『かわさきジャズ2016』 世界最高の
コンサートホールに響きわたるジャズ



川崎市で開催される二つの大きいフェスティバルのうち、『かわさきジャズ2016』は9月から市内各所で絶賛開催中だ。2011年に『モントルー・ジャズ・フェスティバル・ジャパン・イン・かわさき』として始まったジャズ・フェスティバルは2015年に名称を改めてイヴェントとしてもスケールアップ、さまざまなコンサート、ライヴが楽しめる秋のジャズ祭りとして市内外の多くの人々に親しまれている。その”お祭り”のフィナーレとして、今週末ミューザ川崎シンフォニーホールを会場に開催される3公演の「スーパーセッション」はジャズファンのみならず、幅広い音楽ファンが聴くべきステージが用意された。この大規模なフェスティバルを締めくくる三日間は、最高の音響でさまざまなスタイルのジャズを堪能する貴重な機会となるだろう。

「ミューザ川崎シンフォニーホールでジャズ」という組合せは奇異に思われるかもしれないけれど、このホールは開館以来ジャズピアニストの佐山雅弘がホールアドバイザーとして参画しているし、これまでも注目の公演が開催されてきたホールなのだ。筆者も過去にここで何度かそうしたライヴを聴いて、ライヴハウスで聴くジャズとは違う独特のいい響きと明確な解像度に魅せられた一人だ。最高のオーディオでもここまでの聴体験はなかなかできないのでは?と思える高い解像度の鮮明なサウンド、ステージからストレートに伝わるパワーは、一味違うジャズの楽しみとして是非一度経験してみてほしい。その最良の機会となるだろう舞台が、このスーパーセッションなのだ。

まず18日(金)に「小曽根 真 featuring No Name Horses」がミューザ川崎シンフォニーホールに初登場することは、もうそれだけで”事件”だ。このバンドを”ジャンルの壁などないかのような、自在な活躍を繰り広げるピアニスト、小曽根真の活躍のフィールドのひとつ”としてご存じの方も多いだろう、しかしこのバンドの魅力は彼の存在だけではない。このバンドはそれぞれがバンドマスターとして活躍するほどの腕利きのミュージシャンたちが集まった、いわばビッグバンドのドリームチームなのだ。腕利きのメンバーが妙技を繰り広げ、全開の力強いサウンドがあのホールに響き渡るビッグバンドの快感を存分に味わえることだろう。

(小曽根真 YouTubeチャンネルより/2012年10月のライヴの模様)

翌19日(土)には、アニメソングをスタイリッシュなジャズに変えてしまったラスマス・フェイバー率いるプラチナ・ジャズ・オーケストラが登場だ。まだ彼らの音楽に触れていない方はもしかすると損をしているかもしれない。だって、作品タイトルを連呼する「これぞ昭和のアニソン」と評しくなるタイプの「デビルマンのうた」が、「シング・シング・シング」を思わせるスタイリッシュなジャズに化けるなんて誰が思うだろう?それを実現してしまうプロデューサー、ラスマス・フェイバーのマジックに酔う一夜はいつもはクラシックと向き合うホールがスタイリッシュなクラブやサロンに変容する、不思議な一夜となるだろう。


そして足掛け三ヶ月続いたフェスティバルのフィナーレを飾る20日(日)は、「ジャズ travels ワールド」と題した三部構成の盛り沢山なライヴだ。

第1部は「タンゴ meets ジャズ」と題して、バンドネオン奏者三浦一馬率いるキンテート(五重奏)が登場する。三浦一馬もまた、ジャンルを超えた活躍でバンドネオンという楽器、そしてタンゴの可能性を示してくれるアーティストだ。彼の元、ヴァイオリンの石田泰尚ら、共演を重ねて気心の知れたメンバーが集ったアンサンブルが聴かせるタンゴとジャズの出会いは想像するだけでもスリリングだ。
三浦一馬の活躍は国内外、多ジャンルに及ぶ 提供:ビクターエンタテインメント(株)

続く第2部は「クラシック meets ジャズ」として、クラシック、民族的サウンドを活かした自らの作曲、ジャズにと多方面で活躍するファジル・サイが登場する。クラシックのピアニストとしての日本ツアーでモーツァルトやベートーヴェン、ショパンにドビュッシーを演奏する彼はこの日、何を聴かせてくれるのだろう?
ファジル・サイ独自の音楽世界がジャズと出会う (c)Marco Borggreve

フェスティバルの大トリとなる第3部「ジャズ meets ジャパン」は日本を代表する音楽家三人が登場だ。ピアノの山下洋輔、ヴァイオリニストの大谷康子、そして大鼓の大倉正之助による異色のアンサンブルだ。東京交響楽団のコンサートマスターとして長く活躍した大谷康子は山下洋輔とは昨年すでに共演済み、大鼓の大倉正之助とも過去に何度となく共演を重ねている。しかし三者が一同に介する機会はそうあるものではない、なにより山下洋輔の”異種格闘技戦”的なライヴは予想を超えてくれることだろう。
大谷康子は東響”卒業”後、テレビにコンサートにと活躍の場を広げている

能楽師・大倉正之助もジャンルの垣根を

世界のアーティストが愛するミューザ川崎シンフォニーホールが巨大なライヴハウスに変容する三日間、いつもとは違う音楽がそこにある。皆さんもぜひ、ここで新たな魅力に満ちたジャズに出会ってほしい。
公演情報かわさきジャズ2016 スーパーセッション
●小曽根 真 featuring No Name Horses2016年11月18日(金) 開演:19:00 会場:ミューザ川崎シンフォニーホール
●プラチナ・ジャズ・オーケストラ presented by ラスマス・フェイバー2016年11月19日(土) 開演:17:00 会場:ミューザ川崎シンフォニーホール出演:プラチナ・ジャズ・オーケストラ

●グランド・フィナーレ ジャズ travels ワールド2016年11月20日(日) 開演:17:00 会場:ミューザ川崎シンフォニーホール
出演:
【第1部】 三浦一馬(バンドネオン) 石田泰尚(ヴァイオリン) 黒木岩寿(コントラバス) 大坪純平(ギター) BABBO(ピアノ)
【第2部】 ファジル・サイ(ピアノ)
【第3部】 山下洋輔(ピアノ) 大谷康子(ヴァイオリン) 大倉正之助(大鼓)

■公式サイト:https://www.kawasakijazz.jp/​

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