聖飢魔IIと違う程良い、デーモン閣下
異種共演で開いた未知領域
ロックバンド・聖飢魔II(既に解散)のボーカリストで、ミュージシャンのデーモン閣下が3月15日に、ソロアルバム『EXISTENCE』をリリースする。前作『MYTHOLOGY』から5年ぶりとなる今作は、聖飢魔IIの信者(ファン)としても有名な芥川賞作家の羽田圭介氏をはじめ、コラムニスト・ブルボン小林(=大江賞作家の長嶋有)氏、テラフォーマーズ原作者の貴家悠(さすが・ゆう)氏の3氏に作詞を依頼。編曲ではスウェーデンのアレンジャー・Anders Rydholm(アンダース・リドホルム)氏を起用し、更には能楽笛方・一噌流の一噌幸弘(いっそう・ゆきひろ)氏とコラボした大曲も収録。一方で閣下は、リード曲「ゴールはみえた」の歌詞は短編小説を書くように作詞した。この手法はこれまでと異なるようだ。今回のような異業種との共作や新たな試みで音楽としての可能性は広がったという。その制作の経緯や裏側はどういったものだったのだろうか。渋谷で撮影をおこなったというMVとアートワークなども含めて話を聞いた。
紛れも無くインターネットの影響だと思う
――昨年は聖飢魔IIの30周年「再集結」を終えていかがでしたか? 寂しさはありましたか?
いいや、特には。観に来てくれている諸君は、武道館大黒ミサの最後の我々が去って行くシーンで「もう2度と会えないのかも」という感じになっていたのだと思うけれど、我々にはその後、映像の編集が山のように残っていたので。そういう事がまだ延々と続く事が分かっていて、まだまだ毎日顔を合わせる事が分かっていて。だから、全然寂しいような感じではなかった。たまたま人前でやることが終わったという感じだけだったね。
――編集作業などはまだまだ続くのですね。
もうちょっとで終わるんだけど、本当は我輩のソロアルバムよりも先に聖飢魔IIの活動絵巻教典“ウラビデオ”を2月に出す予定だったんだ。編集作業が遅れていることと、我輩のソロ作品の追い込みが重なったので優先順位が本作『EXISTENCE』という事になったわけだ。
――“裏ビデオ”というのは、裏という事ですと、悪魔的にかなりいかがわしい感じの仕上がりに?
卑猥とかではなくて(笑)。バックステージね。リハーサルとか打ち合わせをやっているところとか、ツアー中の移動や打ち上げとかだね。首から下だけを撮り続けているという映像が、本解散の時(魔暦2年=2000年)と20周年、25周年の時に出ていて、今度は『ウラビデオ4 -THE BACK STAGE OF SEIKIMA XXX- 』というやつが出るわけ。だからうちの信者からすると馴染みの“裏側を撮っているビデオ”であって、決して、いかがわしい作品ではない(笑)。
――魔暦元(1999)年に解散してから信者が増え続けている事を閣下はどう思われますか? TVに出演されている事が大きいのでしょうか?
いや、TVもあるかも知れんが、インターネットだと思うな。あれは何年も前の映像も関係なく上がっている上 、連続していくらでも見続けられるじゃない? そうすると、自分がいつの時代に生きているのかが麻痺してくるんだと思う。あたかも今活動しているグループであるかのように勘違いしちゃうわけだ。頭では分かっていてもそう感じないというか。
そういう事で、若年層の信者が増えたりとかね。インターネットが無かった時は、かなりの積極性…つまり能動的に教典とかを買いに行って聴いたり、金銭を払って黒ミサに行ったりして初めて「ああ、こういうのなんだ」と分かったわけだけど、インターネットはちょっとクリックすれば「ああ、こういうのなんだ」がすぐ分かるじゃないか?
それによって「もっと早く知っていれば足繁く通ったのに」と、後になって気付いた人達がいる。あとは日本以外でもそのやり方で入信に至った者がいるという事で、我輩は紛れも無くインターネットの影響だと思う。
――きっかけは何であれ閣下としては嬉しい事ですよね?
いやあ、複雑だよね。今更増えられてもね。「もっと早く知ってよ」って話じゃない(笑)。
聖飢魔IIとは一線を画したものを作りたい
――バンド活動とソロ活動とでは気持ちの切り替えはありますか?
大きくあるね。特に今回は聖飢魔IIの30周年の活動が終わったばかりの時に、このソロアルバムを作るという話になったので、最初に考えた事は「聖飢魔IIとは一線を画したものを作りたい」「なるべく違えば違う程良い」とね。
――今作は5年ぶりのソロアルバムですが、その期間でどういった着想がありましたか?
