JAM Project、本能の赴くままに 興
奮で満ちた熱狂の幕張メッセ

『JAM Project LIVE TOUR 2016 ~AREA Z~』のツアーファイナルを幕張メッセ イベントホールでおこなったJAM Project

 アニメソング歌手グループのJAM Projectが去る11月23日に、千葉・幕張メッセで、ツアー『JAM Project LIVE TOUR 2016 ~AREA Z~』のファイナル公演をおこなった。6月29日にリリースしたアルバム『AREA Z』を引っさげ、国内のみならず海外公演を組み込まみ展開。ツアー中にも、世界各国の様々なアニメフェスティバルに出演。今年はアブダビなど中東にも初上陸し、変わることなくノーボーダーな活動を続けている。アンコール含め全27曲を熱演した11月23日・幕張メッセでのもようを以下にレポートする。   

自分の感情を本気で解き放てる「僕のための歌」

ライブのもよう

 涙とは、感情が昂りを強く覚えたときに流れるもの。悲しいときや悔しいとき、人は涙を流すことで気持ちを開放し心を浄化してゆく。でも同じ涙を流すなら、興奮や感動を覚えたときに心の奥底から込み上がる涙のほうが、どれだけ心を幸せで満たしてくれることか…。何時以来だろう、こんなにも沸き上がる想いを抑えきれず、瞼に涙を滲ませるほど嬉しさに顔が崩壊していたのは…。

 JAM Projectのライブでは鉄板のブロック。魂のゴングを全力で鳴らした『VICTORY』、感情が震え立った『GONG』、理性など忘れ「MOTTO!MOTTO!」と叫びを上げた『SKILL』。この3曲が熱狂の組曲となり立て続けに流れたとき、気持ちの奥底から理性を壊したい興奮が続々(ゾクゾク)と沸き起こってきた。みずからの身体を傷つけてさえも込み上がる感情を解き放たないと、自分が自分でいれなかった。 もう言ってしまおう、この3曲は僕らに力を与える云々なんかじゃない、僕らが気持ちを奮い立たせ、自分の感情を本気で解き放てる“僕のための歌”なんだと。
 
 生まれたきっかけがなんであれ、JAM Projectと一緒に世界中の人たちがライブを通して育んできたこの歌たちは、もはやみずからの心を開放するうえで大切な、一人一人が心に掲げた「勇気のエンブレム」。だからJAM Projectと一緒にこの3曲を熱狂の中で抱きしめあえていたときに、嬉しくて嬉しくて勝手に蛇口が緩んで涙が零れていた。それって素敵じゃない?!、嬉しくて涙を流せるって。悲しさや悔しい涙は重ねたくないけど、嬉しくて流れる涙なら、こんな歓迎すべきことはないんだからさ!!

感情のストッパーを次々と叩き壊すに相応しい熱狂

ライブのもよう

 いきなりクライマックスシーンから紹介してしまったが、それくらい感情のストッパーを次々とハンマー(楽曲)で叩き壊すに相応しい熱狂が、この日のライブにはあふれていた。

 最新オリジナルアルバム『AREA Z』をひっさげたツアーということで、ライブの序盤はアルバム収録曲を軸に構成。5人の雄々しいハーモニーから幕を開けた『AREA Z~Song for J-Riders~』、熱した感情と感情のバトルを繰り広げた『刃~the divine blade~』や『J-RIOT』。序盤から激しいぶつかりあいと記せば納得だろうか?!。でも現場は、そんなものじゃなかった。気持ちを熱く高ぶらせたい満員の観客たちが熱狂するのは当たり前。それ以上に舞台上の5人は、フロアーから生まれる熱い高揚を全身で受け止め、それさえも自分たちを奮い立たせる糧に変え、熱した歌の魂として次々と場内へ投げ返していた。

続くブロックでは、「スーパーロボット大戦」シリーズと「牙狼」シリーズナンバーを披露。身体を熱く震わせ轟く音の上で、戦いを挑むように突きつけた『MAXON』。ビーストと化したメンバーたちが、シンフォニックでハードコアな演奏の上で野獣になり叫び続けた『NOAH』。異世界へ誘うように、優しい表情を持って満員の観客たちの火照った感情を温かく抱きしめた『Name is GARO-光明の使者』。同じく、仲間たちを懐の中で包むように歌いあげたミッドグルーヴな『ZERO-BLACK BLOOD』。『月華』ではオリエンタルな旋律を魅力に、幻想的で浪漫あふれた空間へ一人一人を誘っていた。その歌と演奏は、美しくも混沌としていた。

