGRESS-M)

アンコールの声に応えて再び登場した5人は、言葉で今の想いを客席に伝えていく。各々がBugLugに関わるすべての人たちに感謝を述べる中、「ライブハウス武道館へようこそ!」と、バンドマンであれば一度は口にしたい名フレーズから始めたのは一樹。「今までにない音楽に出会えるんじゃないかなと思って、これからの活動が楽しみです。BugLugはここで終わるつもりはありません!」と力強く宣言すると、将海は「こうやってライブでしか俺らは伝えることができないかもしれないから、最後まで全力でここにいる人全員に届くようにやろうと思うんで」と、真摯にコメント。燕は、去年の今日は不安な気持ちで病院に向かっていたが、今年は日本武道館に向かっていることが嬉しくて、一聖に「わりと長文のメール」を送ったことを告白すれば、優は、この1年をファンと一緒に乗り越えられたことで、お互いの絆が強いものになったと話す。しかし「みんなとの絆が固くなったのはいいけど、みんなの財布の紐まで固くなるとは思ってませんでした。売れてないグッズがあります!」と、恒例のMCで笑いを起こしていた。そして「これだけくだらないMCができることがどれだけ幸せなことか、5人でステージに立つということが、そして、そのライブをみんなが見にきてくれていることが、どれだけ幸せなことか。それを今実感しています。最後に改めて言わせてください。みなさん1年間待っていてくれて本当にありがとう。これからもBugLugをよろしくお願いします!」と改めて感謝を伝えていた。

燕/BugLug『5+君=∞』2017年5月7日 日本武道館 撮影=宮脇 進(PROGRESS-M)

そして、「帰ってきたからにはとことん遊ぼうぜ!」という一聖の煽りから「ASOVIVA」へ。軽快なサウンドと共に、5人の懐かしい写真や、事前にファンから募集していた「あなたにとってBugLugとは?」という写真とメッセージが次々にスクリーンに映し出された。そこから「ここからが俺たちの新しい始まりなんだよ!」と「Clumsy Love」、さらに「TIME MACHINE」を歌い終えると「タイムマシンなんていらない! 現実で生きる夢を大切に、これからも前を向いて生きていたい!」と言って披露された「Dream Rush」と、感情全開で叫ぶ一聖の言葉と、続けざまに高鳴らされる5人の音が激しく胸を揺さぶってくる。そして「死にかけた俺の命が奇跡的に救い出されたからこそ今がある。きっとそれは、ここにいる一人ひとり全員が俺に渡してくれた新しい命なのかもしれない。だからこそ、このままBugLugで一生歌いたいんだ!」と「おわりのないうた。」へ。今回のライブタイトルの元になった<五人+君=無限大>というフレーズを力強く、じっくりと歌い、客席に届けていた。

将海/BugLug『5+君=∞』2017年5月7日 日本武道館 撮影=宮脇 進(PROGRESS-M)

「5人+君=∞なんだ! だからこそBugLugは存在しているんだよ! 5人だけのライブじゃない。みんなとの絆があるからこそ、今日のライブが出来上がった。だから、お前らにも敢えて言いたい、いや、言い続けたい! お前らも全員、輝け! 輝くのはバンドだけじゃない! お前らも笑顔を見失わず輝いてくれ!」(一聖)

「ラスト、笑顔全開でいこう! 泣いている顔でさえ笑顔にしたいんだよ!」と繰り出されたのは「HICCHAKA×MECCHAKA」。大量のカラフルなテープが武道館を舞う中、オーディエンスの大合唱を求め続け、その歌声を「いいねいいね!」とたたえる一聖。そして、最後にこの日最大ボリュームのコール&レスポンスを巻き起こし、復帰ワンマンを締めくくったのだった。

全曲終了後、メンバー全員が改めて客席に感謝を送り、一人ずつ舞台袖に戻っていく。そして、最後にステージに一人残った一聖が話し始めた。

一聖/BugLug『5+君=∞』2017年5月7日 日本武道館 撮影=宮脇 進(PROGRESS-M)

「入院中にね、たった一回だけ夢を見た。それ以外、夢なんて一切見なかった。記憶さえもなかった。誰と会っても、それが誰なのかまったくわからなかった。不思議だなって思ったからこそ、ずっと記憶に残ってるんだけど。その夢を見たのは6月中旬。俺が入院していた病室の窓越しから、武道館が見える夢だった。それでね、夢の中で“次のライブ、武道館だからよろしく”って、勝手に人に言いまくってて。夢から覚めても、お見舞いに来た人全員にずっと言ってた。“次、武道館だからよろしく”って。それが現実になりました! ありがとうございました!」

BugLug『5+君=∞』2017年5月7日 日本武道館 撮影=宮脇 進(PROGRESS-M)

