ミュージカル『レ・ミゼラブル』日本
初演30周年記念公演、バルジャン役の
福井晶一が大阪で意気込みを語る!



「仲の良いトリプルキャストだからこそ、新たなジャン・バルジャンを作り出せる」ーー先日東京で行われた製作発表では本番を前に、興奮と恐怖がない交ぜになった心境だとお話されていました。

この作品ならではの心境ですね。帝国劇場の真ん中に立つ重みを経験しましたが、やはり初日が開くまでは恐怖の方がはるかに大きいと思います。とくに2015年は舞台に立つのが怖かった。少し舞台を休んでいた時期があって、そこからの復帰だったので。ただ、その少し前に父親を亡くしたのですが、ふと父親の顔が浮かぶことがあって。「僕は守られているんだな」と感じることができ、そう思うと自然に緊張も取れて舞台に取り組むことができました。今回も恐怖心をぬぐい去るにはどれだけ充実した稽古ができるかに尽きるので、初日に向けてしっかりと稽古を積み重ねていきたいと思います。

福井晶一

ーー回を重ねるごとにジャン・バルジャンという役に対して深まる部分もあったと思います。改めて、バルジャンとはどういう人物だと思われますか。

皆さんの中には聖人のようなイメージを持たれる方もいますが、僕はごく普通の少し力持ちの優しい男だと思います。飢えや貧困のせいで罪を犯し、一度は神をも憎んだ男が司教と出逢い改心していく、その変遷を見せたい。

福井晶一

2013年の公演ではアキレス腱を切った影響もあり、パフォーマンスに100%集中できる状態ではなく、何とか足をかばいながら”最後まで全うする”ということが最大の目標でした。そこから考えると、2015年の公演ではもっと役に向き合うことができました。劇団四季の後輩の光夫(吉原光夫さん)、韓国のミュージカルスターのジュンモ(ヤン・ジュンモさん)とは今回もトリプルキャストですが、彼らと一緒に作り上げていく上で、いろんなインスピレーションを貰いますし、参考になったことはたくさんありましたね。彼らもこの1、2年で経験を積まれているでしょうし、またお互いに刺激し合うことで、新たなジャン・バルジャンが作れるんじゃないかなと思います。

福井晶一

ーートリプルキャストでは、力になる部分も多いですか?

3人もいるとギスギスしているのかな?と思われるかもしれませんが、僕たちはすごく仲良しです(笑)。光夫は主宰する劇団で演出もしているので、作品の捉え方や役を構築していく過程とか、勉強になる部分がたくさんある。僕はどちらかというと感覚的な人間なので、分からない部分は彼に質問したり、教わることもあり、すごく助かっています。

福井晶一

ジュンモはご自身もクリスチャンなので、彼を見ていると神の存在をすごく感じるんですね。前回の稽古では「福井さん、一緒に教会へ行きませんか?」と誘って頂いたことがあって、実際に司教様とお話させて頂く機会もありました。神という存在を意識することで、役の捉え方や演じ方が変化した部分がありましたね。それらは、僕一人で稽古していく中では、考えつかなかったことだと思います。

ーーその中で、ご自身の強みはどこにあるとお感じですか?

言葉をしっかりと伝えられるところ。劇団四季では10数年にわたりそのことを教えて頂きました。歌稽古に入ったときも、これまでの経験や培ってきたことは間違いじゃなかった、すべて繋がっているんだなと改めて実感しました。日本語として伝わらないと、内容や感動も伝わらないと思うので。三人とも個性が全く違うので2人には敵わない部分があるかもしれない。ただ、岩谷時子さんによる素晴らしい日本語の歌詞をしっかりとお客さんに伝えるという使命は、自分なりにしっかりと担っていきたいなと思います。

福井晶一

「『明日から強く生きていこう!』と思える、愛や希望がたくさん詰まった作品です」ーー2013年は、舞台装置、照明、音響、衣裳、キャラクターの描き方まで内容を一新した新演出版が話題を集めました。今回演出面での変更点などはありますか。

まず僕は2015年の時に、音楽に関してすごいヒントを頂きました。それまでは自分にない部分まで伸ばそうと無理な発声もしていたのですが、「晶一の、一番良い響きの声で歌っていいんだよ」とヒントを頂き、そこからは自分が持っている強みの中で発声できたという発見がありました。【彼を帰して】では歌唱法を変えて、地声と裏声、さらに2つをミックスした3つの声を使うことで、心情の移り変わりを声に乗せて歌うことができました。お客さんからも「2013年とは全然違う」という声を頂きました。今回はキャストも新しいメンバーが加わりますし、演出チームも2015年から各地でカンパニーを立ち上げてきたロンドンのスタッフが来てくれるので、その中で色んな変化があると思います。それを真っ直ぐな気持ちで吸収して、パフォーマンスできればなと思います。

ーー新しいキャストとの出会いも楽しみです。

やはりキャストが変わると新しい発見もあり、芝居も大きく変わるんですね。彼らが起爆剤となりどんな化学変化が生まれるのか、すごく楽しみにしています。

福井晶一

ーー本作が30年に渡り愛される理由は、どこにあるとお感じですか?