 続くブロックでは、妖しい夜のムードをJAM Projectは描き出した。『Survive』は、きただにひろしと奥井雅美の掛け合いや声の重なりを魅力にした楽曲。妖艶な香りを携えながら身体から沸き上がる情熱を2人が届ければ、ムーディな『WE ARE ONE』では、影山ヒロノブ/遠藤正明/福山芳樹の3人がジャジーでソウルフルな演奏の上で、ダンディな大人の色気満載に歌いかけてきた。共に夜という舞台が似合う楽曲。『Survive』が熱を帯びた歌なら、『WE ARE ONE』は秘めた熱を歌にしていた。その対比も観てて惹かれた部分だ。

 5人が軽快に踊りながら歌った『Magical Mystery Spice-マジスパのテーマ-』。エスニックな香りを携えた、なんてマジカルな楽曲だろう。幻想ムードも交えたその表情に触れながら、不思議な音楽の旅へ笑顔を携え参加している気分だった。 続く『NAWABARI-背徳のシナリオ-』では、メンバーがヴァンパイアと成り、♪WOWWOW♪と野生の雄叫びを上げ跳ね続けていた。会場中を埋めつくした真っ赤なサイリウムの光を前に、月夜の宴を楽しむ5人。その祭りムードに触発され、場内の人たちも<WOWWOW♪>と声を上げ一緒に跳ねていた。

JAM Projectは「生きることを」を伝えてきた

ライブのもよう

 アコースティックコーナーでは、影山ヒロノブと福山芳樹がアコースティックギターを、きただにひろしがアコースティックベースを、奥井雅美がパーカッションを、遠藤正明がジャンベを手に楽団を結成。暖かな生音の演奏を通し、触れた人たちの心を音の旅へ導き出した。

 5人のハーモニーから始まりを告げた『紅蓮ノ月~隠されし闇物語~』では、内なる感情を燃やすような歌と演奏を通し、観客たちを悠久の世界へ誘ってゆく。その姿は、音楽を連れて旅を続ける旅団(音の旅人)のようにも見えていた。 たくさんの手拍子を背景に、笑顔あふれるロックンロールなパーティムードを描き出したのが『Battle Communication!!』。気持ちがウキウキと弾んでいく、身体を揺らしながら手拍子してゆくのも納得だ。なんて心地好いロックンロールなセッションだ。そのスタイルがなんであれ、そこに楽しもうという感情があれば、音楽は心を無邪気にしてくれる。終始、にやけた笑みが消えなかったほど、5人の陽気なセッションに気持ちが浮かれていた。

 人は、明日へ歩みを進めるたびにいろんな出会いを重ねてゆく。同時に、生きることを積み重ねた人ほど、いろんな別れも経験する。永遠に逢えない別れだって、何時しか避けられない現実となり記憶に刻まれていく。 祈るように、想いを捧げるように、僅かな光に包まれながら5人はバラード『Fragile』を歌いあげた。5人はこの気持ちが届くと信じながら、言葉のひと言ひと言を捧げるように、空へ向かってゆっくりと歌を羽ばたかせていた。

 荒れ果てた荒野を彷徨うように、堕ちた心を、崩れそうな自分を迷いの中から救い出すよう、JAM Projectは勇壮かつ壮大な演奏を背に『ギアナ高地』を歌いあげた。慟哭にも似たその歌声は、朽ち果てようとする絶望の淵から這い上がろうと、壊れそうな心を解き放とうと胸に響いていた。

 5人の力強いハーモニーからの幕開け。闇を一気に消し去るよう、目の前には晴れ渡る風景が広がりだした。『Trasure in the sky』が気持ちを高く羽ばたかせてゆく。ぐんぐん上がり続ける感情の、なんて心地好かったことか。

 JAM Projectが3曲の中に描いた、いろんな想いを抱えながらも前へ進んでゆく意味。JAM Projectは“生きること”を伝えてきた。とくにアニメソングやゲームソングという枷を外した楽曲へは、タイアップ歌以上に今の彼らの心模様がリアルに描き出されてゆく。彼らもまた、明日へ生きる旅を続けている人生の旅人だ。心を野生に変え、本能のままに騒ぎ狂え。それこそが、JAM Projectのライブの醍醐味。

