wacci、新たなスタートを切ったツア
ー最終 温かな音で包み込む

昨年から続く3本のワンマンツアーを完遂したwacci

 5人組バンドのwacci(ワッチ)が2月4日に、東京・豊洲PITでワンマンツアー『あっち、こっち、そっち、わっちツアー 2016-2017 冬~日常ドラマチック~』のファイナル公演をおこなった。昨年8月に1stアルバム『日常ドラマチック』を発売。それに伴い、この日へ辿り着くために、『wacci アルバムリリース記念 関東全県ツアー ~関東ドラマチック~』『360°ワンマンライブ ~パノラマドラマチック~』と本ツアーを含め3本の全国ワンマンツアーをおこなってきた。ツアー中5人は「豊洲PITでのワンマン公演を成功させたい」と願い、その想いを各地で言葉にし続けてきた。アンコール含め全18曲を演奏。全国から集まったオーディエンスをwacciの温かいサウンドで楽しませた。

あとは僕らが楽しませてあげるから

橋口洋平(Vo.Gt)

 本気は人の心を動かすように、彼らの熱意は全国各地の人たちの心を本当に動かした。この日の公演はSOLD OUT。しかもMC中にアンケートを取ったところ、wacciと豊洲PITで想いを交わそうと、北は北海道から南は九州まで全国各地から大勢の人たちが足を運んだ。なかには、台湾、タイ、オーストラリアから来たファンもいた。メンバー自身が、自分たちの音楽が国境を越えて愛されている現実に嬉しさをにじませたが、今や日本の音楽も、国を越えて人の心を動かしているのも事実。wacciの音楽に触れる海外の人たちが、もっともっと増えてゆくことを期待したい。

 もちろん、それは国内においても同じこと。心をキュッと優しく抱きしめ、側に寄り添い、折れそうな心を支ながら明日を見据えてゆく彼らの音楽が、もっともっといろんな人たちの心の仲間になってくれたら、そんな嬉しいことはない。wacciの音楽と心の絆を結びあえたら、彼らの音楽はきっと君を助けてくれるはずだ。

 とても温かな想いを胸に抱かせる幕開けだった。wacciは、共に明日へ向かって歩もうと。ここにいるみんながwacciの仲間だからこそ、一緒に光(未来)を見ながら歩んでいこうと「歩み」を歌いかけてきた。彼らは、仲間(ファン)たちへ歌を通して手を差し伸べていた。wacciは、言いたかった本心を暖かい演奏に乗せ、いきなり告白した。「楽しんでるか!? もっと盛り上がっていけるか!?」。橋口洋平(Vo.Gt)が呼びかける。
 
 その声に応えようと場内中から沸き上がった熱い手拍子。肝心なライブの日に限って雨に見舞われてきたwacciだが、この日はまさに快晴。それも彼らの祈りが空へ届いたからか。「晴れるから」が流れたとたん、気持ちが心地好く上がってゆくのを感じていた。胸の中へワクワクとした期待が膨らんでいく。なんて心を晴れな気分へ染め上げてゆく歌だろう。

 軽やかに駆けだしたエレピの音色、美しくも透明なハーモニー。弾む「キラメキ」の演奏に乗せ胸がときめきだせば、キラキラと心を優しく騒がせていく。君(ファン)へ想いを告げるように歌う橋口。その気持ちを受け止められたことが嬉しかった。

 「ここに来てくれたことだけで僕らは満足です。あとは僕らが楽しませてあげるから、この時間を楽しみましょう。待っててくれた人たちへの気持ちを噛みしめつつ歌います」と橋口が想いを伝えた。

 どこか切なさを覚えながらも、それ以上に、その歌声と演奏が気持ちを暖かく包み込んでゆく。君への想いを歌にした「会いにいくよ」に触れながら、切なさと愛おしい感情が交錯しながらも強い意志を持った歌声に、心は強い共鳴を覚えていた。寄り添い続けたいくらいの温もりを感じさせる楽曲だからこそ、切ない気持ちさえ飲み込んで、歌に心地好く浸っていたかった。

 続く「ふわり」も切ない歌なのに、でも、wacciの演奏へ愛おしいくらいに温もりを覚えていた。暖ったかくて、切なくて、でも愛しくて…。そんな揺れ動く気持ちを誰だって経験しているからこそ、その気持ちにフワッと寄り添っていたかった。郷愁を抱かせるゆったりとした演奏が、触れた人たちを優しく包んでゆく。大切な人へ想いを届けるように歌う『君なんだよ』が、胸をキュッと疼かせてくれた。

 「一番温もりを感じられる歌じゃないかなと思います」と橋口が告げた後に歌ったのが、「君とシチューを食べよう」。シンプルな演奏の上で、余計な感情を脱ぎ捨て、ただただ伝えたい想いだけをwacciはしっかりと胸に響かせてくれた。橋口によるアコギの弾き語りからスタート。惑う想いを何処か嘆くように、wacciは「羽田空港」を歌い奏でだした。ゆったりと、でも次第に大きく広がってゆく演奏。いつしかそこへ温かさも覚えていた。

 小野裕基(Ba)のメロウなベースプレイ。丸みを帯びたその音色に重なりあう気象情報のアナウンス。やがて舞台は一変。因幡始(Key)のピアノの音色に導かれ、胸へ優しく響くバラードの「東京」が場内へ染みだした。一つ一つの音の波がゆっくりと重なりあう。その音の上で、みずからの心へ問いかけるよう橋口が歌いあげていく。なんて切々としたドラマを感じさせる歌だろう。

