ニコラス・エドワーズ圧巻、変幻自在
の歌唱力で日米音楽を往復

確かな歌唱力と変幻自在の表現力でファンを魅了したニコラス・エドワーズ

 米国出身のシンガー、ニコラス・エドワーズが12月3日、東京・六本木のEX THEATER ROPPONGIで単独公演『MOTION 2016 CHRISTMAS CONCERT』をおこなった。17歳で日本の地を踏んだ彼は現在24歳。テレビ番組で脚光を浴びてから、ここまで着々と実績を積んできた実力派である。今回のライブはちょっと早いクリスマスを冠しながらも、リリースしたばかりのメジャーフルアルバム『GO WEST』を引っ提げた。確かな歌唱力と、“オリコン”と“ビルボード”と日米チャートを自在に往復する「日本と世界を繋ぐポップスターになれるかもしれない」という希望を感じた、このライブの模様を以下にレポートしたい。

 開演前の場内にはクラシカルなSEが流れる。ハーフスタンディングで立見の1階席と着席の2階席という構造。赤いサイリウムやサンタクロースのコスプレをしているファンも目立っていた。女性客が多いことからも彼の人気の高さを感じさせる。

 暗転と共にバンドメンバーが入場。黄色い声援が送られる。この日の演奏は派手なドラムソロで始まった。「六本木元気かーい!」とノースリーブに和装っぽい衣装でニコラスが登場。オープニングは「Let’s Be Together」。控えめなアクションながら伸びやかな歌を聴かせていく。

ニック

 タイトルをぽつりと呟いて「クリスマスの願い」へと繋げる。しっとりとした感触の演奏が展開され、綺麗な日本語で歌い上げるニコラス。照明とサイリウムが幻想的な空間を演出していた。なお、この日のバンド編成はギター、キーボード、ベース、ドラム、コーラス×2となっている。

 ニコラスが「Are you ready for X’mas?」と煽ってから、雰囲気を裏返して「Baby Please Come Home」に流れる。3拍子系のクリスマスらしい楽曲。アメリカンポップス由来のダイナミックなボーカルで盛り上げていったのが印象的、英語でも日本語でも彼には問題ない。

 さらにマライア・キャリーの「恋人たちのクリスマス」のカバーも披露。フェイクも見事。ところどころ挟まれる歌の間に合わせて叫ぶファンたちが微笑ましい。シャッフルビートを刻むバンド陣のグルーブにも酔いしれた。

 ここで「沢山の皆さんに来ていただいてありがとうございます。最後まで好きなように盛り上がって、楽しんでくださいね」と流暢なMC。温かい拍手が送られる。「2017年も負けませんからね」とも。

 MC明けから、先ほどまでと雰囲気の異なる曲を並べていく。「W/W/W」は爽やかなEDM風な曲。今時のアメリカンポップスぽくありつつも、外国人が歌う日本語歌詞というのがユニーク。先ほどまでのロック風とは違うスタイルで歌っていく。ベースもエレキベースから、シンセベースに持ち替えて演奏。

 続く楽曲も打ち込みのビートとバンドが同期する「We Get By」。ベースがとても気持ち良く響く。しゃがんで歌いながらオーディエンスにアピールするニコラス。けだるい声がセクシーだった。コーラスも効果的にアレンジされている。

 さらにそれまでの雰囲気を切り裂く様に、ピアノのイントロから「Homebound」が始まる。ブレイクからニコラスがキラキラしたハイトーンボイスへ飛翔する場面はとても爽快で、彼が「Jump!」と煽るとファンたちのサイリウムが激しく縦に揺れた。

 その後「Loving My Lover」では2人のダンサーを従えて、ダンスも披露。紫の照明が楽曲の妖絶な雰囲気を増幅する。ドラムが鋭く切り込んでくる所もどきっとした。ニコラスの絶叫でエンディングに着地すると、大きな拍手が起こった。

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 パフォーマンスではクールに振る舞っておいて「どうだった?」と拍子抜けする可愛らしく意見を求める場面も。あの手この手で楽しませてくれる。「本当に超一流のアーティストの人に囲まれて、僕自信も勉強になって。皆さんにも面白いものを届けられたかなと思います」と新譜について語った。

 ここで「僕にとって大切な曲」としてから清水翔太のカバーで「Home」を短く歌う。バース部分のラップも見事に決めて、フックもスウィート。外国人がJポップを歌うカラオケとは訳が違う、日米の文化交換を見た気がする。

