赤いあいつがやってくる……/オワリ
カラ・タカハシヒョウリの特撮連載企
画 vol.1


オワリカラというバンドのボーカルギターをやっています、タカハシヒョウリです。ミュージシャンです。
今回より、SPICEのスペースを使って、僕が完全プライベートで潜入したイベントや、興味ある作品への取材などを行っていこうと思います。宜しくお願いします。じゃあ、早速ですが、ため口になりますね。


さて、今回潜入してきたのは、"サブカルの聖地"中野ブロードウェイ。その3階にある「墓場の画廊」にて11月28日(月)まで開催中の『レッドマン 赤いあいつ展』!

いきなりレッドマン!とか言われて困惑の諸兄に伝えると、レッドマンとはウルトラマンシリーズを作った円谷プロが40年以上前に制作した全138話の特撮ヒーロー番組だ。この時点で「話数多すぎ」というネックに気づいて見る気が失せた紳士淑女にお伝えしたいのは、このレッドマンは1回約5分の非常にコンパクトでシンプル、いやそれを通り越してプリミティブ(原始的)な番組なので、そのような心配はご無用ということだ。もっと言えば、この番組は大筋となるストーリーなど微塵もなく、謎の荒野でレッドマンと、ウルトラマンシリーズなどに登場した怪獣たちが和気あいあいと殴り合い、そして殺し合いをする様を、延々と長回しの映像で撮り続けて5分という番組なのだ。要するに5分でも少し長いかな、というくらいで、しかも1話から見ても137話から見てもそれほど問題ないという、とてもハードルの低い番組となっている。

この番組は1974年に放送されてから、一部の好事家に愛されつつも、ほとんど顧みられることのないマイナーヒーロー作品の1つだった。その証拠に、放送当時以降に商品化されたりグッズ化された機会にはほとんど恵まれていない。

しかし、2000年以降のネット動画サイトの隆盛によって、そのあまりにも飾り気のない演出、低予算すぎるシチュエーション(空き地)、ウルトラマンなどに登場する怪獣たちが物凄い煮崩れしたようなズタボロの造形、さらにそれをズタボロにするような乱雑な扱い方、そして何より、理由も無く現れては「レッドファイト!」の一方的な宣言から怪獣に襲いかかり、馬乗りになり殴りつけ、最終的に絞殺、刺殺、投殺して去っていくレッドマンのシリアルキラー然とも取れる特異なキャラクターが注目を集めた。ネット上では「赤い通り魔」という異名までついたりした。

そして今年2016年、円谷公式YouTubeチャンネルが毎日1話ずつレッドマンを公開するという、「円谷プロ、どうした、気は確かか?」と言いたいほどの狂気的な企画を大盤振る舞いでスタート。これによりレッドマンは大ブレイクを果たし、新しい1話が公開されるたびにツイッターのトレンド入りするほどの注目を集めた。その勢いでLINEスタンプにもなった。円谷プロの他のヒーローでも単独でスタンプ化したキャラはほとんどいない。異例の大出世だ。実に42年越しで、レッドマンはその人気の頂点を極めたのだ。

信じられないが本当の話。まさにレッドマンは2016年を象徴する奇跡、ピカピカの"光るあいつ"だ。

この人気爆発のきっかけとなったYouTubeでの再放送自体はすでに全話放送を終了したが、まだまだレッドファイトの熱い血潮は真っ赤に燃えて、恐れる物は何も無い、という感じだ。そんな興奮のさなか、ついにレッドマン単独のイベントが開催された。それが『レッドマン 赤いあいつ展』だ。



中野ブロードウェイ3階の墓場の画廊内は、所狭しとレッドマン関連のグッズ、展示でいっぱい。まずは入り口に、撮影に使われたレッドマンのマスク、スーツ、そして当時の玩具や文房具などが展示されている。これだけでも見る価値ありだ。このレッドマンのマスクは、過去にも各種イベントで公開されたことがあるが、今回は単独でじっくり見れるし、撮影も可能! しかもスーツも一緒(よく現存してたな……)! ご家族恋人友人にレッドマスクの写真を送りつけてみてはいかがかな。

さらに等身大のレッドマンがお出迎え。
いや、違う、等身大じゃない。
レッドマンは設定身長42メートルだ。

近所の空き地のようなところで戦っているイメージから人間サイズだと思ってしまうけど、彼は巨大ヒーローなんだった。ちょうど良いサイズに縮小されたレッドマンがお出迎え! レッドマンとダブルレッドファイトな記念撮影が可能だ。さらに記念撮影スポットと言えば、レッドマン顔出しパネルもある。

