シンフォニックメタルの世界へようこ
そ。実力派ビジュアル系バンド、摩天
楼オペラがベストアルバムを発売

彼らは2006年結成、2010年メジャーデビュー。メタル要素を取り入れた重厚感のあるサウンドにシンフォニックな美しいメロディー。まさに喉は楽器という言葉は彼のためにあるのではと思わずにいられない、ボーカル苑のビブラートの効いたハイトーンボイス。高い演奏力と優れた音楽的センスでビジュアル系シーンの中でも実力派と言われている。今年7月のライブを最後にギタリストのAnziが脱退し、新体制となったばかり。

今回はメジャーデビュー以降に発表されたシングル曲やアルバムのリード曲など、まさに彼らの代表曲と言えるべき楽曲達が収録されているベストアルバムの中から、おすすめの2曲をご紹介したい。

「もう一人の花嫁」


彼と結婚するのは私のはずだった。目の前で誓いのキスを交わしているのは・・・どうして私じゃないの?もう一人の花嫁の愛憎をテーマに描いた楽曲。



彼女の憎しみに満ちた心と幸せだった頃の思い出、目の前で繰り広げられるのは受け入れ難い現実。所々歌詞が他人事のように客観的視点なのは、現実逃避はたまたショックが大きすぎた所以だろうか。まるで映画の1シーンを見てるかのように浮かんでくる情景。彼女の心を表すかのような激しいメロディーの起伏。切なくも美しいピアノの旋律から始まったかと思いきや、まさに不幸の始まりとでも言わんばかりのヘビーなサウンドで、ダークな世界へ突き落とされる。そして苑の悲痛に泣き叫ぶような鬼気迫る歌声。曲の世界観にぐっと引き込まれ、聴き終わった後まるで自分がこの曲の主人公、もう一人の花嫁になってしまったかのような錯覚に陥り、喪失感に襲われるほど。

この曲はメジャーデビューミニアルバムAbyssのリード曲だ。摩天楼オペラの楽曲をきちんと聴いたのはこの曲が初めてだった私は、当時ものすごい衝撃を受けた。メジャーデビュー1作目にしてこの完成度と確立された世界観。まさにメジャーデビューと同時に彼らは唯一無二の実力派ヴィジュアル系バンドという地位を確固たるものとしたのだ。

最後に、この曲の歌詞の中で一ヶ所特に私の心を捉えた歌詞があったのでご紹介したい。多分女性ならほとんどの方がこの歌詞を見て、色々と思うことがあるのではないだろうか。



このもう一人の花嫁の正直な本音がぽろっと出た歌詞だと思った。
でも普通って何なんだろう?
もちろんこの歌詞では自分の愛した人と結婚して、家庭を築いて…が普通の幸せで、まっとうな人生を生きるということなんだろうけれど。
普通のありふれた、でもかけがえのない幸せを手に入れるのがきっと1番難しい。
たった一行だが、すごく深い歌詞だ。


「喝采と激情のグロリア」


幾つもの奇跡が重なって今の私たちがいる。限りあるこの命が尽きるまで、精一杯生きよう。いつかこの命が尽きたとしても、私たちの栄光ー生きた証ーは未来永劫必ずどこかで生き続けていくから。そんなメッセージが感じ取られる楽曲だ。



まさにアンセムのような楽曲。初めてこの曲を聴いた時、そう思った。彼らの壮大なテーマの楽曲達の中でも最高傑作と言えるべき楽曲ではないだろうか。
ボーカルの苑がずっとやりたかったという合唱を取り入れ、まるで聖歌のような神聖で厳かな仕上がりとなっている。人間の生命の輝き、生まれてからその命を終えるまでが切なくも美しく、ドラマティックに描かれている。サビの英詞の訳を入れようかとも思ったのだが、この楽曲においては英詞のまま、この曲の世界観を味わって欲しいので、あえて入れるのを控えせて頂いた。



ラストのアカペラの部分は特に感動的で心に響く。切ない歌詞なのに心があったかくなる。

彼らはこの曲を未来永劫残る作品にしたかった、とあるインタビューで話していたが、間違いなくこの曲はヴィジュアル系シーンを問わず、後世に残すべき名曲だ。きっと何年、何十年経ってもずっと色褪せない、この曲の歌詞のように輝きを放ち続ける楽曲だ。

実はこの楽曲は、ベストアルバムに同時収録されている「GLORIA」「Innovational Symphonia」そして最終章の「喝采と激情のグロリア」の3部作となっており、そのため収録曲順もこの順番となっている。ぜひ3曲通して、この壮大で尊い世界観を味わって頂きたい。


今回はベストアルバムの中から2曲のみの紹介だったが、この他にも彼ららしい素晴らしい楽曲がたくさん収録されている。彼らの楽曲を聴いていると、まるで摩天楼オペラというミュージカルの世界に足を踏み入れてしまったかのような感覚に陥る。それだけ彼らの楽曲の世界観やテーマがしっかり確立されているということなのだろう。

10月14,15,16日に開催されるVISUAL JAPAN SUMMIT 2016への出演も決まった彼ら。X JAPANLUNA SEAGLAYといった耳の肥えたファン層にも、彼らの楽曲は受け入れられるに違いない。摩天楼オペラの出演は10月15日。この日見に行かれる方は、彼らのステージを見逃さないで欲しい。

TEXT:中村友紀

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