布袋寅泰「ジェットコースターに…」
ツアー最終日も勢いそのまま

ズッケロと演奏する布袋寅泰(撮影・山本倫子/MICHIKO YAMAMOTO)

ズッケロと演奏する布袋寅泰(撮影・山本倫子/MICHIKO YAMAMOTO)

  ロック・アーティストの布袋寅泰が1日、東京・NHKホールで35周年プロジェクトの全国ホールツアー『【BEAT7】 Maximum Emotion Tour ~The Best for the Future~』ファイナル公演をおこなった。布袋は「同じジェットコースターに乗ったつもりで、最後まで自由に楽しんで」と観客をヒット曲や、BOΦWY時代の曲をふんだんに演奏し、もてなした。また、アンコールでは、イタリアの国民的シンガー・ズッケロも参加し、豪華コラボレーションを果たした。

 2016年は、初のロサンゼルス公演、そして3年ぶりのニューヨーク公演を成功させた。盟友であるイタリアのシンガー、ズッケロのロイヤル・アルバート・ホール公演では、ギタリストとして憧れの地に立つなど、海外の音楽ファンにもHOTEIの名をアピールしてきた。

 凱旋公演、“JAPANツアー”という名が相応しい、永遠のマスターピースを体感できる全国ツアーでは、インパクトが強い、赤一色に染められた鮮やかなカーペットと5つのアンティークなランプが印象的な中、シンプルながらも小宇宙を感じさせるセンスある照明とともに、エレガントにロックンロールが塗りたくられていく。これでもかと人気曲が繰り広げられる、アグレッシヴなプレイを魅せてくれた。

 まず圧倒されたのが、ファンファーレとともに入場したメンバーが、突然、躍動するメロディアスなモータウン・ビートを奏ではじめた「POISON」だ。布袋がソロではじめて意識的にチャートへ挑んだナンバーであり、様々な音楽的素養を感じさせながらも、ヒットを狙って80万枚ものセールスを突破した90年代を代表する楽曲だ。スタートからいきなりトップギアが入った強烈なグルーヴの発動。1曲目からからクライマックスを迎えるかのように拳を振り上げ続けるオーディエンスの熱さに圧倒された。

 一目見たら鳥肌がたつ、語り継がれる名曲ばかりのセットリストが続くなか、「NO.NEW YORK」、「BE MY BABY」、「SURRENDER」に歓喜するNHKホール。なかでもソロ・アーティストとしての生き様を宣言したダンサブルなナンバー「BEAT EMOTION」に魂を揺さぶられた。<まずまずの人生をこのまま送るか? 二度とない人生を求め続けるか?>というメッセージ。どれも風化せず、いつの時代でもリアルタイムに響くのは布袋が常にチャレンジし続けている精神性のたまものだろう。耳馴染みのあるレジェンダリーな楽曲が、鉄壁のバンドによってグレードアップして再構築されていく。

観客を煽る、布袋寅泰(撮影・山本倫子/MICHIKO YAMAMOTO)

観客を煽る、布袋寅泰(撮影・山本倫子/MICHIKO YAMAMOTO)

 「ようこそ、布袋35th Anniversaryへ。今日がファイナルです!」、「35周年ということで、決して光のように過ぎ去った、そんな風の様な35年ではなかったけれども、その中にいろんな出会いがあり、いろんな経験があり、いろんな戦いがあり、チャレンジがある。そんな思い出が詰まった沢山の曲をみんなと一緒に思い切り今日は楽しんでいただきたいと思います」と語る布袋。

 ツアー・ファイナルを迎え、超満員のハイテンションなオーディエンスへ「同じジェットコースターに乗ったつもりで、最後まで自由に楽しんでいって欲しいと思います」と力強く煽る。

 それもそのはず、今回のツアー・メンバーは布袋とは新宿LOFT時代からの盟友であるザ・ルースターズのベーシスト井上富雄、デヴィッド・ボウイ・バンドでドラムを叩いていたザッカリー・アルフォード、元ニューエスト・モデルでありソウル・フラワー・ユニオンで活躍するキーボーディスト奥野真哉、ギターにエモーショナルかつテクニカルなプレイで定評ある黒田晃年、プログラミングにはお馴染みの布袋の右腕 岸利至が参加するなど、9月にスタートしたツアー初日から大きく進化したスキルフルなパフォーマンスが、これでもかとフレッシュに繰り広げられていく。