 ブルージーなギターソロに続いて、ロカビリーな空気の「恋しちゃったよ」。変幻自在の彼はここでロックに歌い上げた。ブレイク毎にストップするモーションを見せるバンド陣もお茶目。感想部では各メンバーのソロも。それぞれの演奏は最新の洋楽事情も吸収した、新しいセンスを感じた。

 ここでニコラスに色々と訊く、質問コーナーが設けられる。クリスマスについては「早寝しなきゃいけないですね。ライブがあるので。皆のために。僕のクリスマスは皆さんと一緒に」など色々な質問に楽しく答えるニコラスが印象的であった。

 気を取り直して、ピアノとのデュオで「恋に落ちたら」。移ろう様な繊細な声で歌いながら、客席に降りていくニコラス。ファンたちは熱狂するわけでもなく、うっとりと見とれている様子だった。バンドも音量を落としてしっとり聴かせた。

 続いてファンキーな「Feel It」が投下される。ニコラスはコーラスとの掛け合いながら盛り上げていく。時に着物的な衣装を手でつまみながらアピール。ファンキーなベースにダンス衝動を煽られる。

 それに続いて、とても和風な高速ロック「She’s The Stranger」へ。とても異色な曲配置に興奮した。中々ここまで洋風から和風な楽曲を展開するステージも珍しい。しかもどちらの文化圏にもニコラスは精通している。そんな事を想いながら、彼なら本当に東と西を繋ぐ架け橋の1人になれるのではないかと希望を感じさせた。

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 そのまま間髪入れず「夢を力に」が始まる。80年代のJポップを現代解釈した様な楽曲である。オーディエンスも必死にサイリウムを振ってニコラスを応援する。とても微笑ましい光景だった。ニコラスのシャウトはロックスターさながらに冴えている。

 また軽妙なMCを挟んでから、ライブは終盤戦に突入。まずは「My First Love Song」から。綺麗なバラードである。Aメロでは打ち込み、Bメロからは人力のビートに入れ替わるのが興味深かった。後半の<転調、ブレイク、ニコラスのアカペラ、バンドが復帰、エンディング>という一連の流れがドラマティックで心を掴む。

 南米な質感で演奏されたのは「Feliz Navidad」。陽気ながら段々とロック色に染まっていって進行した。最後はブルージーなピアノが添えられて着地。

 続くはミディアムバラードの「Happy X'mas Train」。後半になるに従って熱を帯びていくバンド勢。ギターソロも曲のギアを上げるのに一役買っていた。ステージには雪が舞う演出も。

 本編最後はポップな「Silent Night」を持ってきた。遅めなミディアムチューンでメロウに締めるつもりだろう。サビをコーラス毎に日本語詞と英語詞と変えて歌うところもスパイスになっていた。最後は「皆さんの素敵な声に魅了されたいです」とリードして合唱する。アウトロではご機嫌なギターソロと、ニコラスのフェイクでテンションを上げ続けて、エンディングへ。

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 その後、アンコールは感動的な映像な後に始まった。クールな4つ打ちのイントロから始まったのはディスコ風ダンスチューン「月下の雫」。タイトルとは裏腹に全編が英語で歌われる。2人の男性ダンサーも切れのある動きを見せた。ニコラスはにこやかに笑いながら歌う。

 続くは、前曲と同じ4つ打ちでも、機械のビートによるEDM調「Moonlight Carnival」。人力演奏も共存する。抑制された冒頭から、ドロップでは会場全体を巻き込んでタオルを回して盛り上がる。客席へ飛び込んでいった。ファンにタオルを投げ込むパフォーマンスも。

 さらにビルボードからオリコンへ移行、といった感じで日本ぽい日本語ロックチューン「Stick & Stones」へ。ニコラスの音的な変幻自在ぶりも凄いのだが、それに対応するバンドメンバーの演奏の幅にも驚く。さらにはそんな振り幅でも楽しむオーディエンスだ。

 そして、この夜はフルアルバムの先行シングルにもなった「FREEZE」で締めくくられる。今日一番の強いバスドラムが投下され、ファンキーに展開。ところどころに混ぜられるブレイクがタイトルと連動する。ニコラスのシャウトが超エモーショナルで心を掴む。最後は力強いエンディングで終わった。

 バンドメンバーは退場したが、ニコラスはアカペラでクリスマスキャロルを披露し、「人生最高の夜をありがとうございました」と最後までサービス精神を尽くした。(取材・小池直也)

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