「出すとしたらこういうのにしたいな」というものはあったね。結果としてはそれと同じ雰囲気にはならなかったけど。
――タイトルの「EXISTENCE」は「存在」という意味ですが、これは制作していくうちにこのテーマに辿り着いたということでしょうか?
そう。タイトルは最後だね。曲も全部出来上がって、歌もほぼ全部歌い終わっている段階で「そろそろアルバムタイトルを真剣に考えて下さい」と言われたので、強いて言えばこういうタイトルかなという感じ。だから最初からそういうテーマで作品を作っていたのではなかった。
――前作『MYTHOLOGY』ではデュエットというコンセプトがあったと思いますが、今作では芥川賞作家の羽田圭介さんをはじめ、コラムニスト・ブルボン小林(=大江賞作家の長嶋有)さん、テラフォーマーズ原作者の貴家悠さんの3人の作家を入れています。この発想は信者の方の中からとの事でしたが、その経緯は?
順番があって、今回、レコーディングの計画が持ち上がった時に、スケジュールが凄くタイトだった。ソロアルバムだから大抵の楽曲に我輩が絡んでいた方が良いという話なんだけど、でも仮に10曲だとしても、曲にせよ、歌詞にせよ、10曲全部を書くのは大変だという話になったわけだ。
じゃあどういう風にしようかという話の中で、「誰か歌詞を何曲か書いてくれないかな」という事になって、そこで外注するという手もありだなと。2枚目のソロアルバム『DEMON AS BAD MAN』で作詞・作曲の外注の実験は経験済みで、必ずしも吾輩に似合うものばかりにはならないことも分かっていた。普段、曲を作っている人が我輩に曲を作ってくれるというのも、もちろん面白いんだけど、それは1回やった事があるので今回はもっと違うアプローチがないかと思ったのだ。
で、いわゆる“プロの作詞家じゃない人”に頼むのは面白いかもしれないなと。でも、プロの作詞家ではないから、そうポンポンとは書けないだろうし、「我輩が今までどういう曲を歌ってきたかを知っていて、現在文筆業をしている」そういう人にしようという事で、この3人があっという間に浮かんできた。
――それで信者の方の中からの選出になったわけですね。
そう。多分、世の中に出る音楽の歌詞を書いた経験はそんなにないであろうから、手伝うところは手伝うし、分からない事があれば質問してくれれば良いという事で、基本的には作ってくれたものは必ずアルバムに入れるというコンセプトでやった。
普通は、曲が5分くらいに収まる歌詞なんだけど、どうしても書きたい事があるのなら、その曲が10分を超える量になっても良いよという説明をした。
メロディが先にあるとイメージが膨らませにくくなると思ったので、メロディの無い状態で自由に書いてくれと。その後からこっちがメロディを付けるという感じにしたんだ。
――公開レコーディングの時に羽田さんは「メロディがあった方が書きやすかったかもしれない」と話していましたね。先にメロディが無い方が書きやすい気もしますが。
それはね、その人のタイプによると思うよ。
――閣下はどちらのタイプでしょうか?
どっちも大丈夫だけど、メロディが先にある方が書き慣れているね。
――歌詞が先でメロディを付けるのは難しそうなイメージがあります。
実は我輩はそれが好きなの。何にも無いところにただメロディを考えるよりかは、ある程度言葉がある方がどんな事を歌うか分かっているわけじゃない? こっちの方が圧倒的に作りやすいんだよね。
――羽田圭介さんは一行ずつに文字数が書いてあったそうですね。対して、他のお二人はセクション毎の区切りなどはあまり無かった?
そこまでではなかったね。こことここが似ている感じだから同じパートの「つもり」なんだろうな、とか。繰り返しのパターンが不規則なイレギュラーなところはあったけど。
――そういうところは直したりして?
いやいや、直さないよ。「同じメロディに対してどうしても文字数が合わないんだよな」というところだけは相談したけどね。それは3人ともしたね。
――貴家悠さんが作詞した「地球へ道づれ!」は7分くらいの長い曲ですが、これは書いた歌詞をそのまま曲にしたということですか?
そうそう。
――歌詞の内容が普通の人では書けない感じですね。
相当面白いよね。
――内容に関してはお話をされた?
全くしていない。それも最初の約束の「どんな内容でも収録する」というわけで。よっぽど倫理に反するとか、我輩の生活信条に合わないものはちょっと相談するかもしれないけど、そうでない限りは、基本的にはそのまま歌うという事にしていた。
――その3氏の歌詞から刺激を受けたというお話もされていましたが、それが反映した歌詞もありますか?
