sora tob sakana、楽曲派アイドルの
最先鋒から考える日本の音楽

sora tob sakana「ribbon」

 4人組アイドルグループのsora tob sakanaが11日に、ミニアルバム『cocoon ep』を発売した。90年代後半から00年代にかけて興隆した、ポストロックとエレクトロニカを基調としたサウンドに、4人のあどけなくも真っ直ぐな声が加わり、新たな世界観を生み出している。アイドルと本格的なロック、電子音楽を組み合わせるというスタイルは、BABYMETALなどでみられるように今や日本の代表的な音楽スタイルとして確立されつつある。彼女達もまたその流れに乗りつつある。

 sora tob sakanaは2014年7月に結成。風間玲マライカ(15)、神崎風花(15)、寺口夏花(16)、山崎愛(13)の4人から成なるアイドルグループで、2015年10月に1stシングル「夜空を全部」を、2016年7月にはセルフタイトルの1stアルバム『sora tob sakana』をそれぞれリリースした。音楽プロデューサーは、日本のオルタナティブロックバンド「ハイスイノナサ」や、「siraph」などのメンバーでもある照井順政が務めている。

 『sora tob sakana』には鍵盤ハーモニカ奏者で、トラックメイカーの池永正二によるエレクトロ・ダブ・バンド「あらかじめ決められた恋人たちへ」でドラマーを務めるGOTOなどのゲストミュージシャンが参加し、音楽関係者の間でも話題となったという。

 今作は、ポストロックとエレクトロニカを基調にした曲調で、物語性の強い6曲を収録。また、ロックバンド「cinema staff」の久野洋平(Dr)が参加している楽曲「ribbon」を再録。より彼女たちの方向性をはっきりと打ち出し、メインストリームのミュージシャンが参加したという点で、その音楽的意義は極めて大きいものとなっているようだ。

 アイドルとロックサウンドの融合と言えば、世界を席巻中の、アイドルとへヴィメタルの融合を体現したBABYMETALが一番に思い浮かぶであろう。彼女たちが昨年4月にリリースした2ndアルバム『METAL RESISTANCE』は全米総合アルバムチャート(Billboard 200)で39位を記録。日本人としては1963年の坂本九さんのアルバム『Sukiyaki and Other Japanese Hits』の14位以来、実に53年ぶりにTOP40入りを果たすなどその人気ぶりは凄まじいものがある。

 BABYMETALのプロデューサーであるKOBAMETAL氏は、DJでプロデューサーの中田ヤスタカが手掛け、テクノとアイドルを組み合わせたPerfumeの成功例を目の当たりにし、彼女たちの路線を決めたという。

 照井は2015年4月に、あるインタビューでsora tob sakanaについて「かなり戦略的に考えています。アイドルが飽和している状況のなかで、普通にいい曲を作っても響かないですから」とサウンドへの意識についてはっきりと戦略的な意図を持ち込んでいると断言している。

 昨今では彼の言うようにアイドルが飽和しているといわれているなかで、“楽曲派アイドル”と呼ばれるサウンド面に重点を置くアイドル達が注目されつつあるという。ラウドロックやノイズミュージックを取り入れている、ゆくえしれずつれづれや、パンクを歌うBiSH、sora tob sakanaと同じくポストロック系のamiinAなど、ここ数年で急速にこの界隈は盛り上がりつつある。

 中田ヤスタカのような90年代に流行したテクノを聴いて育った世代が、00年代に音楽の第一線に躍り出たように、00年代にポストロックやエレクトロニカに強い影響を受けたサウンドメイカーがこれからまた新しい価値観を想像していくのかもしれない。(文=松尾模糊)

「ribbon」/sora tob sakana 

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