 なかでも歌詞でのメッセージが心に響いたのが「SERIOUS?」だ。<おめでたい時代さ… 中身がなくて 誰もが気づかずに踊らされてる♪>という強烈な言葉が突き刺さる。かと思えば「ラストシーン」や「WILD LOVE」のようなメロウでロマンティックなチューンも織り交ぜ、さらにはツインギターによる掛け合いが鮮烈な「Stereocaster」、35周年のテーマソングとでも言うべきヒストリカルな最新曲「8BEATのシルエット」、そして布袋アンセムというべきロックンロールを継承するエディ・コクランのカバー「C'MON EVERYBODY」、BOØWY代表曲「Dreamin'」やブレイク前に生み出された人気曲「TEENAGE EMOTION」、とどめの「スリル」では歌詞の一節を“俺のすべてはお前たちのものさ”、“今夜世界は俺たちのものさ”と改変して至福空間は絶頂を迎えたのだった。

豪華メンバーと演奏する布袋寅泰(撮影・山本倫子/MICHIKO YAMAMOTO)

豪華メンバーと演奏する布袋寅泰(撮影・山本倫子/MICHIKO YAMAMOTO)

 アンコールでは驚くべきことに、スペシャル・ゲストとして、イタリアで最もセールスを記録した人気ミュージシャン、盟友ズッケロを呼び入れ3曲でプレミアムなコラボレーション。なかでも、布袋がレコーディングに参加した「ティ・ヴォリョ・スポザーレ(君と結婚したい) feat. 布袋寅泰 」での、ソウルフルでブルージーで迫力あるズッケロの歌声と、布袋のシルバーに輝く宝石のように美しいゼマティス・ギターによるダイナミックなプレイに圧倒された。

 奇跡のコラボレーションの余韻が冷めやらぬ中、まさかのシャッフル・ビートでダンサブルなBOΦWY時代のポップチューン「ホンキー・トンキー・クレイジー」に驚かされた。布袋がヒムロック(氷室京介)のパートも歌い、裏声による自身のコーラスパートも完全に再現。さらに、ロカビリーとラップなセンスを未来的に融合した代表曲「バンビーナ」など、日本ロックシーンを彩ってきた名曲がプレイされていく。まさにベスト・オブ・ベストな瞬間の連続だ。大ヒット曲もレア曲も、イントロが鳴る瞬間に悲鳴のような歓声が響き渡り、オーディエンスの布袋愛を強く感じた。

 そして、とどめとなったのは、ダブルアンコールで披露された名曲「LONELY★WILD」だろう。“きっといつの日か 愛の嵐に溺れ 戦った数年間を振り返れると信じて 生き抜いてやれ 昨日と明日の間 お前はLONELY WILD”のフレーズが心に溶けていく。

 「今までたくさんのミュージシャンと出会いました。デヴィッド・ボウイとも1曲だけれど、一緒にできたし。ローリング・ストーンズのライブにも、招待されて共演して。月に辿り着くより難しい事なんじゃないかな。もちろん日本のミュージシャンとも沢山やってきたし、夢がたくさん叶いました。バンドで日本一になるのもそうですし、武道館だったり、解散するのも一つの夢だったんですよね。夢は言葉にして投げた方が良いんです。有言実行って言いますよね」、「おれも頑張ったけど、皆にも本当に心から感謝しています。THANK YOU!!!」と胸の内を伝えた。

 布袋寅泰は35周年アニバーサリー・プロジェクトを締めくくる第8弾として、35年間の活動を35曲で表現する記念すべきスペシャル・ライブ『【BEAT 8】Climax Emotions ~35 Songs from 1981-2016~』を、22日に愛知・名古屋国際会議場 センチュリーホール、25日に神戸・ワールド記念ホール、そして30日に東京・日本武道館で開催する。ぜひ、世界水準の“HOTEI BAND”による最新で最高のプレイを生で贅沢に体感して欲しい。(文・ふくりゅう:音楽コンシェルジュ)

■セットリスト

布袋寅泰 35th ANNIVERSARY
『8 BEATのシルエット』
【BEAT 7】Maximum Emotion Tour ~The Best for the Future~
12月1日 NHKホール

01.POISON
02.BEAT EMOTION
03.NO.NEW YORK
04.BE MY BABY
05.SERIOUS?
06.SURRENDER
07.ラストシーン
08.WILD LOVE
09.WANDERERS
10.Stereocaster
11.ESCAPE
12.8 BEATのシルエット
13.C'MON EVERYBODY
14.Dreamin'
15.SCORPIO RISING
16.TEENAGE EMOTION
17.スリル

EN1
18.Partigiano Reggiano [with ZUCCHERO]
19.Ti Voglio Sposare / ティ・ヴォリョ・スポザーレ(君と結婚したい) feat. 布袋寅泰[with ZUCCHERO]
20.Iruben me [with ZUCCHERO]
21.ホンキー・トンキー・クレイジー
22.バンビーナ

EN2
23.LONELY★WILD
24.DEAR MY LOVE

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