直接反映したわけではないけれど、順番的にこれから我輩が書く詞よりも先に、この3人が書く歌詞を目にする事だったので、色々考えたね。「まがりなりにも30年プロでやっている我輩は、これとは違う感じのものを書く必要があるだろう」という風になるので、ある意味「これらに対して自分は何を書くのか」という事になるんだよね。
――3氏が作詞した曲は、これまでのハードロック、メタルという括りではありませんが、これは閣下がメロディをつけた時点で「こういうアレンジで」というのをアレンジャーのAnders Rydholmさんに発注したのでしょうか?
そういうものもあるし、そうでないものもある。
――Anders Rydholmさんがメロディを聴いてご自身のイメージで作ったものも?
「地球へ道づれ!」と「Stolen Face」に関しては、だいたいは予めこういう事になるだろうという感じはあったけどね。そもそもメロディが「地球へ道づれ!」は静かなところと激しいところがあるけど、激しいところは縦ノリで、音符がそんなに上下しない感じだから、そうするしかやりようがないというか。間奏の展開はもちろん違ってくると思うけど。
「Stolen Face」は我輩が作った時点ですでにシャッフルだった。シャッフルは色んな解釈があるけど、そんなに元のイメージから外れたものにはならないであろう、とね。Andersが一番悩んだのは「方舟の名はNoir」。我輩が書いたメロディは割とAメロBメロと淡々と進んでいく中で、サビで急に広がりをもって展開するような感じなので、「これをどうしたら良いか分からない」というところのやりとりが最初にあったね。何回か「こんなアレンジで」とくるんだけど、3回くらいやり直して、最後の状態にいき着いたんだよね。
笛奏者の一噌幸弘とのコラボ「深山幻想記」
――今作はバラエティに富んでいる印象を受けました。伝統芸能である能の要素を取り入れた「深山幻想記 -能Rock-」はプログレッシブロック調で。
これは今回の為に作った曲ではなくて、笛奏者の一噌幸弘氏が主催するステージに去年、我輩が出たことがきっかけで。これは元々インストゥルメンタルの曲で、彼が終始笛を吹いたり、他の楽器がメロディを演奏する曲として作られたものだった。我輩がステージに一緒に出る事になったので、普段は楽器が奏でているメロディに、我輩が歌詞をつけて歌ったんだ。
それでこのアルバムを作る事になった時に、この「深山幻想記」を入れたいという流れで入れる事になった。曲の総尺はそのライヴでやった時は19分くらいだったね。みんながソロを回していくから長くなる。それを10分にしてAndersに送った。
――笛がかなりアグレッシブですよね。
一噌氏は能の笛を吹く家にたまたま生まれたので、小さい頃から笛を吹いているけど、普通にロックやポップスも聴いて育ってきたから、それはそれで興味があったんだね。自分で笛を吹いてロックなアプローチは出来ないだろうかといいう事をもともと思っていた人で。だから自分のオリジナル曲はロックっぽいわけなのだ。
――異種ジャンルではありますがロックという共通点があったんですね。
そうなんだけどね、でも案外結構“能のこだわり”みたいのがあって、「能の場合はこうなるんですよ!」とか。でも「いや今回は、ロックだから!」みたいなね。ドラムの音は後録りだから能の展開のように、どんどんテンポアップしていくとドラムが大変だという話になったりして。じゃあどうやってその感じを出そうかという事を、Andersも含めてやり取りをして。結果、テンポは徐々に上がっているんだ。パターンが変わる毎にクリックの速度が上がっていって、後半は早くなっている。最近のロックを録る手法としては極めて珍しいはずだね。
――特に大変だったところはありましたか?
