”胸キュン”を広めたのは、かわいい
おじさんたちだった!?

女の子が男性にされるとドキッとするシチュエーションや行為を漢字とカタカナで表現した言葉だが、上手くまとめたものだと感心する。

短くてキャッチーなフレーズ。アナタも身近に使っているではないだろうか。そんなフレーズの仲間で「胸キュン」という言葉がある。男性に壁ドンや顎クイをされてドキッとした時の女の子の感情なんてまさにこれだ。そしてこの「胸キュン」という言葉を広めたのがYMOの『君に、胸キュン。-浮気なヴァカンス-』という曲だというのをご存知だろうか。





イエローマジックオーケストラ。通称「YMO」。細野晴臣坂本龍一高橋幸宏の3名から成るグループで、『ライディーン』などの画期的なテクノチューンを生んで日本のみならず世界の音楽界に多大なる影響を与えた。

1983年の発売当時、カネボウ化粧品のキャンペーンとのタイアップが決まった際に、そのキャッチコピーであった「胸キュン」という言葉をタイトルに使った。本人たちが出演したCMも話題になり、これがきっかけで世の中に「胸キュン」という言葉が浸透することになる。




歌詞を見てみると、まさにキュンキュンするような言葉が連ねられている。夏の情熱的な”君”に圧倒されている”僕”。「君に、胸キュン。」というキャッチーなフレーズだけでなく、シンプルにまとまった叙情表現からは『赤いスイートピー』(松田聖子)や『硝子の少年』(KinKi Kids)などの作詞で知られる松本隆の作詞力を感じる。

歌っている高橋幸宏の歌声は決して上手いとは言えないが、これがYMOスタイル。PVではダンスも披露していて、後にアカデミー賞を獲得し”教授”と言われる天才・坂本龍一も楽しそうに踊っているから一瞥の価値はある。

当時からコントなどの活動も行なっていたYMO。この曲のコンセプトも「かわいいおじさんたち」と、いかにもなものだ。「オリコンチャート1位を獲得する」と、ネタ半分で意気込んで作ったこの曲だったが、最高順位は2位。その時、1位の座に輝いたのは松田聖子の『天国のキッス』。松本隆作詞・細野晴臣作曲で『君に、胸キュン。』と同じ作り手による作品というのがなんとも皮肉であり、また当時の人気と実力があったYMOらしいエピソードと言える。

オリコンチャート1位にはなれなかったが、YMOの最大のヒット曲であり、槇原敬之KREVAなどの後輩たちもカバーしている。洒落た歌詞とテクノポップの融合したこの曲には、いつの世も人を胸キュンさせる力があるのだ。

TEXT:田中利知

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