胸にグッとせまる音楽を作るココロオ
ークション。最新ミニアルバム『CIN
EMA』への心模様【インタビュー】

 なんて胸にグッとせまる音楽なんだ。ココロオークションの最新ミニアルバム『CINEMA』を聞きながら、気持ちが熱く揺さぶられていた。彼らがどんな想いを胸に一つ一つの景色を楽曲に映し出したのか、その心模様を伺った。

ココロオークション インタビュー

『星座線』ギャップが、より切なさを増す要因になったと思います


――まずは、最新ミニアルバム『CINEMA』を作るに当たっての狙いから教えてください。

大野:僕らの場合はアルバムを作るうえでコンセプトを決めるのではなく、楽曲制作を重ねていく中、最初に作品の核となる楽曲が生まれ、それを中心軸に全体像が描き出されてゆく形を取っています。

――『CINEMA』に於いての中心核となったのが、リード曲の『星座線』だったのでしょうか?

大野:そうです。今回はフルアルバムを作るくらいの気持ちでたくさん楽曲を作っていく中、とくにグッとくるものが『星座線』だったことから、この歌を軸にミニアルバムを構築した形でした。

――それくらい『星座線』は手応えを覚える楽曲だったわけだ。

粟子:そうでした。『星座線』の歌詞は実際に観た、忘れられない景色がきっかけで生まれました。

――それ、気になります。

粟子:昨年、山の上で行われた夏フェスに出たときのこと。あのときに見た満天の星空が忘れられなくて。何時かあの景色を歌詞にしようとずっと思っていた中、『星座線』のメロディーが浮かんだときに、「このメロディーにあの風景を元にした歌詞を乗せたい」と思った。それが、『星座線』の歌詞を作るうえでのスタート地点になりました。結果、実際に見た景色はもちろん、自分の内側にある感情を言葉に乗せて描きました。

――『星座線』では別れた女性に対しての想いやみずからの未来図を歌っています。その歌詞へ、切なくもロマンチックさを覚えていました。

粟子:切ない歌詞なのに曲調が明るく、しかもメロディーもキャッチー。そのギャップが、より切なさを増す要因になったとも思っています。

――3人も、歌詞を受け止めたうえで演奏してゆく形なのでしょうか?

大野:歌詞は楽曲が出来上がったうえで書いているように、曲を制作しているときはデモ楽曲の持つ雰囲気やメロディーを元に何時も作っています。ただし楽曲を煮詰めていくうえで、彼(粟子)が「この曲はこういうイメージ」とテーマとなるワードも投げかけてくるように、それが楽曲を導く役割も果たしています。



テンメイ:そのワードを鍵に生み出してゆくフレーズもあるよう、そこは表現していくうえで大切に心がけていることなんです。

井川:確かにね。「この曲は雪の結晶をイメージして作った」と言われると、こちら側もそれをイメージして演奏をすれば、そのワードがあるだけで楽曲のニュアンスにも変化が生まれていくように、そこは大切にしています。
 
「そこへ辿り着きたいけど、なかなかそこへ辿り着けないこと」


――2曲目に収録した『スノーデイ』は、まさに…。

井川:「雪の結晶をイメージしながら作ったし、そう表現したい」という想いを元に制作をしています。

粟子:最初の段階では「冬の歌を書こう」というわけではなかったんです。

――と言うと?

粟子:ココロオークションには夏の歌が多く、昨年夏にも夏を舞台に連動した3本のMVも作っていたように、世の中としても「ココロオークション=夏」というイメージを強く持たれていました。それもあって「季節や景色を軸に据えた楽曲をもっと作ってもいいんじゃないか?」と思い、「そういえば、ココロオークションには冬の曲ってなかったな」と思い立ったことから『スノーデイ』を作り始めました。

大野:『スノーデイ』のサウンドは、まさに冬って感じがしますよね。何より、聴いた瞬間に「これは冬の歌」とわかる音作りを心がけました。実際、頭の音色を聴けばそのイメージが浮かぶように仕上げています。

テンメイ:『スノーデイ』は、冬を舞台にしながらも温かみを持った楽曲になったからね。
井川:その暖かさを、ライブでもどれだけ出せるかだね。



――ライブ感という面では、『M.A.P.』が持つ激しい躍動感は嬉しい刺激を与えてくれました。

テンメイ:アルバムの中でも一番熱量の籠もった楽曲だからね。表情の変化に合わせてギターの音色が変わっていくのもポイントとなるところ。

井川:テンポが速いぶん、ドラムも気持ち良く叩けました。

大野:『M.A.P.』はたぎる曲。まさに、血がたぎるイメージを持った楽曲なんですけど。その激しい感じをギターの音で表現しながら、その裏ではベルの音色など優しい音も鳴り響いてゆく。ABメロは激しいのにCメロは切なく、サビではキャッチーになってゆく。『M.A.P.』はココロオークションらしさへ、いかに激しさを組み合わせてゆくかをテーマに作りあげました。

粟子:今回収録した曲たちにはそれぞれの物語に合わせた主人公がいる中、『M.A.P.』は自分自身のことを歌詞にした楽曲になりました。成りたい自分と成れない自分、悩み抜いたうえで辿り着いた本当の自分の気持ち。それを感じてください。
さっき「たぎる」という言葉が出ていたように、楽曲にも一生懸命に息を切らして走っている必死感というか、そういう景色を描いています。

――主人公は、「ここじゃない」と呟きながら自分の今いるべき場所。つまり現在地を探そうと模索し続けていきます。

粟子:ああ成りたいけど成れてない自分、理想を求める中、足りてない面。そういうことを思いながら楽曲を作ったんですけど。きっとみんなにもあると思うんです、「そこへ辿り着きたいけど、なかなかそこへ辿り着けないこと」って。そういうことを繰り返しながら人は前へと進んでゆく。そういう思いを自分なりに表現してみました。

幸せを感じながら生涯を終えてゆく。でも主人公は宇宙から来た人

――『ジグソーピース』へも、人生観を描き出していません?