 ライブも終盤へ。この日、ドラマ「勇者ヨシヒコと導かれし七人」のテーマ曲『The Brave』をライブで初披露。ブラスの音も華やかなファンキーなパーティロックチューンだ。気持ちがどんどん弾んでゆく。ふたたび、身体が熱を覚えだした。もっともっとはしゃぎだいとばかりに…。「このまま最後まで飛ばしていくぜ!!」。その声を合図に炸裂したのが、シンフォニック&ハードな『Shining storm~烈火の如く~』。沸き立つアドレナリンが身体中を一気に駆け巡りだした。ダイナミクスな音が騒ぎ狂えとばかりに気持ちを掻き立ててゆく。沸き立つ気持ちに嬉しく震えてこそ、臨場感あふれるJAM Projectのライブだ!!

"あなた"もまた、限界を超えた最強の勇者

ライブのもよう

 『Growing Up』では、会場中の人たちがタオルを振りまわし、光に向かい走り続ける歌に合わせ騒ぎ続けていた。頭上高くでくるくるとまわるタオルをプロペラに、気持ちをどんどん上げていけばいい。パーティムード満載のハード&ロックンロールな演奏に触発され、楽しい気流に乗って心がウキウキ上昇し続けていた。なんて神々しい歌と演奏だ、『鋼のレジスタンス』が荒ぶる感情を導き出した。気持ちは完全にバトルモードへシフト。ともに「Z!!」と叫びながら情熱的な歌に、ただただ熱狂を持ってぶつかっていた。天井知らずに昂り続ける感情。その気持ちを放熱しきれとばかりに、シンフォニックでパワフルな『THE HERO!!~怒れる拳に火をつけろ~』が飛び出した。燃え盛る感情を放つよう、絶叫と共に拳を突き上げてゆく満員の観客たち。ヤバい、次々と沸き立つこの熱した気持ちを解き放たなきゃ、身体が壊れそうだ。

 本編最後は、無数の炎が舞台上から吹き上がった『レスキューファイアー』だ。燃え盛った魂へ、誰もが「Motto Motto」と熱狂を注ぎ続けていた。大勢の人たちがその場で跳ねながら、バーニングした気持ちを舞台上へぶつけていた。観客たちのたぎる想いへ、さらに熱を加えてゆくメンバーたち。理性なんか、とっくに燃やし尽くしていた。沸き立つ情熱のまま心を野生に変え、本能のままに騒ぎ狂え。それこそが、JAM Projectのライブの醍醐味だ。

 アンコールの最初に届けた、互いの限界を超えようと熱いバトルを繰り広げた『限界バトル』。先にも触れた、『VOCTORY』『GONG』『SKILL』三部作が導いた魂を震わせる興奮と高揚。 約3時間半という時の中、JAM Projectの5人と一緒に会場に居た一人一人が、現実を忘れ、自分が自分でいれるための物語の主人公になっていた。JAM Projectが熱狂や興奮、感動を与えてくれるのはもちろん、それを受け止め無我夢中で騒いでいるときの"あなた"もまた、限界を超えた最強の勇者になっていた。

 JAM Projectは、また来年もツアーをやりたいと語っていた。その言葉が現実のものになることを楽しみにしていたい。(取材・長澤智典)

セットリスト

JAM Project LIVE TOUR 2016 ~AREA Z~
11月23日 千葉・幕張メッセ イベントホール

01.AREA Z~Song for J-Riders~
02.刃~the divine blade~
03.J-RIOT
04.MAXON
05.NOAH
06.Name is GARO-光明の使者
07.ZERO-BLACK BLOOD
08.月華
09.Survive
10.WE ARE ONE
11.Magical Mystery Spice-マジスパのテーマ-
12.NAWABARI-背徳のシナリオ-
13.紅蓮ノ月~隠されし闇物語~(アコースティック)
14.Battle Communication!!(アコースティック)
15.Fragile
16.ギアナ高地
17.Trasure in the sky
18.The Brave
19.Shining storm~烈火の如く~
20.Growing Up
21.鋼のレジスタンス
22.THE HERO~怒れる拳に火をつけろ~
23.レスキューファイアー
-ENCORE-
EN1.限界バトル
EN2.VOCTORY
EN3.GONG
EN4.SKILL

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