まさに夢のような本当の話なのだが、彼はこのステージにたどり着くまで、どれだけの地獄を耐え抜いてきたのだろうか。そのことを考え始めると想像を絶するものがあり、どれだけ言葉を並べてもいい表せないような気もしている。本人も話していた通り、彼は一度死にかけた。復帰不可能とさえ言われた時期もあった。そんな状況から、彼はここに戻ってきたのだ。そんな死線をくぐり抜けてきた男の言葉が、胸を打たないわけがない。BugLugは、8月9日にニューシングルをリリースし、同日に代々木公園野外ステージにて『89の日フリーワンマンライブ「自由~ASOVIVA~区域 Revenge」』を行なうこと、そして、9月から『47都道府県TOUR「RESTART WITH A NEW LIFE」』を開催することを発表した。一度は消えかけそうになった希望の炎を再び熱く燃えあがらせ、新たなスタートを切る彼らの未来は、間違いなく明るいものになるだろう。

取材・文=山口哲生 写真=宮脇 進(PROGRESS-M)

BugLug『5+君=∞』2017年5月7日 日本武道館 撮影=宮脇 進(PROGRESS-M)

セットリスト5+君=∞
2017.5.7(SUN)日本武道館
SE 5+君=∞
01. R.I.P
02. KAIBUTSU
03. -7-
04. V.S
05. THE DEAD MAN'S WALKING
06. SHOW 2 GLOW
07. 芸術的思想家の片鱗
08. Live to Love
09. 迷子CH
10. 猿
11. WGMM
12. 骨
13. BUKIMI
14. ギロチン
15. 絶交悦楽論
<ENCORE>
16. ASOVIVA
17. Clumsy Love
18. TIME MACHINE
19. Dream Rush
20. おわりのないうた。
21. HICCHAKA×MECCHAKA
リリース情報シングル
2017年8月9日発売
LIVE DVD『5+君=∞』
2017年9月6日発売
ライブ情報BugLug 89の日フリーワンマンライブ「自由~ASOVIVA~区域 Revenge」
2017年8月9日(水) 代々木公園野外ステージ
開場 16:30 / 開演 17:00
観覧フリーBugLug 47都道府県TOUR「RESTART WITH A NEW LIFE」
[第1クール]
9/3(日) 神奈川・CLUB CITTA’川崎
9/15(金) 栃木・HEAVEN’S ROCK宇都宮VJ-2
9/17(日) 秋田・Club SWINDLE
9/18(月/祝) 宮城・仙台darwin
9/22(金/祝) 大阪・Banana Hall
9/24(日) 高知・X-pt.
9/26(火) 奈良・NEVERLAND
9/27(水) 三重・松坂M’AXA
9/29(金) 福井・CHOP
10/1(日) 富山・SoulPower
10/8(日) 新潟・studio NEXS
10/9(月/祝) 長野・NAGANO CLUB JUNK BOX
10/14(土) 山形・MUSIC SHOWA SESSION
10/15(日) 青森・Quarter
10/17(火) 北海道・函館club COCOA
10/20(金) 岩手・盛岡CLUBCHANGE WAVE
10/22(日) 福島・郡山HIPSHOT JAPAN
10/26(木) 京都・FANJ
10/28(土) 熊本・B.9 V1
10/29(日) 宮崎・SR BOX
10/31(火) 鹿児島・CAPARVO HALL[第2クール]
11/2(木) 広島・SECOND CRUTCH
11/4(土) 愛媛・松山サロンキティ
11/5(日) 徳島・club GRINDHOUSE
11/7(火) 山梨・甲府CONVICTION
11/11(土) 石川・金沢AZ
11/12(日) 岐阜・club-G
11/21(火) 和歌山・SHELTER
11/23(木/祝) 岡山・CRAZYMAMA KINGDOM
11/25(土) 大分・DRUM Be-0
11/26(日) 佐賀・GEILS
11/28(火) 長崎・DRUM Be-7
11/30(木) 山口・LIVE rise SHUNAN
12/2(土) 島根・松江AZTiC canova
12/3(日) 鳥取・米子AZTiC laughs
12/5(火) 兵庫・神戸VARIT.
12/7(木) 群馬・高崎club FLEEZ
12/9(土) 茨城・水戸LIGHT HOUSE
12/10(日) 千葉・柏PALOOZA
12/16(土) 沖縄・宜野湾HUMAN STAGE
12/17(日) 沖縄・宜野湾HUMAN STAGE[第3クール]
2018年
1/12(金) 静岡・浜松窓枠
1/13(土) 愛知・NAGOYA ReNY limited
1/20(土) 埼玉・HEAVEN’S ROCK熊谷VJ-1
1/24(水) 滋賀・B-FLAT
1/26(金) 香川・高松DIME
1/28(日) 福岡・DRUM LOGOS
2/17(土) 東京・新木場STUDIO COAST
特設サイト http://buglug.jp/special/47_rwnl/

SPICE

SPICE(スパイス)は、音楽、クラシック、舞台、アニメ・ゲーム、イベント・レジャー、映画、アートのニュースやレポート、インタビューやコラム、動画などHOTなコンテンツをお届けするエンターテイメント特化型情報メディアです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着