東京女子流『ミルフィーユ』に出てく
る「イチゴ白書」は、甘くない青春の
戦いの象徴

サビの歌詞です。「テレパシーみたいだ」はメンバーが気に入った歌詞の1つ。何年も一緒に活動しているとテレパシーのようにお互いの考えが分かるんですね。

「ミルフィーユ」は、フランス語で「1000枚の葉っぱ」の意味のスイーツ。葉っぱが重なっているかのように何層も重ねられた見た目からこの名がついています。この曲を作詞したカミカオルは、AAAの『HORIZON』等で知られる作詞家。メンバーの関係性やグループの雰囲気を歌詞にするのが得意ですね。今回もメンバーの関係を歌詞にして、心が「重なる」さまを「ミルフィーユ」と表現しています。




ここの歌詞も良いですね。現在のメンバーはちょうど18~20歳。ちょうど子供から大人になるタイミングです。「一緒にされちゃって」の歌詞は、このメンバーが一緒にされた意味もありますが、知らない人から見ると「他のアイドルグループと一緒に見える」ということも含みます。このグループは、そういうイメージとも戦っているんですね。




このあたりも、メンバーがそれぞれ気に入っていると発言した歌詞。

「イチゴ白書ならだれかもう倒れてる頃」ミルフィーユに入ってそうなイチゴに「白書」がついています。この歌詞は何でしょうか。これは有名なアメリカの青春映画『いちご白書』をかけています。『いちご白書』は、1970年に公開されました。実際にあった学園闘争を題材にした物語。1960年代から70年代は学生運動が盛んであり、この映画はそんな時代の象徴とも言える作品です。この映画を元に、日本では1975年にユーミンが『「いちご白書」をもう一度』という曲を作り、この曲もヒットしました。

この「イチゴ白書」という単語は、「若者の戦いや青春の象徴」を意味しているのです。さらに言えば、『「いちご白書」をもう一度』のタイトルのごとく「武道館をもう一度」という現在の女子流の目標にもかかっています。映画『いちご白書』で例えるならば、戦っていた若者の誰かがもう倒されたあたり、ということなんですね。当時の学生たちが大学や大人社会と戦っていたように、東京女子流は現代日本の音楽文化の中で戦っているのです。

「形あるモノは(だいたい)こわれてゆくものなんです」とあるように、この世の中のモノは全て壊れて変わって行きます。女子流も一度壊れてから、新たに作り直しているところ。

「夢追う代償は」「クリームみたいに優しくない」。「逆に納得してない だけどやるしかないんだ」これらも、まさに今の女子流の状況にマッチした歌詞ですね。本格的ダンスボーカル路線にシフトしたこのグループは、アイドルフェスにも出なくなり、CDの売上自体も落ちています。でも、未来を見据えてこの方向でやる。アイドルフェスの常連だった女子流が挑戦するからこそ、意味があるんですね。

このグループが、ミルフィーユのように今後も新しい層を重ねていけますように!



TEXT:改訂木魚(じゃぶけん東京本部)

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UtaTen

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