和楽器の出所進退だね。効果的に聴かせるための。後は、この曲は能の人が作っているからキーがずっと「A」なのだ。「A=ラ」の音をずっと鳴らしていてもぶつからない曲な訳だ。Andersからすれば、ひたすら10分間もAの音で縛られている曲をアレンジするのが「とにかく辛い」と。「何とか展開させられないものか」という事だったんだけど、笛の特性上キーを変えられなかったのだ。
なので曲を飽きさせない工夫も、方法論が他の曲と異なってくる。単調になりそうなものを、どうやって単調にならなくするのか、という点になった。歌に関しても楽器に関してもね。
――Andersさんはスウェーデンの方ですが、こういった楽曲をアレンジするのは難しかったでしょうね。
だからそこは我輩も面白いなと思ったわけだ。彼が生で見た事がない、地球の反対側の国の民族楽器だからね。そいつの音を突然、送られてきたわけで。普通だったらこの能の4つの楽器(能楽囃子)は、左から順番に「太鼓」「大鼓」「小鼓」「笛」で並ぶから、クラシック感を尊重して、左右の定位を振り分けるならそういう順番になるけど、別に日本のクラシックで作るわけではなくて、我々の新しいものとして作るから『そこは自由ですよ』と。
あと、能の打楽器には全部掛け声が入っているのだ、通常で。 「オォ〜! ヤァ〜!」というのも同時に録っているから必ず声が被る。その正常なバランスを彼は知らないわけ。それを「能」というものを知らない人間がそれを受け取ってどうするのかという事、それはそれで良いと思った。うるさいなと思った音は下げてもらって、聴きたいなと思った音は上げてもらってと。どうぞ自由にやって下さいといった感じだった。
――スウェーデン人が思うミックスバランスになっている訳ですね。
そうそう。面白いよ。今回の和楽器奏者たちはみな日常、洋楽器ともジョイントしてやっている奏者だから、クリックを使ってレコーディングをした事もある。「レコーディングはどれくらい時間かかるかな?」と3、4時間くらいをみて計画を立てていたんだけど、打楽器だけで丸一日かかってしまって、笛まで到達しなかった(笑)。結果的に3日かかったから!そこから先の計画が丸つぶれになっちゃったりしてね。歌入れ予定の時間が笛の時間になったり。
――心して聴くべき曲ですね。
だからエネルギーはかかっているんだよね。収録した12曲の中でも凄く手間がかかっている。本当は3、4曲、邦楽器が絡んでいる曲を入れたかったんだけど、そうすると凄く時間がかかってしまうから今回は1曲にしたというのもある。
「ゴールはみえた」は短編映画のように
――リードトラックの「ゴールはみえた」はどのタイミングで出来ましたか?
割と最初の方だったね。レコーディングの最初の方でリード曲の候補を2、3曲に絞って、それらの候補曲から先に歌を入れていくことにした。やはり歌が入ると聴こえ方が違うからね。「ゴールはみえた」「Shibuya Scrambled Crossing」「Post Truth -青空が殺気立つ- 」が候補だったかな。その中の「ゴールはみえた」と「Shibuya Scrambled Crossing」は意識的に早く詞を書いて録音して。リード曲は映像を作る絡みなど、この先の展開も出て来るのでね。歌としては最初から3番目くらいには歌っているね。
――「ゴールはみえた」はアコギから入りますが、最初からそういった曲だったのですか?
そうだね。最初からそう。Andersが作った段階でアコギから始まる形だった。
――最初に聴いた印象はいかがでしたか?
「格好良いな!」と。こういう曲は日本人が作ろうと思ってもなかなか作れないなと思ったわけだ。我輩の中では、この曲がきっとリード曲になるだろうなという予感はあった。本当は詞が載ってなんぼなんだけどね。「カッコ良い曲なんだけどあんまり良い詞が考えられなかったのでシングルになりませんでした」という聖飢魔IIの曲も今までにいっぱいあるのでね。「すみません。我輩のせいでシングルになりませんでした」みたいなのがね(笑)。
――リードトラックは歌詞の重要度が高いんですね。
そう。リード曲としては、それなりに人の心を掴んでくれないとね。だから言葉が載ってから最終的に決めようかと思っていたんだけど、まあそれなりの歌詞が付いたのでね。
――先ほど映像との絡みもあるとのことでしたが、MVはどの様な仕上がりになっていますか?
