G-シュミット

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    G-シュミットゲー・ジュミット

    稀有な女性ヴォーカルのSYOKOを中心に、(第一次)インディ・ブームが起こった80年代を、何にも揺らぐことのない姿勢で歩みぬけたバンドだ。わりと初期の方は、オート・モッドのジュネが企画したシリーズ・ギグの"時の葬列"に出演するなど、その周辺のバンドというイメージもあった。しかし、よく一緒にライヴをやっていたバンドが解散していく中、もともと他にない凛然とした個性を放っていたG-シュミットは、孤高の存在としてますます熱心なファンを付けていったのだ。
    結成した83年に<RBF>からソノシートを発表し、音盤デビュー。以降は基本的に<WECHSELBALG>からリリースしていく。2枚のシングルに続き、85年に『Modern Gypsies』、86年に『Sin, Secret & Desire』という、ミニ・アルバムを発表。88年にはフル・アルバム(LPのタイトルは『Garnet』、それと多少内容が違うCDのタイトルは『Alternative Garnet』)をリリースする。
    ロックはロックであるし、パンク/ニュー・ウェイヴもバック・グラウンドの一つにあっただろう。一方で映画音楽からの影響も大きく、透明感があり、ポップでもあり、多彩な表情を見せるサウンドだった。そして、線が細いながらもしっかりした意志をもち、一切のポーズをつけずに歌うヴォーカル。届かないところに手を伸ばすような、純粋すぎて傷つき傷つけるような、一種のパンクの根本哲学にも通じる虚無から新たに創り上げる意識があった。その世界観は、音作りやアート・ワーク同様に、潔癖なまでの輝きをもつ。これだけ表現に対して誠実なバンドは、貴重だった。常にメンバー・チェンジが激しかった一因には、バンド内で妥協してなかったこともあったのだろう。そして89年のEP「Sillage」が最後の作品になった。
    ちなみにSYOKOは、バンド存続中と解散後に、メジャーのレコード会社から2枚ソロ・アルバムを出している。 (行川和彦)

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