5月10日@日本武道館

5月10日@日本武道館

RADWIMPS、いつまでも息づく多幸感に
包まれてツアーが閉幕

「また会おうね! 俺、約束とかするのずっと嫌いだったんだけどさ、今はいっぱい約束していきたいんだよね。いつ死んじゃうかわかんないしさ。だから、未来の約束をいっぱいして、これからも生きていきたいと思ってます。また会おうね!」

ニューシングル「サイハテアイニ/洗脳」のリリース日でもある5月10日。日本武道館の天井に掲揚された大きな日の丸に見守られるように、そしてオーディエンスと至極近しい距離感で音楽を通じた交歓を絶え間なく続けるようにして、RADWIMPSは2時間50分のライブを駆け抜けた。野田洋次郎はこのツアーで覚えた名状しがたい幸福感とこのツアーが終わってしまうことの名残惜しさを全身で噛みしめながら会場にいる一人ひとりと「また会おう」と“約束”し、バンドは急遽演奏することが決まったアンコールの最終曲「有心論」を鳴らした。徹頭徹尾、今のRADWIMPSのオープンマインドなモードが貫かれたツアーファイナルだった。洋次郎はMCで「俺らにとって初めての武道館で『どんな感じなんだろう?』と思ったんだけど、こんなに近くにみんなの顔が見えて、温かくて、ライブハウスみたいな空気感がある」とも語っていたが、武道館にいる誰もがその言葉に異論はなかっただろう。

2月25日のマリンメッセ福岡公演からスタートしたRADWIMPSのツアー「Human Bloom Tour 2017」は、この5月9日と10日の日本武道館公演2DAYSまで、全国のアリーナ12会場で21公演が行われた。2016年にリリースした『君の名は。』と『人間開花』という2枚のアルバムを経て、本当の意味で国民的な存在感を誇るバンドになったと同時に、だからこそこのツアーでは開かれた音楽像とパフォーマンスをもってオーディエンス一人ひとりと密接なコミュニケーションを交わしたRADWIMPSに日本武道館はとてもよく似合っていたし、ツアーファイナルにふさわしい会場だった。

静謐さのなかに一定の緊張感をはらんだSEが流れるとともに緞帳に神秘的なモーショングラフィックが映し出され、その向こう側にバンドのシルエットが浮かび上がる。大きな歓声を上げるオーディエンスのテンションが打ち込みのダンスビートとともに右肩上がりに高揚しているのがわかる。そして、1曲目「Lights go out」が鳴り始めると幕が上がり、サポートに迎えた刄田綴色と森瑞希のツインドラムを擁する5人編成の全貌が明らかになる。LEDパネルが組み込まれたステージには光の粒子が飛び散るような映像が流れ、サウンドスケープを立体的にする。2曲目「夢灯籠」、3曲目「光」とダイナミックなアンサンブルが加速していき、上手に位置するギターの桑原彰と下手のベースの武田祐介はそれぞれステージの先端に向かって走り出し、威風堂々とプレイする。

武田がサンプラーを、刄田もドラムパッドを叩き、生音と打ち込みが融合したタイトなグルーヴがうごめく続く4曲目「AADAAKOODAA」では、ハンドマイクを持った洋次郎が妖艶なモーションでステップを踏みながらラップし、ステージ前方に突き出すように設置された花道、通称“小島”に躍り出る。すると、洋次郎を乗せた“小島”が高々と上昇し、オーディエンスは一様に驚きの声を上げる。序盤の段階で、今のRADWIMPSの極めて自由度の高い音楽像とパフォーマンスが浮き彫りになった格好だ。

最初のMCで洋次郎が興奮と喜びを隠せない様子で咆哮する。「やったね、やったね! たどり着いたね! あっという間だったんだけど、まだまだ歌い足りないツアーだったからさ。今日は残り150本分くらい歌ってもいいですか!? ホントにそれくらい奇跡みたいなツアーでした。初めてこの5人で回るツアーでもあってさ。智史(活動休止中のドラマー、山口智史)が抜けてからいろんなことがあって。どうなるのかなと思ったんだけど、こんなに音楽が楽しくて、気持ちのいいツアーは初めてかもしれないと思うくらいで。それはこのツアーで来てくれたみんなのおかげでもあります。ありがとう!」

今から11年前に生まれた「05410-(ん)」をフレッシュな様相で鳴らし、ジャジーにスウィングするイントロを経て始まった「アイアンバイブル」と続く「O&O」で洋次郎はステージ下手に置かれたピアノを奏でてみせた。その鍵盤のタッチにはリラックスした状態で音楽とナチュラルに戯れるイノセントな趣に富んでいた。そして、『人間開花』で生まれた名曲「トアルハルノヒ」の演奏に満ちあふれていた〈ロックバンドなんてもんを やっていてよかった〉というバンドのリアルな実感は、確かに武道館全体に感動的に響き渡った。