 心の内側を描き出した物語へ新たな展開を告げるように「大丈夫」の演奏が始まったとたん、場内中から大きな手拍子が沸き起こりだした。誰もが両手で大きな輪を頭上に作っては、<大丈夫♪>と舞台上へ笑みを浮かべながら歌いかけていた。何時しか会場中へ、橋口の歌に重ねるよう「大丈夫」と歌う声も生まれていた。なんて温かな空気だろう。ここにいる一人一人が大きな大きな愛に包まれながら一つに溶け合ってゆくようだ。誰もが弱い自分を認められたからこそ、明日へ向かって「大丈夫」とみずからへ言い聞かせているようにも見えていた。

本当に嬉しいのは「あなた」が来てくれたこと

橋口洋平(Vo.Gt)

 「ここからさらに盛り上げていくぞ」。その言葉に相応しい、<HEY!HEY!!>のやり取りが場内に広がってゆく。「まっぴら!」は、心地好く身体をシェイクさせるポップなロックンロールナンバー。勢いあふれた演奏に導かれ、気持ちもどんどん上がっていく。ここからは、熱狂に身を預けてこそのステージだ。会場中の人たちも身体を揺さぶりながら、その熱狂へ楽しく寄り添っていた。

 村中慧慈(Gt)の哀愁味を帯びたギターソロを合図に、演奏陣によるジャジーなセッションプレイが登場。その勢いを持って演奏は、タオルを振りまわしはしゃいだ「君に不採用」へ。情熱あふれた楽曲へ誰もが飛び乗り、手にしたタオルを振りかざし、魂を開放しながら一体化した熱を描きあげていた。上がり続ける心の渇き、このまま熱に嬉しく浸食されていけばいい。

 軽やかに跳ね続ける「Weakly Weekday」では、会場中の人たちが橋口の振りに合わせ、無邪気に踊り続けていた。最高じゃない、頭をからっぽにはしゃげるこの一体化した空気が!! 続く「誰ニモマケズ」でも気持ちをどんどん突き上げてゆく歌と演奏に身を預け、<走れ! 走れ!!>と声を上げながら、興奮の中で溶け合うことに大勢の人たちが無上の喜びを覚えていた。

 「この日SOLD OUTしたことも嬉しかったけど、本当に嬉しいのは「あなた」が来てくれたこと。みんなと、この空間を作れたことが何よりもの誇りです。僕たちは、何度も頑張ろうとしながら何度もあきらめを経験してきたし、何度も挫折を繰り返してきました。何度も頑張れず、挫折を重ねていた僕らに、本気で音楽一本に賭けようという勇気をくれたのは、あなたたちの支えがあったからです。ここまで進んでこられたのも、あなたがいたからです。これからも一緒に歩んでください」

 本編最後にwacciは、彼ら自身がここまで歩めた想いを歌にした「リスタート」を届けてくれた。変わりたくても変われなかったあの頃、それでも捨てられない夢を信じてwacciは歩き続けてきた。何度もチャンスを逃してしまったけど、それでも夢をあきらめなければこうやってチャンスをつかんでいける。そんな想いを、自分たちが歩んできた経験を語りながら、同じ想いを共有している人たちと一緒に手を結び合い、明日へ向かって歩いていこうとwacciは歌いかけてきた。そのリアルな想いが、不安な心に光をまぶしてくれた。その光を本当に輝きに変えていくのは、そう自分次第だと…。

 満員のファンたちの歌う「大丈夫」の合唱に導かれ、ふたたびメンバーは舞台上へ。アンコールは、白い光に包まれながら、とても大きな光を放つバラードの「変身」から始まった。続く「結」は、メンバーとファン一人一人の心を結ぶ気持ちを歌にした楽曲。じんわりと想いが胸に染み渡る美しいバラードに、ジーッと想いを傾けずにいれなかった。

 「ここが、また新たなスタート地点です。ここからまた、大きな最初の一歩をみんなと一緒に踏み出そうと思います」と語りながら、最後の最後に「サヨナラ」をwacciは届けてくれた。気持ちを心地好く沸き上がらせる歌に合わせ、会場中の人たちが大きく手を振りながら<グッバイサヨナラ♪>と歌い続けていた。その光景は、今でもしっかりとまぶたに焼きついて離れない。

 wacciは、5月25日の赤坂BLITZ公演を皮切りに、この夏を駆け抜ける全国ワンマンツアーをおこなう。wacci史上最大規模になるこのツアー。現状第一弾が発表になっている。その後も続きの日程が告知されるので、その報せも楽しみにしつつ。このままwacciと一緒に歩み続けながら、彼らと一緒にもっともっと大きな夢と熱狂の姿を味わおうじゃないか!!

(取材=長澤智典)

セットリスト

『あっち、こっち、そっち、わっちツアー 2016-2017 冬~日常ドラマチック~』
2月4日 東京・豊洲PIT 

01.歩み
02.晴れるから
03.キラメキ
04.会いにいくよ
05.ふわり
06.君なんだよ
07.君とシチューを食べよう
08.羽田空港
09.東京
10.大丈夫
11.まっぴら!
12.君に不採用
13.Weakly Weekday
14.誰ニモマケズ
15.リスタート

-ENCORE-

En1.変身
En2.結
En3.サヨナラ

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