手書きのラブレターをもらった夜に聴
きたい曲
選曲のエキスパート“ミュージックソムリエ”があなたに贈る、日常のワンシーンでふと聴きたくなるあんな曲やこんな曲――今回は「え、手書き!?」と感動した夜に聴きたい一曲です。
1.「My First Kiss」/Hi-STANDARD
いまだにバクバクが収まらない心臓の鼓動、嬉しさと緊張でぐちゃぐちゃのままの心理状態を、的確に表してくれるのが、 Hi-STANDARDの「My First Kiss」。アニメ「キテレツ大百科」のテーマソングとして1990年に発表され、2000年にHi-STANDARDが英訳カバーしました。
あの子のかわいらしい文字を読み返しながら聴くと、頬が緩みっぱなし。頬と言えばもちろん最初の「チュウ」はここに……あれ、気が早いぞ私、またバクバクしてきたぞ……。
こんな幸せな夜にはぜひ、爽やかなパンクナンバーをどうぞ。
(選曲・文/石井由紀子)
2.「A Lover’s concerto」/The Toys
誰もが知っているオールディーズナンバーです。オリジナルは1965年のThe Toys、日本でも翌66年の紅白歌合戦で金井克子が歌っています。実は元曲は18世紀ドイツのバロック音楽にまでさかのぼります。鼓動の高まりを伝えるようなメロディーは、300年にわたり伝承されているもの。情景と心情を表した歌詞も絶品。ベッドの中で聴くと、間違いなく幸せな気持ちになれます。
(選曲・文:Kersee)
3.歌劇『サムソンとデリラ』より「あな
たの声に心は開く」/マリア・カラス
今回ご紹介する歌唱のマリア・カラスは、20世紀最高と言われるソプラノ歌手。この歌では美しい旋律と彼女の広い声域が醸すミステリアスな響きが融合して、七色に艶めきながら胸に届きます。
サン=サーンス作曲のオペラアリアで、本来は中低音域が得意なメゾ・ソプラノ歌手向きの曲なのですが、彼女は見事に歌いこなしています。特に半音移動で表現される部分は、微妙に揺れ動く心に働きかけるよう。
誠実な恋文に込められた想いを、感じとるサポートをしてくれることでしょう。
(選曲・文/山本陽子)
4.「ピアノ協奏曲第20番」より第2楽章
/W. A. モーツァルト
モーツァルトが手がけた初めての短調の協奏曲です。彼の生涯を描いた、アカデミー賞受賞作品として知られる映画「アマデウス」のエンディングにも使われています。
美しさとかわいらしさを備えた旋律は、クールを装いつつ実はドキドキしながら、ラブレターの封を開く時にふさわしい1曲です。
あるいは、つとめて冷静に丁寧で綺麗な文字で、でも気持ちがはやってドキドキしながら手紙を書いた、彼女のほうにこそぴったりな一曲かもしれませんね。
(選曲・文/堀川将史)
5.「Good Day In Hell」/EAGLES
おお、どうしたんだ、こんな時間に電話なんて……。何?ラブレターをもらった興奮で寝付けないだって? では君に、この曲を捧げよう。1974年のイーグルス「Good Day In Hell」だ。
独善的で酒乱なストーカー女に追い回される「地獄の良き日」。当事、仲間内で緊張状態にあったイーグルスの面々が、やけっぱちのように仕上げたハードブキだ。
その手紙の女もヤバイ奴だぞ。妬んでなんかいないぞ、本当だ。俺たちは仲間じゃないか。
(選曲・文/旧一呉太良)
6.「左手で書いたラブレター」/Fairl
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今や10代でもメールやLINEが当たり前、なのですが、やっぱり恋文だけは「手書き」が一番!
気持ちを込めて書いてくれたんだなと嬉しくなり、一文字一文字から相手の人柄まで伝わってきます。
さて、この歌の主人公、なんと「利き腕では饒舌になりすぎるから」と左手で「好き」の二文字のみを綴るのです。キザなのか、不器用なのか。もしかしたら、あまり字が上手くないのかも?もしかしたら、Vo.ハマショーが実際に書いたラブレターがこうだったのかも? 妄想は尽きません。
(選曲・文/今井義明)
7.「やぎさんゆうびん」/童謡
誰かから手紙をもらい、それがラブレターだと気づいたら!? 嬉しいやら、恥ずかしいやら、舞い上がってしまいますね。
ドキドキのあまり、あの歌が聞こえてくるかも知れません。「しろやぎさんからおてがみついた。くろやぎさんたらよまずにたべた……」うれしすぎて少し変になってしまったみたい、私。でも、この歌に気づかされるのです。この手紙がこうして今、自分の元に届いた事がすでに奇跡なのだ、と。
いやその前に、私なんかにラブレターが来たことが、まず奇跡か!?
(選曲・文/今井義明)
ぜひこれを機にCDやレコードなどの音源でも、各曲をお楽しみいただければ幸いです。
それでは、皆さまも大事な気持ちを、時には手書きで綴ってみてくださいね。
著者:NPO法人ミュージックソムリエ協会