吉澤嘉代子が歌う、「ジャイアンみた
い」な女の子になりたい!

ジャイアンといえば、日本国民で知らない人はいないほどの有名なガキ大将。「心の友よ~」と言いながらのび太たちにわがままを押し付け、「お前のものは俺のもの」という理不尽な名台詞を吐く。よく空地にオーディエンスを集め、自身のリサイタルを開催している。

「ジャイアンみたい」の女の子は、いってみればこのジャイアンの女の子版なのだが、吉澤嘉代子にかかれば、やっていることはジャイアンなのに、それが可愛くなる。その魅力を探るために、歌詞をたどっていこう。





冒頭の歌詞は、ジャイアンの「お前のものは俺のもの」という名台詞をアレンジしている。ジャイアンの有名なセリフが、あなたはわたしのものだけれど、わたしはあなたのものにはならないという、少しひねくれた女の子のものになる。「あなたはわたしの物だけど」と、最初にだけ「物」という漢字を使うことによって、さらに高飛車な感じを醸し出している。
この感じ…見る人が見たら、可愛く感じないだろうか。さらに歌詞をみてみよう。




深夜の呼び出し、経験のある方もいるだろう。こちらからしたら、疲れてもう寝ているところに突然連絡が入るなんて、迷惑以外のなにものでもない。しかも、その理由が「つまんないから」というしょうもないものだったら。それでも、自分のことを好きなら来てくれるはず、という女の子。これも理解されにくい乙女心なのだ。この子的には、自分がつらいとき、彼氏は駆けつけてほしい、という純粋な願望なのかもしれない。はたからみたら我儘以外の何ものでもない態度の裏には、女の子の淡い感情がひそんでいるのだ。





ジャイアンみたいなたくさんのいじわる。でもそれは、彼氏のことが好きだったからなのだ。本人からしたら、相手を好きなあまりにしてしまう行動なのだが、相手には理解されない場合が多い。この曲でも、「いじめてた」「好きだった」と過去形になっているから、きっとふたりは別れてしまったのだろう。





そして、でた。ジャイアンリサイタル。でも、少し様子がちがうようだ。本物のジャイアンリサイタルは、聴く人も嫌々聴いているが、この歌詞では、“あなた”は真っ赤になっている。
愛の歌をつくって、好きな人に聴かせる。この曲で唯一、女の子が素直になっている場面だ。いじわるの奥に隠れたほんとうの気持ちが伝わって、お互いに真っ赤になっていた。そんな思い出。これを最後にもってくるあたりが憎い。

ジャイアンみたいに我儘だった女の子。でも、この曲の歌詞を読むと、そんな女の子の可愛さがたくさん見つかる。

TEXT:遠居ひとみ

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