家入レオ×大原櫻子×藤原さくら、三
者三様の歌声で魅了した一夜

それぞれ個性溢れる歌声と存在感を放ち、ファンを魅了した家入レオ×大原櫻子×藤原さくら(撮影=田中聖太郎)

 若い世代を中心に人気を集める、家入レオ(22)、大原櫻子(21)、藤原さくら(21)の女性アーティスト3人が12日、神奈川・パシフィコ横浜 国立大ホールでおこなわれた、ライブイベント『ビクターロック祭り 番外編 IchigoIchie Join 6 家入レ×大原櫻子×藤原さくら』に出演、4000人の観客を前にそれぞれヒット曲などを熱唱した。公私ともに親交があり「一緒にライブがしたい」と話していた3人。それが叶ったこの日のアンコールでは、共作した2つの新曲も披露。3人の絆を感じさせる内容で観客の心を潤した。大原は3人を「三者三様で一人ひとりに個性がある」とたとえていたように異なる魅力を放っていた。一方でMCでは“ほっこり”とした雰囲気で観客を笑顔にさせていた。まさに春爛漫をのぞかせる希望に満ち溢れたライブとなった。

三者三様の輝き

 三寒四温の季節、今をときめく3人の女性アーティストの華やかなステージによって、春爛漫を迎えた。純度の高い歌声を届けた家入レオ、感情の揺れ動きを繊細なまでに表現する大原櫻子、日洋の二面性のある歌声と表情で魅了する藤原さくら。同じビクターに所属し、公私ともに仲が良い。この日のライブも自らが企画を出し、実現した。20代前半の彼女たちは会話こそ年相応だが、歌えば圧巻の歌唱力で、弾けば独特のグルーヴを放った。キュンキュンとさせながらも奥深い音楽性をしっかりと掲示。春の訪れを感じるかのような心に希望が灯るそんな清々しい一夜だった。

 3人の親交は、大原がファンだった家入のライブを観覧したことが始まりだった。大原がメジャーデビューした直後の2014年、家入のライブを訪れ、挨拶。翌15年秋には2人によるジョイントコンサートが開かれた。そして、同年に藤原がメジャーデビュー。家入と大原が、藤原のライブを観覧、その後の楽屋で会話したことがきっかけで親交を深めた。

 もともと家入と藤原は同じ福岡出身。一方の大原は、デビュー前の藤原のライブを見ていたようだ。藤原はこの日のライブで「お! 家入レオだ! 大原櫻子だ!」と一般人の目線で見ていた2人とこうして親交を深め、ライブができることが「嬉しい」と語っていた。また、家入も「同世代でプライベートな話だけでなく音楽の話ができることは嬉しい」との趣旨を述べていた。そんな強い絆で結ばれた3人のライブは、互いにリスペクトする3人だからこそ生み出すことができる独特の世界観があった。

二面性の輝きを放った藤原さくら

藤原さくら(撮影=田中聖太郎)

 海風が心地良く体をあらう。会場前は、若い男女が長い列を作っていた。開演間近に迫ると、ホールにある席が人影で塗りつぶされていく。これから始まるライブにそわそわしているようだった。

 定刻を少し過ぎたところで場内の明かりが消える。その瞬間、大歓声がこだました。アリーナ前列で再び歓声があがる。アコギの音色が響く。天井から2つの光がゆらりと辺りを照らす。程なくして中央にスポットが当てられる。絨毯の上に立つピンク色の衣装の藤原さくらがまばゆく光る。この日の開幕を飾ったのは、彼女のデビュー作となった、フジテレビ系ドラマ『ラヴソング』の主題歌「Soup」だった。いきなりのキラーチューンに会場は再び大歓声に包まれた。

 気持ちの整理がつかぬまま高揚感を残して2曲目「BABY」へと移る。息を多く含んだ彼女の歌声は奥深さとどこか気品を感じさせる。そして、時折、上目遣いやいたずらな笑みを浮かべながらアコギを弾く表情は色気を感じさせた。2曲目を終えたところで「トップバッターで緊張しますが、今日はよろしくお願いします!」と挨拶。家入レオと大原櫻子の“馴れ初め”を明かし、この日を迎えられたことを「嬉しく思う」と語った。

 続く3曲目は同ドラマの挿入歌でバラードの「好きよ 好きよ 好きよ」。ピンと張り詰めた場内に、藤原が指で奏でるアコギのアルペジオの音色と、優しい歌声が響き渡る。やがてバンドの音も加わり、壮大な物語を描いていく。天井から当てられる光は藤原のアコギのボディに反射して弱い光を観客に照らしていた。繊細な歌声は光をも揺らしているようだった。