ライブがちょうど中盤に差し掛かり、ステージ中央のセッティングされた鍵盤と向き合い洋次郎がオーディエンスに語りかける。「自分の悲しみは自分だけのもので、自分の喜びは自分だけのもので、それは誰のものと比べられなくて。だからこうやってこの歳になってもいっぱいいっぱいになって生きてるんだなと思います。『どうせわかんねえだろ』と思って生きてきたんですけど、気づいたらあなたみたいに歌を聴いてくれる人がいて。全部じゃないかもしれないけど、1ミリでも僕が歌った心をどこかで共鳴してくれるところがあるから、今日ここに来てくれてるんだよね。それがたまらなくうれしいし、聴いてくれるあなたに日々救われてます。あなたがもしも『なんでそんなことでイチイチ悩んでるんだよ、しっかりしろよ、そんなんじゃ生きていけねえよ』って言われるような思いを一度でも経験したとして、それはあなたにはどうしても大事なことで、譲れないものだとしたら、僕もあなたも同じ棒人間なんだと思います」

そうして始まったのは、自己否定と自己肯定が表裏一体にあることを示す性急なワルツ「棒人間」だった。アッパーに突き抜けていった本編終盤セクションは「DADA」を皮切りに「セツナレンサ」、洋次郎が指揮者となりタクトをとるようにしてベース、ギター、ツインドラムのプレイを振り分け、最終的にバンドサウンドのすごみを見せつける「おしゃかしゃま」と繋げ、武田のMCを挟んでもなお高まり続ける熱量は「ます。」と「君と羊と青」へ引き継がれていった。「今は音を鳴らせることが幸せでしょうがなくて。だから、ステージ上で全部鳴らそうと思って。でも、きっと幸せな時期ばかりじゃないから、『洋次郎、なんでこんな曲作ったの?』ってものが今後出てききちゃうかもしれないけど、やっぱり全部音にしていかないと、僕らのいる意味がなくなってしまうと思って。自分をドキュメントするように音楽にすることは、音楽を始めるときに音楽と交わした約束だったので。必ずそうやって音楽を続けるから。それは約束します。ああ、終わりたくねえな。でも、歌うね、歌うね! 歌える人は一緒に歌ってください!」洋次郎がそう告げて鳴らされたのは、RADWIMPSを現在地まで引き寄せたと言っても過言ではない「前前前世」だ。この曲を筆頭に「夢灯籠」しかり、「スパークル」しかり、『君の名は。』に収録されているナンバーが『人間開花』の収録曲や過去の楽曲群と有機的に連なっていたのも実に感慨深かった。本編ラストは、「告白」。シンプルな筆致で愛をど真ん中を描くこのバラードも間違いなく今のRADWIMPSの実像そのものだ。

ファンのアンコールの声援に応え、再びステージに洋次郎が一人で“小島”に現れオーディエンスが照らスマートフォンのライトに包まれて鍵盤で「トレモロ」を弾き語った。続いて「まだ歌っていいですか」とAimerに提供した「蝶々結び」を披露し、今度はギターで「夢番地」を歌った。そして、メインステージに戻ると、バンドメンバーを呼び込み「いいんですか」と「なんでもないや」をプレイ。それでもまだライブを終えたくない様子のバンドは冒頭に記した通り、「有心論」でライブの幕を下ろしたのだった。バンドもオーディエンスも、心の底からいつまでも続けばといいと思う時間が紡がれた『Human Bloom Tour 2017』ファイナル、日本武道館公演。どうしたって忘れがたい、いつまでも息づく多幸感だけがそこにはあった。

また、新曲「サイハテアイニ」のミュージックビデオが公開になった。「Human Bloom Tour」で披露した新曲のライブ映像を最速でお届け。忘れがたいツアーの興奮を蘇らせてくれる映像になっている。RADWIMPSは今後6月にアジアツアーを予定しているが、同日FUJIROCK FESTIVALや韓国のフェスなどへの出演も発表に。バンドの勢いはスピードを緩めることなく加速している。2017年も熱い熱い夏がやってきそうだ。

photo by Takeshi Yao
text by 三宅正一

「サイハテアイニ」ミュージックビデオ

『RADWIMPS 2017 Asia Live Tour』

6月04日(日) Megabox Event Hall @ Bigbox(シンガポール)
6月09日(金) YES24 LIVE HALL
6月10日(土) YES24 LIVE HALL(韓国)
6月13日(火) Macpherson Stadium(香港)
6月15日(木) Moonstar Studio (Studio 1)(タイ)
6月17日(土) ATT SHOW BOX(台湾)
6月18日(日) ATT SHOW BOX(台湾)
5月10日@日本武道館
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OKMusic編集部

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