これはたまたま幸運な事にというか。聖飢魔IIも我輩のソロも「NAKED Inc.」という制作会社で、ここ20年間ほぼ全てを録ってもらっている。プロジェクションマッピングの技術も日本でいち早く取り入れてやり始めた会社でもある。
例えば新装改築された東京駅・丸の内駅舎の建物にプロジェクションマッピングして何かやるというイヴェントがあったのだが、それをやったのがその会社で。そのNAKEDのチームがたまたま去年の暮れから今年の頭にかけて、渋谷ヒカリエのイヴェントスペースで、東京の街のビルとか建物の模型をいっぱい並べて、そこにプロジェクションマッピングで色んな映像を投影するというイヴェントをしている所だった。
――東京駅のプロジェクションマッピングはニュースにもなっていましたね。
吾輩のMVの総指揮をやっている人が、「せっかくうちでそういうのをやっている最中だから、そこでビデオを録りたい」という事で、その空間…ちょっと用意しようと思っても簡単には出来ない様な面白い空間で、MVの6、7割は撮影する事が出来たんだよね。だから、ミニチュアになっている建物に色んなものが投影されている前で歌ったり演技したりしているシーンがある。
ヒカリエは、営業時間中は客が入るから夜の8時とか9時からしか使えないんだけど、それまでただ待っているだけというのも、もったいないなと思っていたらそこでピーンと閃いて。当日に我輩が「せっかく渋谷だしスクランブル交差点に写真を撮りに行かない?」という話をしたのだ。そうしたら「それは面白いですね!」と皆が乗ってきてね。
――「Shibuya Scrambled Crossing」という曲がありますからね。
そうそう。それでスクランブル交差点に行って、もうほぼゲリラ的に車から降りて信号が青になったのを待って、カメラマンがバシバシ撮っていくというのを1往復して。それはジャケットにも使われているし、ビデオの中にも使われているのだ。だから今までに見た事の無いような映像がいっぱい入っている。
――閣下が交差点に現れたらパニックになりますね。割と閃いたらすぐ試すタイプなのですか?
そうだね。割と自分ではどうなるのかがわかっているから、対処の仕方は慣れたものだけどね(笑)。アイデアは絶対とは限らないけど、とりあえず皆に振ってはみるね。交差点の時はその場で、皆で「どうやったら実現出来るか」というのを考えていたね。
――その流れですと「Shibuya Scrambled Crossing」がリードトラックになった可能性もありますね。
それでもおかしくはなかったよね。
――それと渋谷のスクラブル交差点は合成写真ではないと言っておいた方が良いですね。
そうだよ。言っておかないと合成だと思われちゃうからね(笑)。
――「ゴールはみえた」のMVは楽曲とかなりリンクした映像でしょうか?
いや、そんなにはなってないね。どちらかというとイメージカットが多いね。我輩は、別の役者が出ているドラマ仕立てでも面白いと思ったんだけど、あまり具体的な場面を役者が演じてしまっても、イメージが限定されるじゃない? この曲はドラマティックだけれど「何が起きていて、この先どうなるのか」というのは聴き手に委ねている部分があるのでね。だからあまりそこまで提示しない方が良いんじゃないの? という話になってね。
――閣下は歌詞の内容について聞かれてもそんなには説明をされない?
そうだね。
――歌詞は感じ取って欲しいという所でしょうか。
曲にもよるんだけど、「ゴールはみえた」なんかは、皆が「これはどういうシチュエーションなんだろう?」「この後どうなるんだろう?」という事を、聴く人がそれぞれ思ってくれればいいんじゃないかな。
――それぞれのゴールを想像して頂いてと。
そうだね。今回は今までにあまりした事がない歌詞の書き方をやってみた。先にメロディがある際「何かの短編映画のテーマソング」という感じで歌詞を書いてみると良いのでは? という話になったんだ。例えば「主人公がいて、こんな風になって、この先どうなるんだろう」みたいなテイストで。「ゴールはみえた」や「Shibuya Scrambled Crossing」だったりとかのいくつかの曲をこの手法で書いた。「短編小説を書くような感じで詞を書いた」とも言えるな。
――今回頼んだ作家さんたちの様な立場で書いたんですね。それが逆になった様な感じもあります。
そうそう。小説家の彼らが詞を書いて、我輩は小説的な「ファンタジー」を書いたわけだね。我輩的にはけっこう新しいやり方で、そこが今までのアルバムとちょっと違って聴こえる所だと思う。
――それでは閣下から読者へのメッセージをお願いします。
我輩が歌を作って歌っているという事自体を知らないという人も世の中にはいっぱい居る訳だけども、これを聴けば“本業”をちゃんとやっているという事が分かるだろう。
――閣下はコメンテーターで通っているという事も多分にあると?
現状その部分は大きいと思う。実際は歌っているというだけじゃなくて曲も作っているからね。もっと踏み込むと、「そんじょそこらのものを作っていないよ」という事、割と個性的なものを作っているんだよという事を、まあ、それだけ知ってくれれば良いよ。
(取材=村上順一、撮影=編集部)
作品情報
EXISTENCE CD/Ariola Japan リリース日魔暦19(2017)年3月15日 ■EXISTENCE(通常盤 / BVCL-787) [CD] ■EXISTENCE (初回生産限定盤 DVD付/BVCL-785〜786) [CD] [DVD] ※初回生産限定盤 |
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