とにかく音楽が素晴らしい。ただ歌うだけでキャラクターの感情を表現することができる。もうひとつは「愛」という普遍的なテーマです。人生の光と影など、「明日から強く生きていこう!」と思えるヒントがたくさん隠されている。現代の若者にも響くところはあるし、20代の僕が惹かれたキャラクターと、40代の今の僕が惹かれるキャラクターが違うように、時代や世代が変わっても感情移入できるキャラクターがいる。そういう楽しみ方ができるのも、30年愛される理由のひとつだと思います。

福井晶一

ーー全編名曲揃いですが、とくに思い入れのある楽曲とは?

ジャン・バルジャンで言うならば、冒頭の【独白】。あの1曲が、バルジャンという役の大部分を占めていると思います。司教の教えに導かれ、彼の人生が180度変わっていく劇的な気づきに満ちた、決意の歌なので。お客様にもすごく期待して頂いている曲だと思いますし、毎回全身全霊でやらせて頂いています。それと【彼を帰して】は、生まれ変わったバルジャンという人間の優しさや本質、愛など色んなものが詰まった歌なので、この2曲は外せないですね。あと、ミュージカルファンとしては(ジャベールの)【星よ】も入れておいてください。ジャベールという人間をこれ以上ないくらい表現しているとても魅力的な歌ですし、観ていてカッコいいですよね。不器用にも信念を貫く彼の生き様というか、男だったらあの歌を歌いたいなと思うミュージカルナンバーのひとつですね。

福井晶一

ーー2012年には、ミュージカル版をベースとした映画版『レ・ミゼラブル』が公開され、米国ゴールデングローブ賞3部門受賞、米国アカデミー賞3部門受賞、日本アカデミー賞最優秀外国作品賞受賞など大旋風を巻き起こしました。映画版から舞台に興味を持たれる方も少なくなさそうですね。

福井晶一

映画に合わせた部分もあるので、観た人は入りやすいかもしれません。さらにオーケストラによる生の臨場感は舞台ならでは。これだけ豪華な編成でやる公演はなかなかないので、オーバーチュアだけでもテンションが上がる。そこは心動かされる所だと思います。今回は歴代の名だたる俳優さんたちが築き上げて来られての30周年だと思うので、その重みを感じつつ最良のものを作り上げて、皆さんにお届けしたいと思っております。

ミュージカル『レ・ミゼラブル』合同取材会にて

取材・文・撮影=石橋法子

公演情報ミュージカル『レ・ミゼラブル』■作:アラン・ブーブリル&クロード=ミッシェル・シェーンベルク
■原作:ヴィクトル・ユゴー
■作詞:ハーバート・クレッツマー
■オリジナル・プロダクション製作:キャメロン・マッキントッシュ
■演出:ローレンス・コナー/ジェームズ・パウエル
■翻訳:酒井洋子
■訳詞:岩谷時子
■プロデューサー:田口豪孝/坂本義和
■製作:東宝
■公式サイト:http://www.tohostage.com/lesmiserables/

■配役:
ジャン・バルジャン:福井晶一/ヤン・ジュンモ/吉原光夫
ジャベール:川口竜也/吉原光夫/岸祐二
エポニーヌ:昆夏美/唯月ふうか/松原凜子
ファンテーヌ:知念里奈/和音美桜/二宮愛
コゼット:生田絵梨花/清水彩花/小南満佑子
マリウス:海宝直人/内藤大希/田村良太
テナルディエ:駒田一/橋本じゅん/KENTARO
マダム・テナルディエ:森公美子/鈴木ほのか/谷口ゆうな
アンジョルラス:上原理生/上山竜治/相葉裕樹
ほか<東京公演>
■会場:帝国劇場
■日程:2017年5月25日(木)初日~7月17日(月・祝)千穐楽
*プレビュー公演 5月21日(日)~5月24日(水)
<福岡公演>
■会場:博多座
■日程:2017年8月1日(火)初日~8月26日(土)千穐楽
<大阪公演>
■会場:フェスティバルホール
■日程:2017年9月2日(土)初日~9月15日(金)千穐楽
<名古屋公演>
■会場:中日劇場
■日程:2017年9月25日(土)初日~10月16日(月)千穐楽

■『レ・ミゼラブル』日本公式サイト http://www.tohostage.com/lesmiserables/

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