『坂本龍一|設置音楽展 async』をレ
ポート 8年ぶりのオリジナル・アル
バムを“全身で聴く”展示空間



音楽と空間の狭間に現れる『async』の世界『async』は前作から8年ぶりとなる坂本龍一によるオリジナル・アルバムである。ファンにとって待望の作品であるばかりではなく、坂本本人にとっても「あまりに好きすぎて、 誰にも聴かせたくない」という至上のアルバムとなった。リリース前にもサンプル盤の配布など一切行われなかったこともあり、本展には坂本の「良質な環境で音楽に向き合ってもらえたら」という強い思いが込められている。展示会場はB1階から4階までが使用され、様々なコラボレーターによる映像作品を交えてアルバム1枚を空間的に体験する構成となっている。



まずメイン会場となる2階には、坂本が最も信頼するムジークエレクトロニクガイサイン製スピーカーで5.1ch サラウンドを再生するインスタレーション空間が広がる。この階はアーティストグループ「ダムタイプ」の活動にも参加し、様々な舞台やメディアアートを手がけている高谷史郎とのコラボレーションだ。高い天井と並べられたイス、変形する鍵盤の映像、選び抜かれた音響は荘厳な空間を創り上げている。会場にいた多くの鑑賞者は長い時間をかけて全身で『async』を堪能していた。





続く3階では、ニューヨークを拠点にしたアーティストデュオのZakkubalanとのコラボレーションが展開。アルバム制作が行われたニューヨークのスタジオとプライベート空間の映像、そしてサウンドによるインスタレーションが展示されている。ザッピングのように様々なイメージによって構成された映像を見ていると、どのような環境でこのアルバムが誕生したのかを追体験できるようだ。



4階では東京都写真美術館での個展が記憶に新しいタイの映像作家アピチャッポン・ウィーラセタクンが、同アルバムの曲に合わせた新作を発表。国際的に活躍するアピチャッポンによる映像インスタレーションは、これまでのフロアとも異なる新たなイメージを与えてくれる。





“教授”の歴史を振り返るB1階ではアルバム『async』や旧作のアナログ盤の試聴、関連書籍などが並ぶ。1978年、初のソロ・アルバム『千のナイフ』のレコーディングを開始した坂本は、細野晴臣からの要請によって新バンド「イエロー・マジック・オーケストラ」へ参加。デビューアルバム『イエロー・マジック・オーケストラ』を発売後、“教授”の愛称で親しまれながら国内外問わず高い評価を得ている。



ミュージアムショップでは、坂本のこうした音楽家としての歴史のみならず、幅広い活動領域を紹介。高校時代よりデモへ参加していたほか、1980年代に日本で起ったニューアカデミズムへの関わり、2001年に起きたアメリカ同時多発テロ、2011年の東日本大震災や福島第一原発事故などを契機とした社会活動などを知ることができる書籍も販売している。



そして1階には「COMMUNICATION WALL」が設置されており、来場者が自由にアルバムの感想や坂本龍一に宛てたメッセージなどを残すことができる。なんと本人からメッセージが返ってくることもあるそうだ。





2014年には中咽頭ガンを宣告されるも、翌年からは映画音楽を手がけ復帰を果たした坂本。多くの人々が待ちわびたオリジナル・アルバムだが、音源のリリースだけでなく全身でその世界観を体験できる本展は、ライブや演劇作品のように、時間芸術である音楽をより一層豊潤なひとときへと変えてくれる。是非、時間をかけて本展でこの1枚のアルバムと向き合っていただきたい。

イベント情報Ryuichi Sakamoto | async
坂本龍一|設置音楽展​

会期:2017年4月4日(火)~5月28日(日)
開館時間:11時より19時まで[毎週水曜日は21時まで延長]
休館日:月曜日
入場料:
大人1,000円 学生500円(25歳以下)
70歳以上の方 700円
ペア券 大人 2人 1,600円

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