 一方の「Cigarette butts」ではもう一つの魅力が表れていた。リズミカルなドラムを追いかけるように、藤原はアコギを力強く弾く。カントリーミュージックを感じさせる曲調で、全編英語詞。それまでの日本語詞とは異なり、歌声には滑らかさと力強さがあり、これまでのとは別の色気を放っていた。挑発的にみせる彼女の表情もその色を加えた。日本語詞と英語詞で異なる歌の魅力。そんな二面性に観客も聴き惚れているようだった。

 そうした藤原の世界観にどっぶり浸かったまま、3月29日発売のセカンドシングル「Someday/春の歌」の新曲を披露。「Someday」は出会いについて書いた新曲であり、「春の歌」はスピッツの名曲。「Someday」について藤原はMCで「去年の今頃はドラマ撮影があり、ドラマをきっかけにいろんな出会いがあって…。私のおばあちゃんに、おじいちゃんとの馴れ初めを聞く機会があって、もし掛け違いがあったら出会えてなかったと思うと、大切な人との出会いは偶然じゃなくて必然なんだって…。私も大切な人に出逢ったらそう思うようになるのかな…と、出会いについて考えながら作った曲」と紹介した。

 その「Someday」は、五月雨のように奏でられるギターの音色に、藤原の歌声が優しく入り込む。明るい曲調だが、どこか哀愁を感じさせる深みのある楽曲だった。その空気感を伴って「春の歌」を届け、最後は、1st Album「good morning」収録のリードトラックで、ジャズテイストの「かわいい」で本編を締めくくった。去り際、小走りに笑顔と手を振りながら「楽しんでいってね」と優しく声を掛けていった。

感情を繊細に表現する大原櫻子

大原櫻子(撮影=田中聖太郎)

 爽やかな風に導かれるように、続いて登場したのは大原櫻子。EDM調のサウンドが入り込み、無数の光が場内を目まぐるしく照らす。やがて、ステージ中央に白光が寄せられると、後ろ姿の大原櫻子が浮かび上がる。両手を挙げて、正面を振り返る大原は声高く「盛り上がっていくぞ!」と叫ぶ。それを合図に、アリーナはペンライトによってピンク一色になり、大歓声が響いた。スカートをヒラリとさせながらその場で踊る大原。アッパーな曲「ステップ」、そして、ライブ初披露となる映画『チア☆ダン』挿入歌「青い季節」を立て続けに披露した。

 アコギの弾き語りのイメージがある彼女だが冒頭の2曲はマイクのみ。その分、ダイナミックな歌声とともに、ステージを縦横無尽に駆け回ったり、くるくると回ったりと無邪気な笑顔が覗かせながら、観客を引き込んでいった。ステージギリギリまで身を寄せ、観客にしっかりと届ける。そんな彼女の煽りを受けて冒頭からタオル回しも起こるなど、すでにピークに達しているようだった。

 「三者三様、一人ひとりが個性的な3人なので、それぞれの色を楽しんでもらえたらなと思っています」というMCを挟み、アコギを肩から下げて「大好き」を届ける。弦に向けて一振りすると、力強く歌声を響かせた。冒頭の2曲とは異なり、感情の揺れ動きを繊細に表現していく。それは次曲「サイン」で更に深化する。

 透明のアクリルタイプのエレキギターに持ち替えた大原。照明が落とされたステージに、シンセの低音が地を這う。程なくしてドラムカウントが始まる。ギターが誘い、その後をキーボードが併奏する。正面をみつめながら弾き語る大原。心に抱えている感情を静かに表していく。<愛してる>。白光を背中いっぱいに受け、その一部はアクリルボディのギターを抜けた。その光は歌声と屈折し、観客の心を突き刺していた。そして、歌い終えた彼女は乱れた髪をそのままにその場に立ちつくし、俯いた。

 堂々とした立ち振る舞いの大原だが意外にも「実は私もライブをするのが武道館以来約半年ぶり」だったようだ。MCではそんな告白をしながらも「そんなド緊張するライブも今日は家入レオちゃんと藤原さくらちゃんと一緒に出来るということが嬉しい」とも語った。

 MC明けでは、映画『チア☆ダン』の主題歌でバラード曲「ひらり」を披露した。大原の持つ圧巻の歌声で空気をがらりと変える。高音の力強さ、裏声の優しさ…。いつかしか観客は我を忘れていた。そして、それぞれの脳裏には幼き頃の映像が流れているようだった。想い出に浸るように情感を震わせる観客。そして、主演映画『カノジョは嘘を愛しすぎてる』主題歌「明日も」(MUSH&Co.名義)で更に心を射抜かれる。

 静まり返った場内。緊張感が漂うなかで、<Tomorrow never knows><ずっとずっと><Never give up on my dream><今はじけよう>をアカペラで歌い上げる大原。凄まじい声量に息を呑む観客。冒頭を歌い終え、大原の「カモン! 後半戦盛り上がっていきましょう!」という掛け声で一転。一気に空気がカラフルになる。同じ曲でもノリノリのサウンドを前に大原の歌声も弾む。大盛り上がりのなか、最後に「踊ろう」を歌い届け、ステージを終えた。

