ミュート・ビート

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    ジャパニーズ・ダブの始祖。うつむいたまま鳴らす一音一音に静かな暴力性を感じさせるカリスマ・トランペッター・こだま和文。銃口のように突き立てたトロンボーンでこだまに呼応する増井明人。太くタイトなベースで空気を絞める松永孝義。シンニード・オコーナーの「Nothing Compares 2 U」の作曲やシンプリー・レッドのドラマーとして「世界の "GOTA"」となった屋敷豪太。UA のプロデュースで名を馳せた朝本浩文(key)。そしてこのバンドの要である "Dub Master X" こと宮崎泉(ミキシング・エンジニア)。
    ——その後、幾度かメンバーの入れ替わりがあったが、今思えば豪華この上ない顔ぶれである。デビューは 86 年、ニューヨークの <ROIR レーベル>からリリースされたカセットテープだった。現地の BEAT 誌でも高く評価され、翌年日本でも <OVERHEAT レーベル>より『FLOWER』でメジャーデビューを果たしたが、アルバム『MARCH』を最後に 89 年残念ながら解散。
    メンバー個々の発する音の素を宮崎がライヴで解体/再構築していくスタイルは当時の日本において至極画期的であり、その後、フィッシュマンズ、オーディオ・アクティヴといったグループにも多大な影響を与えた。——彼らが表現してきたダブは、ジャマイカではなく英国でもない、温暖湿潤気候の日本……しかも冷たいコンクリートの都会でしか生まれえないものだったと言えるのではないだろうか。

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