“マジカル・パンチライン”と“わー
すた”に見る、ももクロ3rd~4thの影
響力 マーティ・フリードマン★鋼鉄
推薦盤

 まずレコメンしたいのが、マジカル・パンチライン。彼女たちは元アイドリング!!!の佐藤麗奈が中心となり結成された「魔法」をコンセプトとしたアイドルグループで、その第1弾アルバム収録曲が『MagiかよBiliBiliパンチライン』。もう、この曲がすごすぎます! 

 『ハリーポッター』のサントラのような雰囲気があるかと思いきや、メタル的なドラム、ラップ、アイドルポップが渾然一体となっているんですよ。16小節ごとにコロコロと変わっていく展開は強烈すぎ。まるでビートルズの『アビイ・ロード』のB面のメドレーみたいな感じです!

 そして、avexのアイドル専門レーベル「iDOL Street」から登場したアイドルグループ、わーすた。彼女たちは5月4日に全世界110ヶ国デビューアルバム『The World Standard』をリリース。そのうちの1曲『うるとらみらくるふぁいなるアルティメットチョコびーむ』がこれまたすごいんです。

 こちらもロックのリフ&ドラムではじまる典型的なアイドルソングかと思いきや、Aメロで突然バラードになる。そのまま続くのかと思いきや、またアップテンポのセクションが現れ、EDMっぽいパート、クラシカルメタル風のフレーズまで入ってくる。まるで10つの楽曲を1つに圧縮したみたい!

 で、この両方の楽曲、ももクロの3rdアルバム、4thアルバムに入っていてもおかしくないような曲なんです。この2枚のアルバムに入ってたのは、先進的でアレンジの展開が激しい楽曲だったからね。以前、ボクは「ももクロの3rd~4th以降で日本の音楽業界の流れが変わるかも?」という仮説を立てましたが、まさにそれが具現化された感じですね。
 
 ちなみにこういう展開が複雑な楽曲って、実は昔にもあったんですよ。ビーチボーイズなんかは数十時間かけて様々な曲のパーツを録音し、その一部を抜き出して繋げて、『グッドバイブレーション』『英雄と悪漢(ヒーローズ・アンド・ブレインズ)』なんて曲を作っていた。でもそれは製作者の頭を悩ませるような長時間のレコーディングと編集作業が必要だった。それがプロトゥールスなどのハードレコーディング技術が発達したおかげで、ある程度、簡単に出来るようになってきた。そういう状況が、これらの曲が量産されるようになった要因でしょうね~。

 でもボクも試したことがあるんだけど、こういう楽曲って作るのが超大変なんですよ。最初から「ここで◯◯なパートがあって、次に☓☓なパートがあって……」と頭の中でイメージ出来ていないと無理。そういった意味では、マジカルパンチラインとわーすたのクリエイターたちはとんでもない才能の持ち主だと思います。

 しかし……。こういうプログレッシブな楽曲が量産される日本のアイドルソング業界って本当に進化しているね。これにOKを出しているレコード会社の人々もマジ挑戦的じゃん? 「世界中の音楽の未来はアイドルソングが握っている!」、ボクはそう確信していますよ。


(構成/尾谷幸憲 協力/平田博也)
Marty Friedman
マーティ・フリードマン
ギタリスト、プロデューサー。2004年から日本の音楽シーンでも活躍。ももいろクローバーZ『猛烈宇宙交響曲・第七楽章「無限の愛」』への全面参加。ニューアルバム『インフェルノ』(ユニバーサル)が発売中。

新番組『アイドルお宝くじ』にナレーション出演中
<O.A.情報>
テレビ朝日/毎週金曜日 26:50~
BS朝日/毎週土曜日 26:30~
CSテレ朝チャンネル1/11月7日スタート・毎週金曜日 24:00~

【公式HP】

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