the GazettE 今も胸に刻む“大日本異
端芸者”を掲げた十五周年記念公演で
宣言「お前らを絶対離さないから、安
心してついてこいよ!」


2017.3.10(FRI)国立代々木競技場第一体育館15年――。それは一人の人間が生まれ、育ち、人としての習いを学んで、義務教育を終えるまでに等しい時間である。何も知らない赤ん坊が、一人の自立した人間として身を立てられるようになる――その決して短いとはいえない年月を経たときに、これまでの我が歩みを振り返りたくなるのも当然だろう。そこで初ライブからちょうど15年になる2017年3月10日、the GazettEが記念すべき15周年ライブに選んだのは、現在は封印されている初期コンセプト“大日本異端芸者”を今のthe GazettEで表現すること。その名も“暴動区 愚鈍の桜”と掲げ、シーンを代表するビッグバンドへとthe GazettEを押し上げた根源を今、再び探ることだった。

「代々木に咲いた桜吹雪、散らせるものなら散らせてみろ!」と威勢のいい開演前アナウンスに続き、お馴染みのSEが鳴って手拍子が湧いたと思いきや、突如、音が切れて天井から桜が舞い降り場内は暗転。赤いレーザーが代々木第一体育館の広い空間を縦横無尽に走ると、和太鼓の音と共に14の篝火がステージに灯り、“大日本異端芸者”“暴動区 愚鈍の桜”のタイトル幕が登場する。これから何かが起きる――物々しいオープニングに膨らむ期待の中、壇上に白軍服姿の5人がせり上がると、耳を劈くような大歓声が! そして本舞台に降りたRUKI(Vo)が静かに両手を合わせ、最初のギター一音が鳴っただけで驚喜の声を巻き起こした幕開け曲は「貴女ノ為ノ此ノ命。」。今日と同じ白軍服のヴィジュアルでシーンに鮮烈なインパクトを与えた2004年発売のミニアルバム『斑蠡~MADARA~』のリードトラックで、歌謡調の叙情メロは確かに現在のthe GazettEのイメージからは遠い。しかし、だからこその貴重な響きに、2階スタンドの端までギッチリと客席を埋め尽くしたオーディエンスは笑顔満開でモッシュ。また、モニターに脚を掛けて豪快にプレイする麗(G)がスクリーンに映るや、その露わな太腿に場内からどよめきが起きる。“大日本異端芸者”時代の忠実な描写に客席はヒートアップするばかりだが、勿論その原因は単なる“再現”にあるわけではない。この時代の彼らの持ち味でもあった破天荒すぎるギターフレーズは、ガッチリとバンドのアンサンブルに噛み合い、瞬発力満点の「舐~zetsu~」に2004年の日比谷野音ワンマン限定で発売された希少盤「十四歳のナイフ」と、イントロだけでオーディエンスを狂喜させた戒(Ds)のドラミングは切れ味鋭く、15年の進化を確かに証明。the GazettEの高いスキルで表現される大日本異端芸者の殺傷力は、全く当時とは比較にならない。

