Acid Black Cherry

Acid Black Cherry
その最終回は武市尚子氏に、この振り返り連載で改めて感じたAcid Black Cherryの10年をまとめてもらった。

【Acid Black Cherryの10年】

 “まだ10年”と感じるか、“もう10年”と感じるかは人によって違うものである。

 今回、2007年の始まりから1年1年順を追って思い返してきたことで、Acid Black Cherryの10年と向き合うことが出来た。改めて感じたのは、yasuが1つ1つ積み重ねてきた日々が今、10年という歴史を築いてきたのだということだ。

 連載の中でも振り返ったが、ツアーの直前に喉を痛めて、ギリギリの精神状態でツアーを全部まわりきった『Q.E.D.』のツアーファイナルの武道館のステージで、yasuは声を嗄らしながらも唄いきり、最後までいつもと変わらぬ笑顔でファンたちと向き合った。yasuが音楽を続ける限り、彼がライヴに向き合うこの姿勢に嘘はないだろう。

 この10年間、yasuにインタビューし続けてきた。

“1万人であろうが1人であろうが、全力で同じステージを演る”
“一番の特効は、お客さんの近くにいくこと”

 この言葉は、10年前も今もyasuから変わらず発せられている。そう考えれば、yasuのライブの原点は、やはりライブハウスにあるのではないだろうか。

 それを証拠にyasuは、始まりのシークレットツアーや購入者イベントライヴ、さらには『2015 livehouse tour Sーエスー』と題した、“2015 tour L-エル-”アリーナツアーと平行して全国5ヶ所5公演で行われたファンクラブ限定ツアーでも初心を忘れない証明として自ら“ライヴハウス”という場所を選んでライヴをした。

 yasuは、ホールやアリーナという会場をソールドアウトさせる集客を持ちながらも、あえてこのライヴハウス公演を行なってきたのである。

 距離を感じさせないライヴを心がけているyasuは、ホールやアリーナでも、ライヴハウスと変わらぬ熱量でライヴを行っているのだが、インディーズの頃、お客さんを獲るために我武者らだった“あの時のあの場所での想い”を、yasuは忘れることはないのだろうと思う。

 ワンマンライヴに限らず、如何なる場所でもyasuのライヴにかける想いは変わらない。2011年から参加している『a-nation』のステージでも、無心でライヴに向き合うyasuの姿があった。

 そんなyasuの姿は、回数を重ねるごとに注目を集めることとなっていき、初登場時は完全な“アウェー戦”であった所から、2016年には“ホーム”と呼べるほどの場所に変えていったのである。

 今回の映像作品の中に収められている『a-nation Live History 2011-2016』にも、そんなライヴハウスでの原点を忘れていないyasuの姿を見ることができる。

 もちろん。“アウェー戦”を“ホーム”にしたのは、yasuだけの力ではない。yasuの作る楽曲を愛し、yasuを支えてきた【TEAM ABC】の力は偉大である。『a-nation』の客席を映した映像からは、出演回数を重ねるごとに、yasuを支えようと集まるTEAM ABCの姿とABCとの絆を深く感じることもできる。

「おい!TEAM ABC!俺たちの凄さ、見せて帰ろうぜ!」

 TEAM ABCと想いを重ね、真摯にライヴに向き合うyasuの姿を見ていると、この先、彼がどんなに広い場所でライヴをしようとも、ファンたちとの心の距離は決して遠ざかることはないと確信するのだ。

 10年という月日の中で成長したのはyasuだけではない。

 例えば。2007年の11月にリリースされたシングル「愛してない」をきっかけにAcid Black Cherryを知ったのが14歳だったとするならば、きっとその当時は“愛してない”という言葉の本当の意味を深く知ることもなかっただろう。しかし、そこから約2年後。2009年の7月にリリースされたシングル「優しい嘘」を聴き、16歳になった少年と少女は、この曲の歌詞の中にある“愛してた”と“愛してる”の過去形と現在形と、“大嫌い”に心をざわつかせ、yasuが歌詞として残したその言葉たちの中に“人を愛することの意味”を見つけようとしたに違いない。

 そして。「愛してない」から10年経った今、24歳になった彼らと彼女たちを取り巻く環境が大きく変化したことで、きっと“人を愛することの本当の意味”を知ることとなり、10年前に、なんとなく惹かれたyasuの唄う“愛してない”の言葉の意味を深く悟っていることだろう。

 10年という時間の経過の中で、親を慕う子供だった自分が、子供に慕われる親という立場に変化した人もいるだろう。そう思うと10年というのはとても長く貴重な時間である。

 “何枚売れたかじゃなく、何回聴いてもらえたかが大事”とyasuは言う。

 唄とは、聴く人の人生の中に刻まれ、共に歩んでいくものだと私は思う。多くの人たちが、yasuの生み出すAcid Black Cherryのサウンドと唄と共に、自分だけの一度きりの人生を大切に生きていってほしい。

 この先も、Acid Black Cherryが素敵な人生のBGMになってくれることを願って――――。

text by 武市尚子

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OKMusic編集部

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