ザ・ブルーハーツ、30周年を過ぎても
色褪せない その魅力とは

ブルーハーツが聴こえる(c)TOTSU、Solid Feature、DAIZ、SHAIKER、BBmedia、geek sight

 パンクロックバンドのTHE BLUE HEARTS(ザ・ブルーハーツ)の楽曲をテーマとした短編映像物語で構成される映画『ブルーハーツが聴こえる』が4月8日から公開される。甲本ヒロト(Vo)、真島昌利(Gt&Vo)、河口純之助(Ba&Cho)、梶原徹也(Dr)の4人により結成されたこのバンドは、「パンクロックバンド」という一見、尖った面を持ちながら、シンプルかつポップでキャッチーなメロディ、メッセージ性の強い歌詞、そしてカッコ良さをたくさん持ったバンドサウンドで、当時のJ-POP/ROCKシーンを牽引したグループの一つだ。

 2015年に結成30年、2017年にメジャーデビュー30年となる彼らだが、この映画のように近年でも様々なメディアで取り上げられ、人々に変わらぬ新鮮なイメージを見せている。今回はそんな彼らの魅力の秘密を探ってみたい。

世代を超えて愛される

 たとえば彼らが活動をおこなっていた当時の音楽シーンで青春を迎えた筆者の思い出を振り返っても、その印象はとても鮮烈だ。高校時代、当時流行したBOOWYやPERSONSなどの人気バンドと肩を並べ、軽音楽部のプレーヤー達は、その楽曲のとっつき易さからこぞってコピーをしていたのを覚えているし、その後、学校の合唱コンクールでも歌われるほどの広がりを見せていた。

 2005年には山下敦弘監督、韓国の女優、ぺ・ドゥナ主演による映画『リンダ リンダ リンダ』が公開され、2015年に放送されたドラマ『表参道高校合唱部!』(TBS系)では「TRAIN TRAIN」が高校合唱部のコーラスで歌われて話題を呼ばれるなど、公でも長きにわたって親しまれている。

 先述の諸々のロックバンド同様、日本のロック界でも伝説的な存在である彼ら。一見、不思議に思えるのは、たとえば彼らを通過していないはずの世代、近年の若い世代でも、彼らの歌をリアルタイムで体験していないにもかかわらず、知っているという人がたくさんいることだ。

 先に挙げた「TRAIN TRAIN」はもちろん「リンダリンダ」「僕の右手」「終わらない歌」など、世代を超えてメロディも詞も、誰でも知っているし、共感できる。日に日にあらたな音が無数に現れる、そんな現在の音楽シーンで、これほど長く愛されているアーティスト、そして歌があるだろうか?

見直される時期

 彼らのサウンドはいたってシンプル、それはバンドサウンドとしてだけでなく、甲本ヒロトのボーカルにもその意図が見える。すぐ覚えられそうなキャッチーなメロディに、決してテクニカルに歌うわけでない、どちらかというとストレート。でも自分の一番思いを伝えたい言葉に、思い切り力をぶつける。

 その詞はユニークだが理解しやすく、かついろんな解釈ができる。彼らの魅力はとても基本的なものであるようにも見える。その意味では逆に、実は近年の音楽にはそういった部分を重視する傾向が薄いと思える節もある。

 音楽というシーンが混沌としている現在、彼らは改めて見直される時期に差し掛かっているではないだろうか? ザ・ブルーハーツにとっては2015年は結成30年、2017年はメジャーデビュー30年。この時期にこの映画が登場したのは、そういった意味が自然に浮き出しているからとも思える。

 この映画のそれぞれのドラマで取り上げられているのは「ハンマー(48億のブルース)」「人にやさしく」「ラブレター」「少年の詩」「ジョウネツノバラ(情熱の薔薇)」「1001人のバイオリン」と、根っからのファンならではのナンバーと、誰もが知っているメジャー曲が織り交ぜられ、それぞれ非常に興味深い解釈を物語の中で見せている。

 それは彼らの曲をテーマとしたからこそ、そんな印象すら感じられる。もしザ・ブルーハーツを知らない人がいるのであれば、これを機会に一度彼らの思いに触れてみてはいかがだろうか。(文=桂 伸也)

MusicVoice

音楽をもっと楽しくするニュースサイト、ミュージックヴォイス

新着