BABYMETAL『Metal Resistance』に全
米が震撼した理由 その2「成熟したア
ルバム作り」

 たとえばCD発売前にMVが公開されたM2『KARATE』。この重たいドラム、重たいギターリフ……その音は海外のA級のメタルと並べても全然引けを取らない。なのにサビが完全にJ-POP! 海外のヘヴィロック・シーンでは、こういうメロディは絶対にありえないし、こういうコード進行も絶対にない。ボクは慣れているけど、これを聞いた外国人の多くは「な、なんだこれは?」って絶対に思うでしょう。

 そしてM10の『No Rain, No Rainbow』。この曲はJ-POPにはおなじみの泣きのバラード曲だけど、これ、海外のヘヴィなロックのアルバムには絶対に入っていないタイプの曲です。アメリカの人々これを聴いたら、「BABYMETALは新しい! こんな曲を発明するなんて!」って言うんじゃないかな? ボクは「だったらXJAPANの『ENDLESS RAIN』や『Say Anything』を聴いてみてよ!」って言うでしょうね。ついでにキロロ、いきものががかりのバラードを勧めるかもしれない(笑)。ともあれ、このタイプの泣きのバラードは今のアメリカの音楽シーンでは珍しいものなんです。

 さらにM11『Tales Of The Destinies』。これはとんでもない! 転調やテンポチェンジが激しくて複雑過ぎる。ドリーム・シアターかと思いました(ドリーム・シアターはアメリカのプログレッシブメタルの有名バンド)。この複雑さは、3年かけてずっと作り直してやっと出来た、そんな感じがしますね。

 実は近年のポピュラーミュージックって製作期間が長くなっているんです。昔のロックのアーティストみたいに勢いで曲を作って「これでいいじゃん! さあ、ツアーに出よう!」じゃなくて、一度作ったら何度も聴き直して、いらない部分をどんどん切って、磨き上げていくようなスタイルが増えてきている。日本ではそれが顕著で、ももクロやジャニーズの音源も長い製作期間で作られているらしい。

 ちなみにBABYMETAL『Metal Resistance』の収録曲の半数はすでにツアーで披露されていたらしいじゃん? つまり制作陣はこの2ndアルバムに向けて、相当前から曲を作り、ツアーでトライを続け、最終的にこのアルバムの形にまとめたんだと思う。メンバーはもちろんだけど、スタッフの汗と努力の結晶でもあるんですよ、この『Metal Resistance』は。

(構成/尾谷幸憲 協力/佐々木翔)Marty Friedman
マーティ・フリードマン
ギタリスト、プロデューサー。全米で1000万枚以上のCDを売ったヘヴィメタルバンド「メガデス」に在籍。2004年から日本の音楽シーンでも活躍。ももいろクローバーZ『猛烈宇宙交響曲・第七楽章「無限の愛」』への全面参加。ニューアルバム『インフェルノ』(ユニバーサル)が発売中。

新番組『アイドルお宝くじ』にナレーション出演中
<O.A.情報>
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BS朝日/毎週土曜日 26:30~
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