ザ・タイマーズ、再び脚光 27年ぶり
のチャートイン

衝撃的だったザ・タイマーズ(THE TIMERS)

 1988年から2005年にかけて活動していた、ロックバンドのTHE TIMERS(ザ・タイマーズ)が再び脚光を浴びている。11月23日に発売されたアルバム『THE TIMERS スペシャル・エディション』が、12月5日付オリコン週間CDアルバムランキングで14位を記録し、27年ぶりにチャートインした。

 ザ・タイマーズは、故・忌野清志郎さんに似る人物・ZERRYが率いていた覆面バンド。1988年から2005年まで、休止と再結成を繰り返し活動していた。電力や政治など社会風刺した楽曲、過激な言動で当時話題を集めたが、その過激さからメディアでは楽曲そのものが放送禁止になることもあった。

 楽曲では、企業のテレビCMで流れるモンキーズの日本語カバー「デイ・ドリーム・ビリーバー」が一般的に知られている。この曲は27年が経過した現在もテレビ等で流れ、世代を超え、愛されている。そして、その楽曲を収録した1989年11月発売の1stアルバム『THE TIMERS』のスペシャル・エディションが今作となる。

 そもそも27年前の1989年に発売された『THE TIMERS』は、正体不明の覆面バンドの様相に加えて、学園祭やフェスへのゲリラ出演、ZERRY自らがデモテープを配布するなど、様々な”事件”が話題を呼び、当時(1989年12月11日付)のオリコン週間CDアルバムランキングでは19位を記録した。

 あれから27年の時を経てリリースされたスペシャル・エディションは、11月22日付オリコンデイリーCDアルバムランキングで6位を記録。そして、12月5日付オリコン週間CDアルバムランキングで14位となった。

 そのスペシャル・エディションの収録内容は、CDディスク1に同作リマスター盤、ディスク2には蔵出し音源として1988年~89年に日本とロンドンでおこなったレコーディングセッション音源からの未発表曲。DVDには蔵出し秘蔵映像などがある。

 また蔵出し音源と秘蔵映像に加えて、高橋ROCK ME BABY氏による1万字解説ノートも付属。更にジャケットには89年発売当時、関係者のみに配布されたシルクスクリーンにあったグリーンバージョンを採用。まさに彼らの名作の息吹を呼び起こす内容だ。

 このうちYouTubeで公開されている収録映像「偉人のうた」は、1988年11月13日の横浜国立大学の学園祭でのゲリラ・ライブのもようを収めたもの。

 当日のライブは泉谷しげる with LOSER、ティアドロップス、ボ・ガンボスの3組だと発表されていたが、3番目の出演となる泉谷しげる with LOSERの前に急きょ、THE TIMERSが登場して会場は大パニックになった。今回公開された映像にはその時に大混乱となった観客の模様もおさめられている。

THE TIMERS スペシャル・エディション

 さて今回に限らず、過去に発売された作品をリマスターして、再びCD化するケースはよくみられる。その多くはレコード音源をCD化するというもので、売上伸長の背景には「より良い音で聴きたい」という動機が一つにある。加えて、ザ・タイマーズの示した姿勢を改めて再評価する向きも一方ではある。

 ZERRYがザ・タイマーズで表現してきた社会的アンチテーゼは当時の若者を刺激した。その若者は20余年の月日を経て40歳を超えた今、今昔の比較をこの作品に重ねているよう。自身の考えを気軽に発表できるSNS時代。代弁者を持たなくとも意見を訴え続けることはできるが、彼らの情熱に触れたいと思う人もいるようだ。

 この作品を購入した人のネット上の投稿をみると、楽曲に込めた彼らの姿勢に感銘を受けている声が多い。例えば「批評性をもった痛快」「曲は生き続ける」「本当に生き方そのものがロック」「(ゼリーは現状を)嘆き悲しんでいるか、益々、怒り心頭でギターをかき鳴らしてることだろう」。

 一方、レコード会社は今回の事象をどう見ているのか。

 担当者は「ロックの歴史上、唯一無二であるザ・タイマーズの存在を知ってもらえるとうれしく思います。アルバム制作については、いろいろなところにあったテープなどを見直し、聴き直したので時間がかかりましたが、好評を頂いているので幸いです。今後は息の長いヒットにして、この衝撃をずっと伝えていきたいです」と語っている。

 リバイバルブームが起きていると言われている昨今。当時、身を削って訴え続けてきたミュージシャンの魂やメッセージ。現在もこうしたかたちで新たな世代へと引き継がれているとも言えそうだ。(文・木村陽仁)

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