the GazettE『十五周年記念公演 大日本異端芸者「暴動区 愚鈍の桜」』撮影=KEIKO TANABE

the GazettE『十五周年記念公演 大日本異端芸者「暴動区 愚鈍の桜」』撮影=KEIKO TANABE

the GazettE『十五周年記念公演 大日本異端芸者「暴動区 愚鈍の桜」』撮影=KEIKO TANABE

the GazettE『十五周年記念公演 大日本異端芸者「暴動区 愚鈍の桜」』撮影=KEIKO TANABE

the GazettE『十五周年記念公演 大日本異端芸者「暴動区 愚鈍の桜」』撮影=KEIKO TANABE

また、この日のセットリストは大半がファンの事前リクエストにより決められたということで、曲が始まる度に歓声が起きまくっていたのも大きな特徴。中でもタイトルコールだけで悲鳴が湧いた2002年の初音源に収録の「センチメンタルな鬼ごっこ」は、RUKIいわく「十何年ぶりにやった」というレア中のレア曲で、赤い拡声器で歌う彼とヘッドバンギングを繰り出す楽器隊が生むおどろなムードの初体験に、オーディエンスはただ立ちつくすばかり。一転、REITA(B)の野太いベースでスタートした「Back drop Junkie[nancy]」では客席の側が頭を振り、「ここまで飛んでこい!」の煽りに逆ダイブをかまして、ライブハウスで前へとひしめき合っていた当時を思い起こさせる。加えて、赤いライトに染まって指で投げキスしながら妖艶に葵(G)がギターをかき鳴らし、RUKIもエロティックに股間をまさぐる「Sugar Pain」からはダークネスな世界が展開。低音でリフレインされる<愚流リ愚流リ>のフレーズと篝火が場内の空気を怪しく染める「蜷局」に、ハイハットに一つずつ音が加わって生まれる強固なユニゾンの上、メロウな歌声が伸びやかに乗る「飼育れた春、変われぬ春」と、曲始まりを効果的にアレンジしながらウェットな情緒を全開に。

出色だったのが「Last bouquet」で、RUKIの朗々たるアカペラに始まり、麗の空翔ける鳥のようなギターソロから葵の繊細なアコースティックギターへと続くドラマティックな展開には、大日本異端芸者の切なくストレートに刺さる歌モノ力を見せつけられた。さらに、RUKIがギターを抱えただけで客席が曲名を察した「Cassis」も、ボトムを支える戒の熱いビートにREITAの実直なベースライン、シャープさを増した麗のソロに葵が奏でる心揺さぶるアウトロ、常より高揚感の滲むRUKIの歌唱と、全てが滑らかに心地よく聴く者の胸に染み入って、演奏が終わるや拍手喝采。続くシャッフルチューン「ザクロ型の憂鬱」も曲の大人びたムードが今の彼らにピタリとハマり、大日本異端芸者を今のthe GazettEで表現するというテーマの意義深さを示してゆく。

the GazettE『十五周年記念公演 大日本異端芸者「暴動区 愚鈍の桜」』撮影=KEIKO TANABE

「今日さ、いつもと違う曲ばっかりやってるからって、お前らノリがわかんねーんだろ? 思い出そうとして、頭使ってんじゃねーよ! まだまだブチ込んじゃうよ。派手にやろうぜ!」

RUKIの挑発通り終盤は攻撃的なナンバーが畳みかけられ、現在のライブでもお馴染みの「COCKROACH」では、客席もモッシュとヘッドバンギングの嵐に。戒のタイトなドラミングを筆頭に「ワイフ」の高速な曲展開を引っ張るバンドアンサンブルも揺るぎなく、力強いコーラスでも煽り立てるREITAは曲終わりに右拳を突き上げた。「Ruder」ではギターからドラム、ベースと性急なフレーズを繋ぎ、「REIちゃん!」というRUKIの合図でREITAがクールなベースソロをブッ放すと、麗がセンターのお立ち台へ。華やかなギターソロで魅せる彼の傍らに葵も上り、じゃれ合う自然体な姿と目くるめくパフォーマンスは、どんなに奔放なプレイやスピードにもブレることのない演奏と重なって、場内の温度をグングンと上げてゆく。その勢いと熱さは大日本異端芸者時代を、勿論遥かに凌駕するものだ。最後は<Riot!>と繰り返すパワーコーラスに客席が揺れる「The $ocial riot machine$」、そして「地獄へようこそ!」と「関東土下座組合」へ。左右の花道へと飛び出した彼らに、その後贈られたアンコールを求める声は、いつにも増して大きなものだった。

the GazettE『十五周年記念公演 大日本異端芸者「暴動区 愚鈍の桜」』撮影=KEIKO TANABE

当然、アンコールに登場した5人のアプローチは、さらに容赦のないものに。「みんなね、楽しそうな顔はしてるんだけど、身体が動いてないんだわ。まだまだこっからだからね。様子なんて見てんじゃねーぞ! かかってこい!!」と戒が吼えての「泥だらけの青春」からは、RUKIのしゃくり上げるような歌唱に、「赤いワンピース」では「やっちゃって、お客さん!」と懐かしい煽りも復活して、彼に倣いオーディエンスが一斉にクルクルと腕を回す景色の壮観なことといったら! テンションの上がった麗は水を噴き上げ、RUKIが雄叫びを上げる幕切れに騒然となる客席に、続いて彼は赤裸々な想いを語る。