純度の高い歌声で魅了した家入レオ

家入レオ(撮影=田中聖太郎)

 興奮が冷めやらぬなか、最後に登場したのは家入レオ。明かりが落とされたステージに登場した彼女は、中央に立つと一呼吸置くように胸に手を当て笑顔を見せる。無数の水玉のような照明が辺りを明かすと、ゆっくりと歌が始まる。「僕たちの未来」。笑顔とは対照的に力強い歌声が場内に轟いた。そのまま「太陽の女神」へと流れる。いずれもドラマ主題歌で盛り上げる。

 繊細な歌声を重ねていく。高音は清らかで、低音は滑らか。歌声には不純物が一切ない純度の高い無色透明の色をしている。きれいな歌声が観客の心をあらっていく。

 2曲を届けたあとでMC。この日、藤原さくらと大原櫻子のライブを会場の後ろ側で見ていたことや無事ライブがおこなわれたことへの嬉しさなどを語り「櫻子ちゃんも言ってたように、三者三様の3人。大好きだと言い合いながらそれぞれの音楽を刺激し合って。こうして音楽を届けられる場があるのは皆のおかげ」と感謝の言葉を口にした。

 そして、「学生時代は、友達との別れ際に『またね、バイバイ』というのが当たり前だったけど、大人になるとまた会えるのが半年後、1年後、5年後かもしれない。会う頻度や距離がどんどん離れていってしまう。でも私の心の中にはいつも君の場所があるよと言いたくて作った曲」と紹介してから「君がくれた夏」をしっとりと歌い届けた。

 「Silly」では、ピアノ単音が冷たく響き、青色のライトが更に冷たくしていった。そのなかで歌う家入レオの歌声は力強さとともに、ガラスのように張りつめた際どさが同居していた。その一方でサビでは雪解けのように眩い光がステージを照らし、家入の歌声も温かみを増していった。

 MCを挟んで5曲目「Shine」からはアッパーなナンバーが続く。ステージを縦横無尽に走り回る家入。ジャンプを披露しては笑顔をのぞかせる。「Hello To The World」で更に疾走感は増していき、興奮の度合いを高めていく。曲間ではドラムのリズムにのってMCを展開。「楽しんでいる? 私もめっちゃ楽しい!」と高揚感を言葉で確かめ合うと「もっともっと踊って叫んで、ロックな一日に!」と呼びかけ「サブリナ」へ。

 家入の歌声に絡む、2本のエレキギターの歪んだサウンド。家入自身もバンドメンバーとコミュニケーションをとっていき、客席に投げキッスも送る。それを受けて更に昇天していく観客。最後は「それぞれの明日へ」。ドラマティックなイントロから始まり、家入の歌声が優しく入り込む。節を重ねるごとにアグレッシブになるサウンド。家入の歌声も力を増していく。その一方で興奮してもなお、サビではしっかりと純度の高い歌声を届ける。その華やかさに観客も心を躍らせ、感動のなかで本編は終了した。

共作の新曲2曲を届ける

仲の良い3人だけにトークも弾んだ(撮影=田中聖太郎)

 アンコールでは3人揃って登場。「一緒に素敵なライブが出来て本当に嬉しいね」とこの日の喜びを改めて共有し合うと、3人で共作した新曲2曲を歌い届けた。最初の曲は「櫻子ちゃんとさくらちゃんが詞を書いて、さくらちゃんが作った曲があるんです。それをここで初披露したいと思います」として、パーカッションと、藤原のアコギに乗せてのバラードを披露した。大原のアカペラから始まると、藤原がギターのボディを叩いて改めてカウントを始める。そして、藤原、家入と歌を紡いでいく。3人のコーラスも際立った。

 そしてもう一つの新曲では、家入のバックバンドが参加した。この日のために作ったというポップな曲で、「櫻子ちゃんとさくらちゃんが歌ってくれたらいいなぁと思って作りました!」と家入が2人に歌ってほしいという思いから作詞・作曲した。今度は家入から歌い始め、大原、藤原と紡いでいく。3人の絆を確かめ合うような明るいポップナンバーで、曲中では家入と藤原が指を指し合う仕草もあった。

 曲の終盤にはハート型の紙飛行機が無数に天井から舞い降り、3人も手を伸ばし、手元へ。最後は3人揃ってジャンプして演奏を締めた。「楽しかったね」「HAPPYな夜が終わっちゃう」と名残惜しそうに語る3人だが、表情は清々しかった。最初から最後まで温かい空気に包まれたこの日。彼女達の絆は、そして歌声は観客の心を満たした。

(取材=木村陽仁)

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