DJ Shadow

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    DJ Shadowディージェイ・シャドウ

    イギリスの音楽誌『NME』いわく、ギターをサンプラーに持ち替えたジミ・ヘンドリックス。
    カリフォルニアをベースに活動するDJシャドウは、埃にまみれたおびただしい量のレコードから見つけ出したブレイク・ビートを巧みに繋ぎ合わせて、ヒップホップに新たな地平を切り開いてきた才人である。それは、96年のアルバム『エンドトロデューシング…』によって、はっきりと明示された。この作品が持つ、繊細な抽象画を想起させる緩やかな音の響きは、主流のヒップホップ・サウンドとはかなりかけ離れているが、そういった批評を問答無用にはねのけてしまうほど崇高で深く、ハイ・クオリティだった。タンジェリン・ドリームやビョーク、U2といった突拍子もない大ネタのカット・アップにより創造された作品群は、ヒップホップのみならず、あらゆるサンプリング・ミュージックの可能性を推し進めたと言えるだろう。また、日本のDJクラッシュとのコラボレーションにおいても、張り詰めた空気のなかで激しく燃え盛る炎の如き、夢幻の音世界を構築した。さらに、01年にはジュラシック5のカット・ケミストとともに『プロダクト・プレイスメント』を、02年にはソロ第2弾『プライヴェート・プレス』をリリース。どれも極上の仕上がりを見せる絶品だ。
    彼の才能、つまり、DJシャドウが創出するサウンドは、“アブストラクト”とか“実験的”といった陳腐な言葉で片づけることができないものだ。言うならばそれらは、彼のヒップホップに対する自由な精神と哲学から生み出された“DJシャドウ・サウンド”である。
    06年には“メジャー・レーベルらしいアルバムを作る”というコンセプトのもと、通算3作目となるアルバム『ジ・アウトサイダー』をリリース。奥深くミステリアスな従来のDJシャドウらしいサウンドは影を潜め、代わってラッパーを大々的にフィーチャーし、さらにはハイフィ/フォーク/ハードロック/実験的ダンス・ミュージックなど、ヴァリエーションに富んだテンション高めの曲がアルバムの半分を占めている。この劇的な変化を指し、同作を“DJシャドウ史上最大の問題作”と評する声もあるが、彼が表現者として新たなる境地へと挑んだ意欲作であることは揺るぎのない事実だ。

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