二人の歌姫の競演に思う:ドラァグク
イーン・エスムラルダ連載121

エスムラルダの「勝手にワイドショー!」

連載第121回 二人の歌姫の競演に思う

 19日にテレビ朝日系列で放送された「ミュージックステーション ウルトラFES2016」。みなさんはご覧になったかしら。10時間にわたる生放送だけあって、「タモリさん、しょっぱなから声が枯れていて、視聴者を心配させる」「尾崎豊の長男登場」「『日本の影響を与えた曲ベスト100』の第一位が、(いろんな意味で)やっぱり『世界に一つだけの花』」など、見どころ満載だったけど、中でも特に印象的だったのが、21時前後の宇多田ヒカル浜崎あゆみの流れ。

 同じ年に歌手としてデビューし、最近ではあゆが、宇多田の『Movin’ on without you』をカバーして話題になるなど、なにかと縁のある(?)二人。若い人にはあまりピンとこないかもしれないけど、二人を立て続けに観られて、どちらに対してもそれほど思い入れのないアタシでさえ、胸アツだったわ。
 ちなみに今回も、よく考えたら、かたや6年の活動休止(その間、2014年にイタリア人と結婚・出産)後、初のテレビ出演。かたや(2014年に結婚したアメリカ人と)離婚した直後のテレビ出演。あの二人にはやっぱり、因縁めいたものを感じるわね……(こじつけすぎ?)。

 そしてパフォーマンスも、見事に好対照。宇多田は震災後に作られ、『エヴァンゲリヲン新劇場版Q』の主題歌でもあった『桜流し』をしっとりと歌い上げ、あゆはいつものようにダンサーを従えて、往年のヒット曲『M』『SEASONS』『evolution』を披露。いやあ、どちらも違う意味で、目が離せなかったわ。

 まず宇多田は、髪型がお母さん(藤圭子)そっくりになっていて、まずびっくり。そしてトークでのふてぶてしいまでの落ち着きっぷりと、トーク内容(ガチで人間活動をしていたらしい)に感心し、歌のあまりの表現力に、ただただ引き込まれたわ。  一方のあゆは、トーク中の様子とか、顔や声のコンディションとか、全盛期のパフォーマンススタイルを一生懸命貫こうとする姿とか、すべてが(少なくともアタシには)危なっかしく見えて、かなりスリリング……。でもそんなあゆに、妙に人間臭さを感じて、逆にちょっと好きになったわ。

 カラーはそれぞれ違うけど、いずれも一時代を築いた歌姫たち。私生活でのあれこれも含め、ここまで注目される女性ソロアーティストって、やはり稀。今度も公私ともにいろいろあると思うけど、元気に頑張り続けてほしいわ!

(水曜連載)

図版:番組ロゴ【エスムラルダ:プロフィール】

えすむらるだ…1972年生まれ。94年よりドラァグクイーンとしての活動を開始し、各種イベント、メディア等に出演。2002年、東京都の『ヘブンアーティスト』ライセンスを取得。脚本家・ライターとしても活躍している。著書に「同性パートナーシップ証明、はじまりました。」(ポット出版、共著)
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おすすめ書籍:「同性パートナーシップ証明、はじまりました。渋谷区・世田谷区の成立物語と手続きの方法」エスムラルダ、KIRA著(ポット出版)

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