しかもこれ、レッドマン側ではなく、レッドマンに襲われ不幸にも殺害される被害者怪獣側に顔を出す被虐的な顔出しパネルだ。レッドマン本編を見てると、ルンルン♪と原っぱを散歩してただけなのに、いきなりレッドマンに襲いかかられる怪獣が可哀想に見えてくることがあるが、そちらの怪獣サイドに感情移入できるナイス展示だ。





会場内展示はさらにすごい。大部分が未公開の当時の撮影スチールが大量に! レッドマンは単独で特集される機会も少なかったので、世に出ているスチール写真が極端に少ない。そんな中、今回の展示では今まで公開されることの無かった、味のある貴重写真が大量に見られる。ついに公開されたレッドマンの足の裏、様々な死闘の様子、頻繁に写り込んでしまっているスタッフとロケバス。きわめつけはほとんどレッドマンが写ってない空の写真(ものすごいシュールさだ)。そして、バッチリ決めポーズを撮るレッドマンの写真はどれも足下に転がる怪獣の亡骸が切ない。

個人的にお気に入りなのは、この写真。





かわいい……。

そうそう、会場内ではレッドマン全話が延々とエンドレス再生されている。レッドマンを見たこと無いって人も、ここに小一時間もいれば歴戦の勇者のような顔つきになれるだろう。さらに今回のために様々なメーカーがコラボした、レッドマングッズの数々! かっこいいTシャツから、種類ありすぎのスマホケース、バッジやシールの小物、そしてレッドマンの顔面に釘を突き刺したような潔いデザインの壁掛け時計が大注目だ。

隅から隅までレッドマンしかいない、まさに赤一色の展示。こんな展示が実現し、レッドマン単体のグッズがこんなに生産され棚に並ぶ、そんな空間がこの世のどこかに生まれるなんて、だれが想像できただろうか。

レッドマンを好きな人しかいない世界――。
それはまるで「ウルトラマンではなく、レッドマンが国民的なヒーローだったら…」という並行世界に迷い込んでしまったような、世にも奇妙な物語的な錯覚を感じることができる。この『赤いあいつ展』は、確実に、後にも先にも史上最大のレッドマン展となるだろう。

つまり、祭りだ!
これもすべて、42年前の死闘の数々から始まっている。レッドマンの撮影は、基本的にプリミティブな肉体のぶつかり合いオンリーのため、かなりの危険を伴っただろう。文字通り、体当たりの殺陣だ。さらにレッドマンの撮影は、制作スタッフにとっても死闘だったはずだ。レッドマンは、現・円谷プロ代表取締社長・大岡新一氏のカメラマンデビュー作品でもあり、前例の少ない中で、オールロケの特撮バトルに挑戦し、試行錯誤して次第にレベルアップしていく様子が138話を通して見えてくる。まさに「赤いあの色 勇気のしるし 命をかけた 大決闘」。1974年、世界の片隅に咲いた死闘の徒花が、静かにその種を未来に飛ばした。そして2016年、40年の時を越えて芽を出し、大輪の花を咲かせたのだ。

レッドマンを知っている人にも、知らない人にも言いたいのは、これは二度と無いような奇跡の記録だということだ。『レッドマン 赤いあいつ展』、開催期間は11月17日~28日まで。

最後に、ここまで読むのにどれくらいかかっただろうか? 5分ほどだろうか?

それがレッドファイト1回分だ!



筆者と、このイベントに呼んでくれたバンド界最強の特撮愛好家・モノブライト出口さんと、レッドファイト!

おまけ実は、僕もレッドマン熱にほだされて『予算1万円以下でレッドファイトをやってみた』という動画を作ったのだ。音楽は筆者がやっている特撮カバーロックバンド『科楽特奏隊』による「レッドマンのうた」のカバー(アルバム発売中)。監督は川崎雄太。僕は総監督でクレジットされているが野次馬してただけだ。これが公開時から恐ろしいほどにバズらない。もうぜんぜん広まらない。しかし、それでもしつこくこうして宣伝するんだよ!

それがおれのレッドファイトなんだ!


イベント情報赤いあいつ展~Exhibition Of REDMAN~

日時:2016年11月17日(木)~2016年11月28日(月)
会場:墓場の画廊
東京都中野区中野5-52-15中野ブロードウェイ3F
営業時間:12:00〜20:00
公式サイト:http://hakaba-gallery.jp/

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