majiko、妖しいハーモニーのなかで見
せた圧倒的な存在感

妖しいハーモニーのなかで圧倒的な存在感をみせた「まじ娘」改め「majiko」

 ボーカリストのmajikoが12月8日、東京・渋谷WWWでワンマンライブ『Cloud 7』をおこなった。2010年に動画共有サイトで自身の歌を初投稿、2013年には人気ライブイベント『ETA(EXIT TUNES ACADEMY)』に初出演を果たし、その圧倒的な歌唱力と表現力で観客、関係者らの度肝を抜き、一気にシーンに躍り出た。母親がボーカリストでボーカルトレーナーということもあり、幼少から幅広い音楽を聴いて育ってきたことが彼女の個性を作り上げる大きな要因となっているが、動画共有サイトを通じてのアピールや、ジャンルを超えた楽曲群の中でボーカロイドを代表する楽曲を多数収録していることなど、ネットシーンを通じて台頭してきたことも、彼女の大きな特徴といえる。この日、2017年2月15日にミニアルバム『CLOUD 7』でメジャーデビューすることを発表。もともと「まじ娘(こ)」の名で活動していた彼女だが、メジャーデビューをきっかけに「majiko」に改名。ライブはアンコール含め全17曲を、独特な世界観で届けた。

妖しい佇まいのmajiko、スタートから程なくその存在感は会場いっぱいに

揺るがない「majiko」という存在感

 ちょうどBGMにイギリスのロックバンド、フランツ・フェルディナンドの「Ulysses」が流れ終わろうとしていたころ、会場は暗転し薄暗いステージの上にバックバンドのメンバーが現れた。そして皆がセッティングを終えると、ギターのアルペジオが鳴り響く。b9thの入った、少し不安を感じさせるような響き。その音の中で、majikoはステージに登場した。そして、そのギターをバックに歌い始める。黄色のメッシュが入ったヘアスタイルに、うっすらと赤いアイシャドウ。その見た目も妖しい彼女の佇まいは、その時に照らされた幻想的な照明と、けだるい雰囲気のハーモニーと組み合わさり、あっという間にステージでの彼女の存在感をステージいっぱいに広げていった。

 スタンドマイクで歌ったオープニングナンバー「end」より、続いた「FRACTAL」ではマイクを手に取り、ステージを右へ左へと動きながらパフォーマンスを展開する。時に頭を抱え、苦悩するような表情を見せながら発せられるmajikoの声。物語の発端から展開までを語るようなAメロから、一気にストーリーのクライマックスで感情を吐き出すようなサビへ。艶やかにも見える声を駆使し、表現力も豊かに自己の世界を表現する。特に、時々見えた不協和音にも思えるほどの妖しいハーモニーの中で、しっかりと存在感を示す。激しく鳴り響くビートの中ですら彼女の歌に取りつかれ、観衆はただその歌を呆然と聴くほかなかった。

 一方で、歌を歌っている時と、MCでしゃべる時の彼女のギャップにも、何か観衆は心惹かれる魅力を感じていたようだ。飾り気のない素の表情、そんな彼女の姿が、本当に観衆とのライブを楽しんでいるようでもあり、見ている側からはステージとの距離の近さを感じたようだ。

 この日は新たに発表されるアルバムの新曲も披露された。千葉・舞浜の河原で思い浮かんだという「ノクチルカの夜」は、ジャズっぽいスウィング感がところどころにちりばめられた曲で、リズムに特徴を感じさせる。続く「昨夜未明」は対してブルージーな雰囲気すら感じさせるロックナンバー。新曲を披露することに対し若干の躊躇があることをMCで語っていたmajikoだったが、このナンバーではまた感情むき出しでのめりこむように歌い、自身の世界観を周囲にまき散らしながらも自己をアピールしていた。

複雑な楽曲の中で、しっかりと歌を聴かせるmajikoの魅力

しっかりと存在感を示したmajiko

 ライブ中盤ではワルツの「回らないトゥシューズ」、バラードの「さよならミッドナイト」「彗星のパレード」と、静的な楽曲での表現を試みる。曲調が変わっても、そこにmajikoならではの風味は変わらない。それはメロディの追従の仕方、歌い方にも感じられるが、単に哀愁味を感じさせる言葉を並べただけではない、生々しく現実味のある言葉を組み合わせ、リアルな情景を描くという曲作りへのこだわりなど、彼女が持つセンスにあるように思われる。ここまでのステージは、時に激しくリズムを打ち鳴らすようなナンバーを交えているにもかかわらず、観衆はほとんどの場合にじっとステージのmajikoに観入り、彼女の作り出す世界の中に浸り込んでいた。

 そしていよいよステージも佳境を迎える。フィードバック音の利いたギターから、ブルージーでけだるい雰囲気を感じさせる「ダージリン」。サビへの転調がかなり大胆に仕上げられたナンバーだ。majikoのナンバーは、この曲のように大胆なアプローチがあちこちに存在するところも重要なポイントだが、それを全く感じさせずに歌い上げられる歌の力量も特筆すべきポイントといえる。

 「渋谷! 盛り上がっていますか、渋谷! ギャー! もうちょっとで終わるよ! 楽しまなきゃ損ですよ!」と続く「世田谷ナイトサファリ」ではいよいよ歌の中で観衆とのコミュニケーションを図る。そしてタイトなリズムを刻むベースとドラムに、妖しいギターが絡み、更に会場の空気を熱くする。ついにはラストナンバー「アマデウス」へ。盛大なエンディングを見せたステージに「サンキューベロマッチョ!ありがとう!」そんな気易い言葉でmajikoはステージを降りた。

 なおも続くアンコールに応え登場した彼女は、ギターの弾き語りという自身初挑戦のプレーで新曲「Lucifer」を披露。そしてステージの最後は「心做し」でこの日のライブを締めた。この曲の後サビでは、演奏がブレイクし、majikoの歌のみとなる箇所があるが、そこで聴かせた彼女の歌は、何か本当に泣きながら歌う雰囲気を表現し、聴くものをドキッとするような衝撃を与えていた。多彩な表現と、揺るがない「majiko」という存在感。その二つの共存は、矛盾と思えるほどに真逆の性格のものと見えるが、彼女に至っては、そんな表現が見事に当てはまる。いや、そんな表現しか当てはまる気がしない。メジャーデビューを控える彼女を初めて見る人も増えてくるかもしれない。その人たちがどのような反応を示すのか、楽しみな気もする。きっと大きな衝撃を受けることは間違いないだろう。(取材・榑林史章)

セットリスト

majiko ワンマンライブ『Cloud 7』
12月8日 東京・渋谷WWW

01. end
02. FRACTAL
03. リンネ
04. きっと忘れない
05. mirror
06. Void
07. ラストトレイン
08. ノクチルカの夜
09. 昨夜未明
10. 回らないトゥシューズ
11. さよならミッドナイト
12. 彗星のパレード
13. ダージリン
14. 世田谷ナイトサファリ
15. アマデウス
encore
EN01. Lucifer
EN02. 心做し

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