粟子:『ジグソーピース』はまさに「人生」について書いています。ただ、最初から「人生」をテーマに書き始めたわけではなく、メロディーにはまる言葉を探しながら書いていく中で「人生」というテーマが浮かび、何時しか思い出をピースに例えて書き始めていました。
 人は、良いこと(ピース)も悪いこと(ピース)も両方あったうえで、すべてが今の自分に繋がってゆく。それが今の自分らしさなんだと認めたときに初めて強くなれる。そういう想いを歌にしています。

――けっこう壮大なテーマですよね。

粟子:最初はもっと狭い範囲で書いていたんですけど、結果的に大きくなった形でした。ただし表現している言葉は大きくないと言いますか、「恐竜が好きだった」や「コーヒーが苦手だった」と書いているように、けっこう身近に感じる想いを記しています。

大野:『ジグソーピース』は面白い曲ですよね。最初は突拍子もない楽曲だったことから、果たしてこれをココロオークションとして出しても大丈夫なのか!?と思っていたけど。最終的には、粟子さんが歌うことでスーッとココロオークションの器の中へ入っていった。そこが、このバンドの色や個性なんでしょうね。

テンメイ:『ジグソーピース』は、だいぶ無邪気な楽曲だからね。結果、大人なギターを弾いてるんですけど、気持ちは子供のままというか、そこの噛み合わせの面白さを演奏面でも感じてもらえたらなと思ってる。

井川:確かにぶっ飛んだ楽曲ですけど、僕自身はとくに難しい演奏はしてないです。むしろ、突拍子もない曲調へ歌詞と歌が乗ったことで、人生観を映し出す良い楽曲にまとまったなという感じで受け止めています。

――最後は、『地球の歩き方』です。



井川:この曲ではドラムの変わりにタンバリンを使ったりと、面白い表情になりました。

テンメイ:これは、僕の畑の楽曲。もともとカントリーミュージックなどアコースティックなサウンドが好きだったように、自分のミュージシャンとしてのルーツを上手く演奏にも反映しています。

大野:オルガンやアコーディオンを加えたりなど、完成したとき一番ライブ感のある楽曲だなと感じました。

――『地球の歩き方』にも人生を投影していませんか?

粟子:最初に浮かんだ言葉が「旅」でした。そこから「人生は旅」と捉えながら楽曲を作り出したとき、曲の終盤に出てくる「life is beautiful」というメロディーと歌詞が浮かんだんですね。その言葉から肉付けしていく中で生まれたのが『地球の歩き方』なんです。
曲調もカントリー風なんで、最初は田舎の道を駆けてゆくみたいな感じで歌詞を書こうと思っていたんですけど、楽曲が次第に壮大になっていく中、ちょっとファンタジーな要素を入れたくなり、冒頭にも「僕は宇宙の旅人」と記したよう、結果、スケールの大きな歌になりました。

――遠い星からやってきた人が、地球で好きな人を見つけ、その人と生涯を添い遂げようとしていく。ほんとスケールの大きな人生物語になりました。

粟子:好きな人を見つけ、家族が増えて、幸せを感じながら生涯を終えてゆく。でも主人公は宇宙から来た人。そういうところにも面白さを覚えています。

アルバム『CINEMA』のような、人の心を揺さぶる曲を作り続けていきたい


――完成した『CINEMA』、それぞれどんな作品になったかも教えてください。

粟子:人生を楽しく生きるヒントになるような作品です。歌ってる内容は、何気ない日常であったりもするんですけど。裏テーマとして「人生」を描きながら。何気ない普通の日だって考え方次第で輝き出せば、ロマンチックにもドラマチックにもなっていくんだよということを、このアルバムが教えてくれる。そういう発見のある作品になりました。

大野:今回のアルバムに於けるサウンド的なテーマが、「メンバーそれぞれの演奏している顔が見える」ということ。実際にそれが出来たからこそ、それぞれの楽曲にドラマを描き出せた。そういう風に捉えています。

テンメイ:ひと言でいうなら、「僕ららしい1枚になったな」ということ。僕ら、見てわかるようにけっして派手な人たちではない。これまでの人生の中でも、とくに目立ったこともなければ、僕ら自身が聴いてくれるみんなと同じような人生を歩んでいる人たちばかり。そういう僕らが日常で感じている想いを音楽にしているからこそ、みんなと同じ視線を持った歌たちになる。このアルバムを聴いてもらえたら、ココロオークションというバンドやメンバーそれぞれの顔がきっと見えてくると思います。

井川:初めてマスタリングを海外の方にお願いする経験も含め、すごくスケールでかく仕上げられた作品になったなと思ってて。だからこそ、これをライブで表現していくうえで、自分たちもさらに成長しなきゃいけない。むしろ、もっと成長したい。そう思わせてくれるアルバムになりました。

大野:ライブこそ、自分らの等身大な姿を示せる場所だけに、ここへ詰め込んだ想いをしっかり等身大な姿のまま生で届けたいなと思ってる。

粟子:僕らはココロオークションと名乗るように、心を豊かにする音楽を届けるために活動しているバンドです。これからもアルバム『CINEMA』のような、人の心を揺さぶる曲を作り続けていきます。



Text:長澤智典
Photo:片山拓

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