チャラン・ポ・ランタンが『あの子の
ジンタ』で彩る『少女椿』の世界

2016年発表の『あの子のジンタ』は、映画『少女椿』の主題歌に使われた配信シングル。映画『少女椿』は、丸尾末広による伝説的な漫画の初の実写映画化作品です。見世物小屋を舞台にしたダークでファンタジックな物語。



大道芸からスタートしているチャラン・ポ・ランタンというユニットが、映画の見世物小屋の怪しい世界観に合っています。まさに理想的なタイアップといえるでしょう。タイトルのジンタとはサーカスの楽団のこと。チャラン・ポ・ランタン自体がサーカスの楽団のような雰囲気を持っているのでピッタリですね。





「寄ってらっしゃい 見てらっしゃい」というフレーズで曲はスタート。このフレーズで見世物小屋の物語であることが分かります。続いて「赤い椿一輪 ひとり握りしめて」という歌詞が登場。早速、映画タイトルである「椿」が出てきました。主人公の少女みどりの象徴ですね。「一輪」「ひとり」という歌詞のたたみかけで、みどりの孤独を表しています。「あの子は走り続ける」この歌詞の「あの子」もみどりを指します。みどりは、母親の面影を残しながら見世物小屋で働くことになります。その状況を歌っているんですね。



このあたりのフレーズは、物語前半のみどりの悲しい状況を表現しています。「息殺して」とありますが、これは母親が死んでしまったことを暗示し、息を殺すような苦しい生活になっていることを表しています。「涙を拭いた」とあるように、見世物小屋のメンバーからひどい扱いをうけて泣くみどり。



「花びらの間から光が差し込む時」やがて、みどりに光がさすストーリー展開の暗示です。みどりを助けてくれる存在が登場します。それは「禁断の林檎」と表現されるような男。このあたりの歌詞も、見事に内容に沿っていますね。



リズミカルに「ジンタジンタ」と歌うサビ。『花いちもんめ』や『赤い靴』『とおりゃんせ』を巧みに引用しています。

「行きはヨイヨイ帰りは怖い」は『とおりゃんせ』からの引用。この歌詞は、甘い言葉に誘われてついて行ったら恐ろしい目にあうということを暗示しています。

「赤い靴履いて」は童謡の『赤い靴』から。少女がつれられて行くという展開を示しています。

「勝ったら嬉しい花いちもんめ」は歌詞にあるとおり『花いちもんめ』の引用。花は少女の象徴。いちもんめは一匁と書く重さの単位。「勝った」は「買った」。少女が人買いに一匁で買われることを表現しているんですね。

童謡の歌詞を引用しながら『少女椿』の内容を反映させている巧みな歌詞です。こういう歌詞が書けるのがチャラン・ポ・ランタンなんですね。



このフレーズは童謡『シャボン玉』からの引用です。みどりに光が差し込むけれど、それはシャボン玉のように消えてしまう、はかない幸せであることを暗示しています。

『少女椿』はアングラで怪しい世界観が魅力の作品。チャラン・ポ・ランタンはユニット名どおりチャランポランなノリをもちつつも、きちんと映画世界に沿った音楽を作ることができるユニット。まさにユニットの本領を発揮した楽曲ですね。


TEXT:改訂木魚(じゃぶけん東京本部)

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