the GazettE『十五周年記念公演 大日本異端芸者「暴動区 愚鈍の桜」』撮影=KEIKO TANABE

「本日は俺たちの15周年という日をお祝いしに来てもらって、メチャメチャ感謝してるぜ! 今日のライブを発表してから、メッチャ長かったよ。あと、メッチャ緊張してた(苦笑)。今回、事前にアンケートを取ってみたら、自分達が想像してたセットリストと違って、やろうとしてた曲は最下位のほうにいて。ノリが俺らにもわかんなかったんですよ。残ってる映像もテープだから観れなくて、ヤベーなと思ってたんですけど、楽しかった。久しぶりの曲なのに、こんなデカい会場でやらせてもらって、“意外とカッコいいじゃん!”って俺らも楽しんでます。これから大日本異端芸者じゃなくても、普通のライブでもやっていけたらなって……心から思ったぜ」

the GazettE『十五周年記念公演 大日本異端芸者「暴動区 愚鈍の桜」』撮影=KEIKO TANABE

そこから「「春ニ散リケリ、身ハ枯レルデゴザイマス。」」で颯爽とフリを繰り出す彼に、客席は大ヘッドバンギング大会に。バンドとして走り始めた初期衝動とポジティヴな決意を突き抜ける明るさで歌い上げる「☆BEST FRIENDS☆」を楽器隊でも合唱し、最後は初期から今に至るまで演奏され続けている代表曲「LINDA~candydive Pinky heaven~」で多幸感の中に締めくくる。しかし、客電が点いてもアンコールの声は鳴りやまず、再登場したRUKIは心からの感謝を述べた。

the GazettE『十五周年記念公演 大日本異端芸者「暴動区 愚鈍の桜」』撮影=KEIKO TANABE

「まずは俺たちとお前たちが15年間という時間を共有できていることに感謝。15年間the GazettEという人生を歩んできて、いろんな景色を見てきました。大日本異端芸者というのは、ヴィジュアル系を日本語で言ったら何だろう?と考えたのが始まりなので、今も変わらず胸に刻んでいます。長い道のりの中で自分たちを見失いそうになったり、何が正しいのかわからなくなったりしたときもあったけど、the GazettEとして誇りを持ってやってこれたのは、俺たちの選ぶ道を“間違ってない”と信じてついてきた、みんながいてくれるからです。そして俺たちはthe GazettEの未来に今でも夢を見続けています。これからもまだ見ぬ景色を夢見て、最高の音楽とライブを作っていくことを約束するから。お前らを絶対離さないから、安心してついてこいよ!」

そしてタイトルコールされた「未成年」では銀テープと桜が舞って、感極まったRUKIをオーディンスの歌声が手助けする場面も。この15年、節目となる重要なライブで幾度となく歌い継がれてきたナンバーは、いつしか青い時代に交わした誓いを互いに確かめ合う意味合いを持つようになり、ファンとの固い絆を結ぶものとなった。演奏が終わって堪え切れない涙にしゃがみ込む葵に、麗が「ホント今までの道のりは長かったんですけど……葵が号泣するのも無理ないなって。良い景色をありがとうございました」とからかえば、葵も「泣いてねーし! でも、ホントこいつら大好きだなって。これからもどうしようもない奴らをお願いします!」と挨拶。戒は「大日本異端芸者という時代が紛れもなく自分たちの1ページで、それが積み重なって今に繋がってるんだなとひしひしと感じました。繋がることができたのは、みんなの力。みんなと一緒にthe GazettEを大切に守っていきたい」と宣言し、REITAも「今日は喋れねー! 一つだけ。本当にありがとうございました!」と涙を隠せない。そんなメンバーの様子に、RUKIは「可愛い奴らでしょ? なかなかいないぜ、こういうバンド」と評したが、全くもって同感である。彼らの純粋で真っ直ぐな本質は、大日本異端芸者時代から驚くほどに変わっていない。

