目に見える以上にたくさんの要素、歴
史、そして「ファンキー加藤の今」が
詰まった、新アルバム「Decoration
Tracks」

ファンキー加藤の、待望のソロ2作目のアルバム『Decoration Tracks』は、4ツ打ち、ロックな8ビート、レゲエ、バラードなど、そのタイトル通り様々なスタイルの楽曲によりバラエティ感を見せている。それぞれの楽曲に特別斬新な曲作り、キメなどの仕掛けを作っていることはなく、ある意味フラットなメロディを聴かせてくる。


だからこそ、バラエティに富んだ楽曲群が感情や思いの変化を表し、自身のメッセージをより明確に浮き彫りにして、メッセージを聴くものに伝える強い力を感じさせる。アルバム一枚、ボーナストラックを含む16曲という曲数の中で、音楽を聴かせながらも表現しているものは、単純な「音」ではないという狙いが、自然ながらも明確に見えてくる。変に派手なものを自発的に作らなくても、ファンキー加藤らしい、新たに聴きたくなる作品に仕上がっているのだろう。

作詞においてもファンキー加藤は、ほぼ揺るがない方向性を持っているものと感じられる。14曲目の「花鳥風月」を除いて、13曲はすべて1コーラスの中に「序章」的な部分、メッセージ的な意味合いを持つ「本題」の部分と、「序文」と「本題」をつなぐ部分と、明確に三段の要素で構成されており、これは楽曲の上でも文章の構成としても明確に線が引かれている。それ故に、彼が歌で伝えたいことは非常にわかりやすく聴く側に受け止められる印象だ。

例えば1曲目の「MUSIC MAGIC」は、一段目で世界的な名曲や歴史的なロックフェスについて記述、二段目はそれに対する「ちっぽけな自分」の存在を赤裸々に描き、三段目で「それでも自分がミュージシャンを続ける理由」=「君が笑えば それも小さな奇跡」という言葉に集約された、歌を歌う意味を訴えるような表現を行うといったストーリー作りをしている。



このようなスタイルにより、2曲目の「ブラザー」ではモチーフを自身の兄弟に変え、3曲目の「中途半端なスター」では自分がかつて憧れたスターに対しての思いに変え、とファンキー加藤自身の様々な思い、印象を曲ごとに綴っている。そんな風に自分をさらけ出すことで、聴くものの気持ちに寄り添い、そしてある時は「走れ 走れ」や「Ring a Bell」で描かれているように、聴くものの気持ちを強く引っ張ってくれるような言葉を叫び、訴えている。





そんな中で「花鳥風月」だけは詞の構成も二段、そして描いている内容も、他の13曲がわりと「これまでのファンキー加藤」自身を描いているように見えるのに対し、この曲のみは「30を超えた僕を子ども扱いして…」と、どちらかというと今現在の自分自身に近いような思いを表現しており、「アルバム」という形態をあくまで完結するための特別な印象を与えている。

何かこの曲があることで、ファンキー加藤という存在が現実的で身近な存在に感じられる。器用ではないファンキー加藤という人間が、決して飾ろうとしない自身の姿を、まさにありのままに表現したものでもあるようだ。



このアルバムに”デコレート”されている内容は、実は曲数以上の、詞に込めたファンキー加藤自身の思いや自身の姿など、多岐にわたるものというイメージもある。ミュージシャンが作るたびにその時の自身を表し、刻んでいくという意味で名づけられた「アルバム」という言葉が、非常にピッタリであるとも感じられる作品だ。

TEXT:桂伸也

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