「15年やってきて、今もっとさらにカッコいいことやってるんで、今のthe GazettEもぜひ聴いてみてください。今日はありがとうございました。バイバイ、代々木! 愛してます」

the GazettE『十五周年記念公演 大日本異端芸者「暴動区 愚鈍の桜」』撮影=KEIKO TANABE

そうRUKIが告げて5人が去ると、8月19日に9年ぶり3度目となる大型野外ライブ 『BURST INTO A BLAZE 3』を富士急ハイランド・コニファーフォレストで開催することも発表された。本日が、結成から3年に満たない大日本異端芸者時代と現在のthe GazettEとのハイブリッド凝縮版であるとするならば、15周年のNEXT ACTIONとなるこの日は15年の総括が為されるライブとなるだろう。然るに、大日本異端芸者とは何だったのか? その答えは人によって様々であろうが、何物にも囚われない自由な発想で常識を打ち破り、どんな罵声を浴びようとも信じた道を貫く姿勢そのものだと筆者は考える。それはオーディエンスの高い支持を糧に、確固たる地位を築き上げた今も何一つ変わることはない。不変の魂に纏った鎧は進化を続け、5人の放つ音をより強く、より光り輝くものにしてゆくだろう。

取材・文=清水素子 撮影=KEIKO TANABE

セットリストthe GazettE 十五周年記念公演 大日本異端芸者「暴動区 愚鈍の桜」
2017.3.10(FRI)国立代々木競技場第一体育館
SE
01.貴方ノ為ノ此ノ命。
02.舐〜zetsu〜
03.十四歳のナイフ
04.センチメンタルな鬼ごっこ
05.Back drop Junkie[nancy]
06.Sugar Pain
07.蜷局
08.飼育れた春、変われぬ春
09.Last bouquet
10.Cassis
11.ザクロ型の憂鬱
12.COCKROACH
13.ワイフ
14.Ruder
15.The $ocial riot machine$
16.関東土下座組合
<ENCORE>
17.泥だらけの青春
18.赤いワンピース
19.「春ニ散リケリ、身ハ枯レルデゴザイマス。」
20.☆BEST FRIENDS☆
21.LINDA〜candydive pinky heaven〜
<ENCORE 2>
22.未成年
ライブ情報the GazettE LIVE IN SUMMER 17「BURST INTO A BLAZE 3」
[日程]2017年8月19日(土)
[会場] 富士急ハイランド・コニファーフォレスト
[開場 / 開演] 16:00 / 17:00
[チケット料金] 全席指定 ¥8,000-(tax in)
[チケット一般発売日] 7月8日(土)10:00
[問い合わせ] :DISK GARAGE 050-5533-0888(平日12:00~19:00)
特設サイト http://the-gazette.com/15/0819/
HERESY LIMITED TOUR17 十五周年記念公演 大日本異端芸者「暴動区 愚鈍の桜」追加公演
4月12日(水) Zepp Tokyo
4月14日(金) 仙台PIT
4月20日(木) Zepp DiverCity(TOKYO)
4月24日(月) Zepp Nagoya
4月26日(水) Zepp OsakaBaySide
[TICKET]
全公演 前売¥6,800(税込)
※ドリンク代別、3歳以上有料
※本公演のチケットはHERESY会員のみご購入いただけます。
特設サイト http://the-gazette.com/15/tsuika/

リリース情報the GazettE BALLAD BEST ALBUM『TRACES VOL.2』
2017年3月8日(水)発売【初回限定盤】SRCL-9336 ¥3,611+TAX
全12曲収録/デジパック仕様/Bonus Track:M11「絲」、M12「体温」収録
【通常盤】SRCL-9337 ¥3,056+TAX
全10曲収録

<収録曲>
M1「枯詩」
M2「Cassis」
M3「D.L.N」
M4「CALM ENVY」
M5「reila」
M6「UNTITLED」
M7「WITHOUT A TRACE」
M8「紅蓮」
M9「白き優鬱」
M10「PLEDGE」
※初回限定盤のみ収録
M11「絲」
M12「体温」

SPICE

SPICE(スパイス)は、音楽、クラシック、舞台、アニメ・ゲーム、イベント・レジャー、映画、アートのニュースやレポート、インタビューやコラム、動画などHOTなコンテンツをお届けするエンターテイメント特化型情報メディアです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着